第4水曜更新
思春期倶楽部
ほんとうのわたしを求めて
10日目 ベルリンのティーンの生態

サバイバルスキルさながらのシェアライフ
日本では礼儀正しく、「身なりのきちんとした」思春期キッズが一般的、というか社会の求める姿かもしれません。そうでない子はちょっと目をつけられちゃう。そんな気配もございますね。子どもたちは一様に高価なメーカーの携帯電話を所持し、ブランドものを気軽に身につける子どもも少なくありません。
一方でベルリンの子育てを眺めていると、子どもにお金をもたせない、というのが基本のように感じます。もちろん家庭によってさまざまではありますが、子どもに極力消費力を与えない傾向が強いのです。それは思春期の子どもに対しても同じ。その上、ベルリンの高校生はバイトをする習慣がありません。街にコンビニがありませんし、カフェやレストランで大学生以下の子どもが働くということは、とても稀なのです。
そんなわけでベルリンの思春期キッズは、基本、お金をもっていません。だからみんな工夫をして暮らしている、という光景をよく見かけます。たとえば友だちとの洋服のシェア。ひとりが一着買って、3人いれば3着の洋服をみんなで貸し合ってたのしめるというわけです。ものをシェアするという暮らしかたです。ドイツでは教科書も貸出制ですし、家主の留守中は、ペットの犬や猫をご近所さんに預けることが日常的な国です。そうしたカルチャーの中で、思春期の子どもたちは、まるでサバイバルスキルのようにシェアライフを発達させていっているようでもありました。
ビール片手に公園でポーカー
ベルリンの思春期の子どもがいる場所といえば、なんと公園。ベルリンはカラオケやゲームセンターのような娯楽場がほとんど存在しないのです。だから公園であそぶためのマイ卓球ラケット、バレーボール、サッカーボール、スケートボードなどのあそび道具をもっているのがベルリンティーンの基本です。
ベルリンでは16歳からビールとワインといった醸造酒の飲酒が許されているので、公園に行ってビールを飲みながら草原で大勢でビール瓶を倒すゲームをやっている、そんな光景にも出合います。その上、いなせなお兄ちゃんたちのポケットから飛び出すのは、なんとトランプ。キヨスクの屋外ベンチでビールを飲みながらトランプをしている。これがベルリンのティーンの生態。放課後、ビール片手に公園でみんなでポーカーをする。そういう、大人なんだかこどもなんだかわからないような過ごしかたをしている思春期キッズたちをよく見かけます。それが一種の大人への通過儀礼のようでもありました。タバコが18歳で許可されると、堂々と学校の前で一服吸ってから登校する姿を見ることも稀ではありません。その辺はもうなんでもあり。すべて自己責任。個人の自由。ピアスもタトゥーもなんでもござれ。そういうことに大人が眉をひそめることもありません。
その「枠」は何のために?
そういう面でいうと、ベルリンのティーンはとても自由です。どんな姿でもいいのです。もちろんいいことばかりではありません。自由には責任が伴いますし、若いときから飲酒が認められる国での悪影響もあるように思います。
ただ、きっと子どもが自由でいられる場所は、大人も自由なんだと思います。「こうであるべき」という「枠」を子どもに与えるとき、多くの場合その枠は既に大人自身がもっている「枠」なのだと思います。子どもがやっていること、それは多くの場合、本質的には大人がやっていることに似通っています。
もし今、子どもたちにその「枠」があると感じるのなら。その「枠」はなぜ、何の目的であるのかを今一度点検してみる必要があるかもしれません。本当にそれはこどもたちの「健やかな成長」のためにあるのか。それともわたしたち大人の単なる習慣や、「そうであるべき」というエゴや権力やさまざまな不必要な理由によるものなのか。
なぜなら、その「枠」を彼らに課するならば、わたしたちにはそれに対して責任があるからです。そして子どもたちはそんな大人の在りかたを、強かに、冷ややかに、吟味しているのだから。
つづく
◎本連載における「思春期」とは、シュタイナーの提唱する7年周期による人間の成長段階にもとづき、第3・第7年期にあたる、14歳から21歳の時期を想定しています。ただし、子どもたち自身が思春期をまっとうすることができなかった場合、その年齢を過ぎても、思春期のような状態が続くことがあります。

三男三女・6人の母。10代からファッションモデルとして雑誌や広告で活躍。出産・子育てをきっかけに、シュタイナー教育やマクロビオティック、ヨガなどを取り入れた「自然な暮らしと子育て」を実践し、その経験をまとめた著書を多数刊行。クシマクロビオティックアドバイザーの資格を取得後は料理指導をはじめ、オーガニックな家庭料理を提案するレシピ本も発表している。
2013年にドイツ人の数学者と再婚し、ブラジルでの生活を経てベルリンへ移住。現地ではヒルデガルト・ヘルスケアアドバイザーの資格を取得。現在はモデルとして活動を続けながら、「台所から子育て・暮らしを健やかに豊かに」をテーマとしたオンラインコミュニティ「Mitte(ミッテ)」を主宰。母の健やかさは子どもの健やかさへ、女性の健やかさは社会の健やかさへ、がモットー。子ども時代、インナーマザーフッド(内在的母性)を守りはぐくむ暮らしの提案を行う。2026年5月26に最新著書『Motherhood Childhood おかあさんって、なんだろう』(エムエム・ブックス=刊)が発売。5月から、みれい☆かるちゃ~☆すく~るで「大人のシュタイナー教育」講座を開催。
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