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くしま けんじ

第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第9回 「のりべん」弁当

お弁当屋さんにお弁当を買いにいったとして、何のお弁当を選びますか。

過去を振り返ってみて、何度か、おそらく10回くらいはお弁当を買いに行ったことはあると思うけれど、そのときにも、まず選ばないなぁ、と思っていたお弁当、それは「のり弁」。

 

なんだか地味な感じがするし、お箸でごはんをひと口食べようとしたときに、全体を覆っていた海苔が、べろっと大きく剥がれてしまって、ふた口目以降のごはんには表面が茶色くなった部分だけが残されるのも、気分がよくない。

今までの人生で、二、三度は食べたことがある気がしますが、好きだな、これおいしいなと特段思った覚えはありません。

 

パートナーと、本話冒頭の「何のお弁当を選ぶか」の話をしていたとき、パートナーの口から「のり弁!」、ということばが出てきたときには、だから、心底おどろきました。

のり弁など眼中になく(のり弁が好きな方々、ごめんなさい)、意表をつかれたので、のり弁のどこが、何が、どう好きなのか? を根掘り葉掘り聞いてみました。

そして、そうか、そんなに好きならば、のり弁、つくってみようじゃないか、と、腕まくりをしたのです。

 

お弁当を売っているお店の前を通ると、そこの「のり弁」をじっと見て、どんなおかずがのっているのか、など研究して、その上で、のり弁らしさもあって、自分がつくるなら、というおかずの献立と、のりごはん、でつくってみたのが、この「のりべん」弁当。

 

白身魚のフライや、ちくわやおかかは入らないけれど、おいしい、また食べたいな、と思える、自分らしい「のりべん」ができあがりました。

 


 

おからこんにゃくとしいたけの磯辺揚げ

〇材料(2人分)

 

●おからこんにゃく 1/3枚分ほど(1枚が300gのものを使用)*

 

●しいたけ 大きなもの1個(小さければ2個)

*おからとこんにゃくを混ぜてつくられた、こんにゃくのような板状の食物繊維豊富な食品のこと(くわしくは「補足とポイント」にて)

 

●衣

・薄力粉 大さじ2と1/2

・片栗粉 小さじ2

・水 大さじ3

・青のり 小さじ1と1/2+適量

・塩 ふたつまみ

 

●揚げ油(米油や菜種サラダ油など) 適量

 

●下味液

・昆布 切手大1枚

・干ししいたけ 1/4個分

・長葱の青い部分 5センチほど

・水 60g

・醤油 小さじ1と1/2

・しろたまり 小さじ1と1/2

・塩 ふたつまみ

 

◯つくりかた

①おからこんにゃくは、厚みを半分にスライスし、その一枚を、2/3の大きさに切り、それをさらに斜めに切って、長い三角にする(形や大きさは、好みに合わせて大丈夫)。

しいたけは石づきを取り除き、手で半分に割(小ぶりの2個であれば、そのまま使う)。

 

②ボウルに、下味液の材料を混ぜ、おからこんにゃく、しいたけを漬け、下味を染み込ませておく。2時間以上置く。ひと晩漬けておく場合は、冷蔵庫に入れておく。

 

③別のボウルに、衣の材料を入れ、小さな泡立て器や箸などでよく混ぜておく。

 

④おからこんにゃくを、下味液から取り出し、キッチンペーパーなどで押さえ、水分を軽く拭き取る。しいたけは、手で軽く絞ったあと、キッチンペーパーで押さえる。

スプーンで、青のり適量(好みでよいが、全体で小さじ1と1/2ほどを目安に)を振りかけ、おからこんにゃくとしいたけの表面にまぶす。

 

⑤揚げ油を中温に熱しておき、おからこんにゃくとしいたけを衣にくぐらせてから、油で揚げる。

表面がかりっとして、箸で持ち上げたときに、微細な振動が手に感じられるようになったら、油から引き上げ、キッチンペーパーなどの紙の上に取り、余分な油を切っておく。

 


 

のりべんののりごはん

〇材料

 

ごはん 1.5合分

海苔 全型3枚ほど

醤油 大さじ1ほど

 

〇つくりかた

 

①お弁当箱2つにそれぞれ、ごはんの1/4程度の量を、お弁当箱の底全体に広げる。

 

②広げたごはんの上に、海苔を手でちぎりながら(おおまかでよいが、3センチ角を目安に)重ねながらのせ、ごはん全体を覆う。

 

③海苔の表面に、スプーンなどを使って、醤油(全量の1/4量ほど)を全体に塗るようにしてかける。

 

④海苔と醤油をのせた上に、もう一段、ごはんを1/4量広げて、①〜③の工程を繰り返し、2段重ねののりごはんにする。

なお、二段目の海苔は、縁にごはんの白が見えていたほうがきれいなので、少しだけごはんの縁を残して、覆うようにする。

 


 

〇仕上げ

のりべんののりごはんの上に、おからこんにゃくとしいたけの磯辺揚げをのせ、さらに好みで、お漬けものなどを添える。

写真は、岐阜県の伝統的な赤蕪のお漬けもの「めしどろぼ漬け」と、青梗菜を茹でて米油と塩で和えたもの、ごぼうとにんじんの笹がきを醤油とみりんと梅干しの種で煮たもの、を盛り付けた。

 


 

○補足とポイント

 

・「おからこんにゃく」は、下味をつけて調理すると、食べ応えが出て、おいしい。

揚げもののほか、炒めたり、焼いたりとさまざまな料理に使える。

製造元(津軽雪花)でも勧められているように、一度冷凍したものを解凍して使うと、繊維の質感が空気を含んだように変わり、味の染み込みもよくなり、おすすめ。

今回の磯辺揚げも、一度冷凍したものを解凍して使用している。

 

カネ久越後屋商店 おからこんにゃく「津軽雪花」

https://onikumitai.net/okacon.html

(今回はこちらを使用)

 

マーマフーズ おからこんにゃく「ベジタリアンミート」

https://mama-foods.com/vegemeat

(こちらを使うときもある)

 

・今回は、おからこんにゃくを使用したが、おからこんにゃくでなくても、高野豆腐を戻したものを使ったり、ちくわぶにしたり、しいたけと、ほかのきのこだけにしたり、と、これを磯辺揚げにしたらおいしそう、と発想してつくり替えてもよい。

 

・のり弁に最もよく見られるおかずの組み合わせは、「白身魚のフライ」と「ちくわの磯辺揚げ」のようである。家庭でつくる場合に、衣と具の違う揚げものを2種類用意するのは大変なので、この「のりべん」には、「磯の香り」を表現できる、2種類の磯辺揚げを採用した。

 

・「おからこんにゃく」と「しいたけの磯辺揚げ」は、衣にくぐらせる前に、一度、青のりを振りかけ、揚げたとき、食べたときにさらに磯の香りが立つようにした。

 

・「のりべんののりごはん」のおいしさの要は、海苔のおいしさ、醤油のおいしさ、なので、そのままで食べておいしいと思う海苔を。

 

・海苔はなるべく無酸処理のものを選んで使っている。特に好きなのは、「成清海苔店」の焼き海苔。あるとき、九州に暮らす友人がつくってくれたおむすびがとてもおいしくて、そのときに海苔のおいしさ、風味の豊かさに目が開かれた。それが、成清海苔店のものだった。いつも、おむすびを食べるときに使うのも、成清海苔店の「おにぎり用 焼海苔」。

https://narikiyonori.theshop.jp/


・実のところ、醤油にこだわりの銘柄は特別なく、よく訪れる自然食品店でその時々、これにしよう、と、選んでいる。何回も購入している銘柄もあれば、そのとき気が向いてはじめて買ってみる醤油もある、という感じ。食べてみてそのとき、この醤油はこういう風味なんだ、このくらいの濃度よいな、とその都度感じるのを今はまだたのしんでいる。いずれにしても、醤油は天然醸造のものを選んでいる。

 

・「のりべんののりごはん」は、おいしい材料を使うとそれだけでもおいしいので、お漬けものを添えただけでも、立派なお弁当になる。

 

・調味料の「しろたまり」については、連載第2回の「補足とポイント」を参照。

くしま けんじ

料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。

(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)

instagram:@kenjikushima