高橋博の 自然が何でも教えてくれる #11
毎月1日更新!
第11回 破壊のあとには必ず建設が待っている
人間の不安って、3つしかないんだよ。まず、病気の不安。それから、お金の不安。そして、争いの不安。この3つに絞られるんだ。
いろいろな人から相談を受けるんだけど、大抵ここに収束するんだ。そして、この3つがそれぞれ「掛ける2」になってる。たとえば病気だったら、身体の病気と精神的な病気。お金だったら、本当にお金がないのと、こころの貧乏。争いは、本当の争いと、こころの争い。不安っていうのは、この6パターンでできていると思うんだよね。それがなくなったら本当にいいなぁ、と思う。わたしたちにもこういった不安はやって来るんだけど、それを不安として受け止めていないから、大丈夫でいられる。わたしたちが6か月間の塾でやっていることも、そういったことなんだよ。
セミナーでは、一番最初に「破壊と建設の法則」について教えるんだ。これはいろいろなときに使えるからね。破壊だけだと、なにか人生って不安じゃない? だけど、“破壊ごと”はいっぱいあるわな。その破壊だけ見ているといやになっちゃう。でも、破壊のあとには必ず建設が待っている。その原理を知ると、不安なく生きられるんだよ。
土についてもそう。自ら肥毒を破壊しないと生産できない。自然農法も過去の清算をしなくちゃいけない。じゃないと自然農法が成り立たないからね。この清算こそが、破壊。だから、建設をしたかったら、破壊しなくちゃならない。
人間も同じだよ。人間を建設させるには、過去をとってやらないといけない。その過去を捨てられるか捨てられないかだよね。見栄とか、我とか、執着がとれたときは楽なんだ。あれは仏教の世界と同じだね。修行ってそんなことするようだもんね。夫婦間で争いが起こったとしても、この破壊だけだとまずいと思うけれども、必ずその後には建設が生まれているんだ。もう同時に準備されているんだ。
研修生の卒業式のときにも「世の中にでていろいろな困難にぶつかるだろうけど、これを知っていると強いよ」っていってやったよ。破壊みたいなことが起こっても、そのあとには必ず建設があるから、乗り越えていけるよな、って。「そのとおりでした」って年賀状に書いて送ってきてくれた卒業生もいたんだ。
人間世界を超えて自然の世界に到達するには、ちょっと苦しまないとしょうがないよ。しかしこの世界を知ってしまったら、ついもう一歩、もう一歩と超えてみたくなっちゃうんだよ。それがいまのわたしの状態だな。
- 高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」
高橋博(たかはし・ひろし)
1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
高橋博の 自然が何でも教えてくれる #10
毎月1日更新!
第10回 大きな目標より目先のことから積み上げていくとうまくいく
普段から「仕事と作業は違う」ということを意識しながら仕事ができているか。そうしないと輝いていられないだろうね。たとえば、編集部のみなさんがやっていることでも、いまここに来て取材することが目的になってしまったら、この時間はいやなものになってしまう。だけどその先に、読者に喜んでもらいたいという目的をもっているから、がんばって続けられる。それが仕事だよね。
わたしたちも、畑に入ることが仕事だと思うと、いやになっちゃうんだ。真っ黒になるわ、汗かくわ、腰痛くなるわ。これが一生の仕事だと思うと、それだけですごく疲れてしまう。だけど、その作業をやらなければ、その先にある目標・仕事にいけない。みなさんの元へ野菜を届けることが本来の目標で仕事なんだ。
あるおじいさんが、「わたしはいま東京で定年を迎えて、福島に土地を設けて、そこで自然栽培をやろうと思っています。老後はスローライフを送りたいと思っています。いまもう72歳なんですけど、高橋さん、これからでもまだ間に合いますか?」って質問をしてくれたときも、わたしは「間に合う!」って言っちゃった。
そのひとは理屈で生きるようなタイプで、最初にいろいろな構想を考えて持ってくる。それで、なかなかうまくいかない、と悩んでいる。わたしがそこでいったのは、まず目先のことからやらなくてはいけないということ。そこから積み上げていくとスピードがついてくる。大きなところを目指すのはいいことだけど、逆に物事はうまくいかなくなるものなんだよ。そういうことを辛抱づよく伝えていった。他の研修生も「わたしもいろいろ経験してきたけど、やっぱり、一歩からやることが一番早い道ですよ」ってアドバイスしてくれて、しまいには「高橋さん、いまやるべきことをやればいいんですよね」って、わかってくれた。
「間に合う!」っていってしまった手前、どうしようかと思っていたから「よし!やった!」って思ったよ(笑)。小さな実行が大切というのは、わたしの理屈ではなくて、自然界がそういっているの。自然規範、自然順応、自然尊重のなかの自然規範と呼ばれているもので、自然から学ぶべき部分なんだ。
それからそのひとの72歳以降の人生をどういうものにするか、死ぬまでの間の計画を練ったよ。そしたらね、彼はひとつの小さな種を育ててみたいという希望を持っていた。その種は荒れ地でも育つから、まずそこから取り組んでみようと思ったの。この種を育てると、いい油がとれる。それをさらに続けると、いい繊維がとれる。そこでまず、目標を油をとることにおいて、死ぬまでにそれだけは達成できるようにしようと話し合った。自分では続けられなさそうになったら、若者に託そう、と。こういう計画をたてたんだ。
そりゃ、燃えるでしょう? 目標を達成するためには死んでなんていられないんだから。それからはイキイキしはじめちゃって、こちらが「もういいでしょ?」ってなるくらい(笑)。お年寄りはどのように死のうかって、そんなことばかり考えているけど、彼みたいに自分の仕事がある人は死んでいられないからイキイキしているよ。
- 高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」
-
- ・第1回 純粋なものでやっていく
- ・第2回 自分の感動が覚悟になる
- ・第3回 理想を理想じゃなくしよう
- ・第4回 はじめは「一」でいい
- ・第5回 入った毒は、自然がすぐに処理をしてくれる
- ・第6回 肩こりみたいな症状が土の中で起きている
- ・第7回 頭のなかの肥毒
- ・第8回 先を見て農業をやっていく
- ・第9回 自然流だと、最後はちゃんと実りがある
- ・第10回 大きな目標より目先のことから積み上げていくとうまくいく
高橋博(たかはし・ひろし)
1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
高橋博の 自然が何でも教えてくれる #09
毎月1日更新!
第9回 自然流だと、最後はちゃんと実りがある
自然っておもしろいだろ? 自然農法は無料でこのおもしろさを体験できるんだから最高だよ。うちのかあちゃんなんて20年間ずっと反対していたけれど、「もう講師になれるぞ」っていうくらい詳しいよ。「お前、あれだけ反対していたのに、ここまでになったか」って思うくらい、芯からの話ができるようになった。離婚届けをもってくるほど反対されていたけど、実証があったから、「本当だ」となったわけさ。いつかうちのかあちゃんがどこかで講演することもあるんじゃないかな。農家の妻であるということにはどんな悩みがあるかとか、そういう話ができるじゃない。
うちのかあちゃんだったから、わたしはやってこられたんだよ。強い女で、家庭をちゃんと守ってくれたからな。12年前に家を建て直せたのも、かあちゃんのおかげ。貯金の額からしたら万全ではなかったんだけど、もうボロボロで子どもたちも友だちを家に呼べないほどだったから、ちょっと借金して、建て替えることができたんだよ。土地を売ったとかじゃなく、農業だけでだよ。持参金を削りながら生活していた頃もあったというのにね。
うちのメンバーが言うのは、「自然農法だけで家を建てられたのは、高橋さんのところだけ。だから力になる」って。「ちゃんとやっていれば、たとえ一般ほど収量があがらなかったとしても、なんとかなるんだ」って思ってくれる。まぁ、それでも贅沢は控えたよ。最初の頃は車もポンコツで、2〜3万円で友だちから買ったのに乗ってた。うちのかあちゃんは実家に帰るのに坂道を登らなくちゃならないんだけど、おばさんを乗せると、その車は重くて坂をあがれないんだって。おばさんに「降りて押そうか?」って言われるほどの車に乗っていたんだから。
農家っていうのは意外と付き合いが多いから、そういう出費もあった。家のなかの出費を詰めるしかなくて、親戚から「絶対に貧乏するぞ」なんて馬鹿にされたりもして、それはすごく辛かった。当時はまだ俺も理屈は達者だったけど、事実をだせていなかったからね。最初の10年くらいは大根も「小根」だったりして、売りものにならない野菜ができちゃうの。それでも食べてくれる消費者がいたから助かっていたけど、いまだったら廃棄されるレベルのものだよ。
親にも「世間がみてるじゃないか、みっともないからやめろ」とか厳しいこともいわれたね。それでも、「早いもの勝ちだ。早く毒抜いたほうが勝ちだ」って思っていたから、一般の農業をしていた分でなんとか収入をたてて続けてこられた。かあちゃんも、本当にピンチになったときはもう割り切ったといっていたね。お金が最低限なんとかなって、子どもたちに将来をかけて、俺はいないくらいのつもりで生きよう、と。そのうちに収入がたつようになってきたのよ。
世間から見て苦しそうなことも、わたしには楽しかったよ。わたしはいつでも、なにか問題が起こることを待っているんだ。試してみたいんだよ。自然の原理原則で解決してみたいんだ。だから、世間流の問題がでてくることが、いまは楽しい。自然にとってみれば簡単なことなのにね。まだまだ勉強したいなぁ、と思っているよ。そういうふうに変わった姿を、かあちゃんは認めてくれたんだろうな。
彼女もすごく穏やかになった。前はすごく強いというか、キツい女だったよ。きっとそうじゃないと生きられなかったんだろうね。最近は親戚にも「本当に穏やかな顔になったねぇ」と言われていたもの。そうじゃないといけないよな。本物を続けていれば最後はいいようになる。最後の最後まで苦しんで終わるものは、嘘だから。自然はそういうふうになっているの。人間流は苦しみで終わるかもしれない。自然流だと最後はちゃんと実りがあるんだよね。種を蒔いて育てるときは嵐がきたり、いろいろなことがあるけど、ちゃんと実はなるんだ。
- 高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」
-
- ・第1回 純粋なものでやっていく
- ・第2回 自分の感動が覚悟になる
- ・第3回 理想を理想じゃなくしよう
- ・第4回 はじめは「一」でいい
- ・第5回 入った毒は、自然がすぐに処理をしてくれる
- ・第6回 肩こりみたいな症状が土の中で起きている
- ・第7回 頭のなかの肥毒
- ・第8回 先を見て農業をやっていく
- ・第9回 自然流だと、最後はちゃんと実りがある
高橋博(たかはし・ひろし)
1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
0525|田植え|ミルツル|なんだわん!
みなさん、こんにちは!
またもや1週分飛んでしまいましたが、
みなさまは、お変わりありませんでしょうか?
マーマーマガジン編集部は、
写真集マリイ発売の熱を体内に保ったまま、
怒涛の田植えシーズンに突入いたしまして、
筋肉痛の日々を過ごしております!
山登りだと筋肉痛にならないのに
田植えだとこんなに足が痛くなるの、、、なぜ!!???
そう!
田んぼをはじめて2年目の今年も!
すべて手作業で行います。
あたらしい取り組みとしては、
タネから苗を育てていること!
先日の田植えでは、購入した苗を植えたのですが、
第二弾では、現在生育中の苗を植える予定です。
ムーン、どうなるのか。
購入した苗は、コシヒカリ、
タネから育ててるのは、カメノオだそう
(先日、毎日新聞の連載で書かせていただいたMOMINOKI HOUSEの玄米も
カメノオでした。奇遇!)、、、。
さて、どうなることか!!
今回は、田植えの途中から、
裸足になって泥を踏んでみましたが、
ああ、もう、それだけで、治療といいますか、養生、という感じですね。
その日はもう、びっくりするほど、深く眠りました!
うちの田んぼは、農薬も肥料も使わない、
基本、不耕起の田んぼなのですけれど、
とにかくオタマジャクシとか、オケラとか、
いきものが、たくさん!!!!!!!!
きっと、目に見えない微生物ちゃんたちもたくさん!!!
ですよね。
感動するのが、空から鳥たちも結構見てる!(ヤッホー)
なんか、そういったこと全体が
渾然一体となって、自分のからだやこころや魂と
響き合うような気がしてます。
日本人=米!とかいうことではなくて、、
なんというか、
ただただ、田んぼは、すごいです。
農薬肥料なしでやったら、聖地になるんじゃないかと思うほど、
居心地がいい!!
田んぼをメインでやっている
福太郎さんは、収量(どれくらいお米がとれるか)とかではなく
よい景色をつくりたい!といっていて、
なるほど、その景色って、
本当に、もう、自然の何もかもが全部入りきった景色なんだな、
そこには、目に見えない微生物から、目に見えない時間まで
しっかり入り込んでいるんだなって感じます。
こんなスペシャルな体験、
もう、誰もができたらすてきだろうなあ、、
一人にひとつの小さな田んぼができたらすてきです、、、。
わたしは、個人的に、芳香植物、薬草に燃えてまして!!!
ローズマリーとアップルビネガーでリンスしてみたり、
チャイブをお料理に活かしたり、楽しんでます。
植物の世界がたのしくてならないです。
ちいさな田んぼがいくつかあるんですけれど、これがすごくかわいい!
カメノオを植える場所がなくなったのでまた田んぼをつくるそうです! 自由でイイネ!
と!
ちょっとまった!
ちょっとー
のりえさん、
田んぼで何リボン付きのハットかぶってんのさ!
と思ったら!!!!! ららら!!!!
便利すぎるーーーーー!!!!!(感激)
農作業していると、
この顔を覆うの欲しくなるんですよね!!!!!!
私など、完全に、活動家状態。
……
……
(シーン)。
最近、好きな格好をすると
サヨク活動家少女ないしは、
よくいるおじさん、と、全く同じ格好になる機会が加速してる、、、
(先日、国立近代美術館へ行ったら、
横山大観展やってて、それを見にきていた、
キャップかぶったおじさんと、相当着こなしがかぶってました。
おばさんはおじさんになり、おじさんはおばさんになっていくのかも……まあ、いいや)
あ、そうそう、
のりえさんが来ているかわいいモンベルは、
こちら!
おしゃれハット
モンベルですよねー♪こちらは美濃のエムエム・ブックスみので
お取り扱いがあるそうです!
エムエム・ブックスみのといえば!
今日からミルツル展がスタートしてます!!
セミオーダー、オーダーメイドなども行なっている
ミルツルの世界、ぜひ見にいらしてくださいませ!
そうそう、この写真のはおりものづくりのワークショップ、
明日も開催しています。
くわしくはこちらをご覧ください!
また東京では引き続き
写真集マリイの展示が
代官山蔦屋書店で開かれています!
ちいさな棚ですけれど、
生で松岡一哲君の写真を見ていただける貴重な機会!
お求めになりやすい、
ポスターやポストカードもあります!
もちろん写真集も中を見ていただけますよ!!!!
ぜひぜひ、あそびにいらしてくださいませね!
おまけ
うー
わん!
(深い意味はありません)
めんげんがひどい方、
毒出しがどっと出ている方、
あちこちでお話を伺います。
5月ですものね。そういう季節ですよね。
また星の大移動とも関係があるかもしれません。
古いものを捨ててください、というメッセージかな。
わたしも今朝、プチ断捨離しましたよー(スッキリ)!
ではでは、どうぞどうぞ、
健やかな週末をお過ごしくださいませね!
服部みれい、ど、え、した!
●声のメルマガ、来週はお休みです! 次回は、6月6日(水)配信です!
チャオ酢!
高橋博の 自然が何でも教えてくれる #08
毎月1日更新!
第8回 先を見て農業をやっていく
うち(自然農法成田生産組合)の規格は厳しいよ。わたしが代表にいたときにそうしたの。そのくらい厳しい基準を設けないと、農家も土づくりに真剣にならないからね。基準を甘くして、どうでもいいというふうにすると、農家の人たちは努力しなくなって、努力しないとお金にもならなくなる。結果、経済的にも農家にとってよくないことが起こる。
肥毒が抜けたいい土のほうが収量が上がるね。収量が上がらないと価格が上がって今度は消費者を泣かせるんだ。農家も自分たちの生活があるから、高く買ってよ、となる。だから、昔(の自然栽培の野菜)はいまの倍の値段だったよ。だけどこれは許されないだろうと思ったの。
そうして、農家が努力するにはどうすればよいかと考えて、組合の規格を経済連規格にして厳しくしてみた。それから、土がついたまま出荷してはいけないようにした。だって土つきだったら、虫がついていたとしても、ごまかせてしまっていたから。最初のうちは土の件にしても、反発をくらったよ。「消費者は洗わなくていいといっているじゃないか」とね。そのときはそれでも強引に押し切った。それは、そのほうが農家のためになるからと思ったから。消費者のためでなく、農家のためであることを強調してね。
最初は厳しくスタートしたんだけど、それから「洗わなくてもいい」っていう消費者がでたら、それがものすごく楽に感じるようになった。「選別もそれほど細かくやらなくてもいい」となったら、それもものすごく楽に思えたりね。厳しい後の楽は、ものすごく楽なの。
わたしだって先生に教えてもらっていたときは、鞭、鞭、鞭、だよ。絶対に先生は飴くれねぇんだ。ぶたれてぶたれて、「痛てぇよー」といったら、それでまたぶたれるんだ。「この野郎、冷てぇ野郎だなー」って思ったものだよ。それでもね、そんなんだから、たまーにくれる飴が、ほんとに甘く感じるわけさ。自分がそうされてきたから、この育てかたをおぼえちゃった。飴と鞭なら、鞭優先。そのひとを思えば、一瞬そのひとに恨まれるくらいわけないからさ。
最初の頃は草、草、草。同時に肥毒抜きの準備もしていたし、大変だったね。最終的にうまくいっているところを見ても、みんな「自分にはできない」ってなっちゃうもんな。「俺んちもう終わりだもん」とか「俺んちは将来の金が欲しいんじゃない。いま金が欲しいんだ」っていうんだ。それがいまの農業。明日の生活が大変だから、5年先10年先の準備なんかできない。もし、今年で農業を終わらせるつもりのひとたちだったら、自然農法はやらないほうがいいと思うよ。
よくいうのは、「ここまでできるのに、なんでやらないの?」ってこと。このあたりでも、あと10年後には農業人口は半分になっちゃう。そういう先のないひとたちはやらないね。だけど、人類はまだ続くだろう、世界で食糧は必要だろう、という人たちは、先をみたなかでこういう農業をやっていくといい。これだけチマチマやっていて、この広い田んぼ・畑がいつになったら全部変わるんだろうと思うけど、わたしたちにはその自信があるからね。それは自然があらわしている。自然規範のなかでの答えだから。
わたしが編み出した方法で、高橋流で考えてわたしがやっているんだとしたら、「高橋式自然農法」とか名前つけて本を書いてるよ。でもそれをやらないのは、わたしの農業っていうのは、ただ自然界が編み出してくれた農業だからなんだよね。わたしはただ自然を代弁してしゃべるだけのことでね。だから、自分で本を書くなんていうのは、おこがましくてできないわけ。いまでこそ、インターネットとかいろいろな資料のわたしの名前はでているけど、それらのなかには自分から出したものはひとつもないからね。
肥毒が化学肥料だけのときはよかったんだけど、最近の畑の土は汚れてしまっているから。「河名(秀郎 ナチュラル・ハーモニー創業者)さん、これわたしたちが生きているうちに間に合うかなぁ。もしかしたら間に合わないかもしれないよ」、「でも、やるだけやろうやぁ。何人かの犠牲はしょうがないだろ」って話している。
日本はいまも土を汚しているんだ。大変な時代にはいってしまったんだよ。化学肥料の時代だったら肥毒は5年で抜けたからもしれない。でもいまは、さらに5年くらい肥毒抜きしなくちゃいけない。からだに入ってしまったらなかなかでてこないんだ。最近取り組みはじめたひとたちの畑は虫の大発生だよ。うちのメンバーもそうだけど、10年目になって大量発生とかね。それで肥毒は抜けてきれいになったけど、その畑の大根を全部捨てなくちゃいけなくなった。しょうがないことだけどね。
「本当に当たり前のこと」(第1回参照)がみんなできないんだよな。事実がでちまえば、それがあたり前になったと思えたひとたちがあたり前の生活をしてくれるよな。みんな鞭の時代を過ごしているから、こんな飴をみるとみんな、「本当だ!」と思うから。だから最初は鞭、鞭でいこうと思っているんだよ。
鞭を浴びせられたひとはきっと、「痛てぇ、痛てぇ」っていったろうな。だけども、そのあと絶対に「ありがとう」という言葉がでてくるから。本当にみんなここから卒業した連中が、手紙なんかで報告をくれるんだよ。「やっと独立しました!」とか「今年からはじまりました!」とかね、そういう報告が全国から届くよ。
- 高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」
-
- ・第1回 純粋なものでやっていく
- ・第2回 自分の感動が覚悟になる
- ・第3回 理想を理想じゃなくしよう
- ・第4回 はじめは「一」でいい
- ・第5回 入った毒は、自然がすぐに処理をしてくれる
- ・第6回 肩こりみたいな症状が土の中で起きている
- ・第7回 頭のなかの肥毒
- ・第8回 先を見て農業をやっていく
高橋博(たかはし・ひろし)
1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。