第3水曜更新
Magical Mayberry Muffins
Episode 6 The moon showed me perfection

◎前回までのあらすじ
アメリカから帰国したNaoは、湘南の町で暮らしている。彼は砂浜で一人の女性と友人になり、頻繁に会うようになった。この日も、Naoは彼女を散歩に誘った。
ね、春の夜のひんやりした風に当たりながら、真っ暗な浜辺を散歩するのも、なかなかグッドでしょ?
昨日、雨が降って空気が洗われたからかしら、いつもより星がよく見える。新月も近いものね。ほら、月があたしのボディみたいに細くなっているわ。……ちょっと。今の笑うところじゃないわよ。
え? 今日はなにをしていたのかって?
なにしてたかしら、あたし…… あぁ、そうそう。こないだ近所のナーサリーで香りの良いラベンダーの苗を見つけて、今日はそれを庭に植えたの。Berkeleyでもラベンダーを育ててたから、ノスタルジックな気分になっちゃって。植え終えたころには、気づけばサンセットタイムだったわ。
で、あなたはなにしてたの?
……やだ、「一日ムダにした」ですって?
ふむふむ、スマホで何時間もゲームをしたり、YouTubeを観たりしていたのね。
I have a quick question. ちょっと聞いてもいいかしら。
その時間を、どうして「ムダ」だと思うの?
「気づけば何時間も過ぎていた」ってことは、それだけ夢中になれたってことじゃない? 楽しかった瞬間だって、きっとあったでしょう。だったら、受け取ったものはきっとあるはずだし、こころの栄養というか、糧になったことだってあったはずよ。
あたしの話をすると、子どもの頃のあたしって、超インドア派だったのね。そういうと聞こえはいいけれど、まぁ、要するに引きこもってたのよ。
ある時期から学校に行くのがつらくなっちゃって、一日中、家から一歩も外に出ず、朝から晩まで漫画を読んだり、ゴロゴロしたりして過ごしていたわ。家どころか、部屋からも出ない日もあった。
そんなあたしを、ママは決して叱らなかった。代わりに、いつもこう言ったわ。
「Nao。あなたは今、充電しているの。
人はね、みんな大きさの違う電池を持って生まれてくる。その電池が長持ちする人と、すぐに切れちゃう人がいて、あなたはお友達よりもちょっとだけ早く電池が切れちゃったのよ。
だから今は、たっぷり充電しなさい。漫画を読んで、ゴロゴロして、いつまでも寝て。そうやって、思う存分、飽きるまで家にいなさい。充電がいっぱいになったら、自然と動きたくなる。気づいたら動き出している。そういうものなの。だから、安心してそうしていなさい」
そして、ママはこうも言ったわ。
「いい? みんな、いつか電池が切れるときがくるの。そのときがきたら、勇気を持って充電すること。
そうよ、Nao。充電するのは、勇気がいることなの。大人になればなるほど、ね。あなたはたまたま、ママのような人間のもとに生まれたから、簡単に充電ができたけど、世の中は、社会は、簡単には充電させてくれない。変でしょ。そう、変なのよ。誰もが必ず電池が切れるときはくるのにね。
大事なことは、充電しなければいけなくなったとき、今のあなたみたいに、思う存分、たっぷりと充電できるかどうか。中途半端だと、またすぐに電池が切れて、こころもからだも動かなくなってしまうわ。
大人になってからの充電は、子どもの頃よりも何倍も勇気がいる。だから子どものうちに、このさき20年分くらいの充電を、一気にしちゃえばいいの」って。
おかげさまで、充電がいっぱいになったあたしはスーパー元気になって、アメリカで暮らして日本に帰ってきて、気づけばあれから20年。
で、再びこうして電池が切れたってわけ。もう2年も仕事をしないまま、充電をし続けているわ。
あたしの今日という日も、見方によっては、なにも生産性がない、ムダな一日だったかもしれない。
でも、あたしはちゃんと知ってるの。充電がいっぱいになったら、人は自然と進みだすってことを。
そう思うと、どんな一日だって完璧ね。You know?
……あ、見て!
流れ星!
一日の終わりに流れ星に出会うなんて、少々出来すぎなくらい、完璧な一日だわ。
さぁ、そろそろあたし達も、充電しに帰りましょうか。
Have beautiful dreams.
Good night.
(この物語はフィクションです。実在する場所が登場しますが、登場する人物・出来事は全て架空のものです)

セラピスト、アーティスト、文筆家。2011年よりスピリチュアル・カウンセラーとして活動(2020年に休止)。現在は鎌倉のショップを不定期で運営しながら、アート表現、執筆、講座などを行う。主な著書に『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『自分を愛する本』(服部みれいとの共著 河出書房新社=刊)、『わたしがととのう毎日のチャクラケア』(服部みれいとの共著 徳間書店=刊)。また、2025年秋に発刊したライトノベル『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)は、この物語の前日譚である。2026年6月、エムエム・ブックスから新刊が発売予定。初夏には、みれい☆かるちゃ~☆すく~るで第1チャクラ講座を開催予定。
