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Special Issue 別マー特集

更新日 2011/01/21

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本誌スタッフと学ぶ、支援学と利他性の経済学 murmur学園 舘岡ゼミ 講師 舘岡康雄さん/ゼミ生 服部みれい(マーマーマガジン編集長) 清水仁志(編集アシスタント) 中島基文(アートディレクター) リリアン(モデル)

第2回は、支援学の最先端といえるコーズパラダイムについてです。
「あなたはわたしの答えである」、そんな人と人の関わりかたが、未来に待っている?
舘岡先生の貴重なお話は、時代の変化のさらに先へ目を向けるための
明かりとなってくれるはずです。それでは、教室へ!

第2回 わたしがあなたの答えになる!?
相手は自分の答えとして現れる

(服部、以下服)現在、世の中は、縦割り型の管理的な経済であるリザルトパラダイムから、ひとりひとりが天分を発揮して働くプロセスパラダイムへ移行しているとのことでしたが、プロセスパラダイムのさらに先、コーズパラダイムについて教えていただけますか? 直近の未来というよりも、10年後、20年後の世の中がどうなっていくのか、知りたいです。

(舘岡、以下舘)まだ公の場ではお話ししていない内容なのですが、『マーマーマガジン』で特別に先行でお話しさせていただきますね。

他者をどう認識するか、という点からお話しします。たとえば、ひとりの人がいるとして、まずは「あの人は○○という名前で、○○大学の先生で、こういう家族構成だ」といった認識のしかたがありますね。

相手に関心をもつことの大切さは、ドラッカー※註1 やカーネギー※註2 もいっていますが、実はこのように他者を属性によって認識することは、リザルトパラダイム的な手法といえます。

プロセスパラダイムにおいては、他者を「一緒につくる相手」と認識します。今、わたしの前にはリリアンがいますが、わたしはリリアンを「(この講義を)一緒につくる相手」として認識するということですね。リリアンにとってのわたしも「一緒につくる相手」になります。

(リリアン)なるほど。

(舘)さらに進んだ状態といえるコーズパラダイムでは、相手は自分の答えとして現れます。「あなたはわたしの答えです」という気持ちで相手に接するのです。

わたしが今、服部みれいさんの前にいるということは、わたしがみれいさんの抱えている問題の答えとして現れている、ということですね。みれいさんもまた、わたしの答えとして現れているということになります。これが、コーズパラダイム的な考えかたです。

(服)たとえば……、実は、このインタビュー、さまざまな偶然の重なりによって急遽実現したものなのです。先生のインタビューを本誌11号に掲載させていただくことでとても助かった。わたしにとって、このインタビュー掲載が答えであったように、先生にとっても、わたしが何らかの答えになっていたということですか?

(舘)そのとおりです。わたしは支援という考えを世の中に広めることで、日本のもつすばらしさをもっと引き出し、世界が変わっていってほしいと考えています。だから、別件でみれいさんに会っていたのですが、この記事掲載のお話を聞いたときは、とても勇気づけられたんですよ。

(服)それは知りませんでした!

(舘)「互いに答えである」ということ。それがコーズパラダイムなんです。

(一同)ほーっ! すばらしいですねー(口ぐちに)。

病気もない。交通渋滞もない。すべてが調和する

(舘)世の中ではこれと同じようなことをシンクロニシティと呼んだりもしますよね。でも、シンクロニシティのニュアンスは、「偶然こんなことが起こってラッキー」といったように、そのことを対象化している面がある。ある意味、リザルトパラダイム的なのです。

(服)コーズパラダイムで起こることは、それとは違うのでしょうか?

(舘)人間のからだで説明しましょう。人間のからだって、そもそもコーズパラダイム的なんです。

たとえば臓器も、機能的に互いを支えながら存在している。胃も腸も脳も、それぞれがお互いの答えとなりながら活動しているんです。

医学でいうと、リザルトパラダイムは、患部を切除するといった対症療法にあたるというお話をしましたね(本誌11号参照)。プロセスパラダイムでは、同じ病気を「なぜ病気になったのだろう? わたしの生きかたにどんな問題があったのだろうか」と考えるチャンスとしてとらえます。

リザルトパラダイムで問題とされていることが、プロセスパラダイムではチャンスと考えることができるんですね。では、コーズパラダイムではどうなるのでしょう?

(服)からだ全体がお互いの答えとなり、調和している状態ということですか?

(舘)そうですね。コーズパラダイムが達成されると、生命力自体が旺盛になってくるため、病気にかかりようもなくなってしまいます。もしウィルスが体内に入ってきたとしても、ウィルスよりもからだのほうが強いので病気は発症しません。がんの毒素だってからだの外へ出してしまうでしょう。

(服)リザルトパラダイムからプロセスパラダイムへの移行中だと、「えーっ!? そんないい話がある!?」ってつい思ってしまいそうですが、でも、実際問題、「自然」というのは、コーズパラダイム的に成り立っていますものね。先生の今回のインタビューと先生ご自身がお互いに「解」であったように。現実の中で、わたしたちは、コーズパラダイムも実は体験しつつあるといっていいのでしょうか。

ちなみに、本誌11号で紹介した交通渋滞の例でいうと、全部が調和しているとなると……、コーズパラダイムの中では、交通渋滞が起こるべくもない状態ということになるのでしょうか?

(舘)そうなるでしょう。「何のために競争するのか」、「何のために車があるのか」というところまで含めて、あらかじめ考えられているでしょうから。

(服)誰も車に乗らなくなっちゃったりして。

(舘)それがオチかな(笑)。コーズパラダイムになれば、プロセスパラダイムでいう支援そのものが必要なくなります。目の前に現れる人があなたの答えだったら、支援の必要もありませんよね。人類がそこまでいけるのかどうかはこれからの科学しだい、といえます。支援学がそのあと押しとなってくれるよう、わたしもがんばっているわけです。

(第3回へつづく)

※註1 ドラッカー(P.F.ドラッカー。1909まれの「マネジメントの父」といわれる経営学者・思想家。 著書『マネジメント』を題材にした小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』 が200万部を超えるミリオンセラーに)

※註2 カーネギー(D.カーネギー。1888年生まれの実業家。著書に、『人を動かす』『道は開ける』など)

プロフィール

[たておか・やすお]

東京大学工学部卒。大手自動車メーカー勤務を経て、現在、静岡大学大学院教授。1996年より「プロセスパラダイム」を提唱し、支援学を開発。北京大学、スタンフォード大学など国内外で講演多数。著書に『利他性の経済学―支援が必然となる時代へ』(新曜社=刊)。「別マー」でも新連載スタート予定!

舘岡康雄さんはエコ部にも登場されています



↓舘岡康雄さんの一対一のインタビュー「支援学と利他性の経済学入門! あたらしい時代の あたらしい働きかた読本」は
 本誌11号でご覧いただけます