第4水曜更新
思春期倶楽部
ほんとうのわたしを求めて
8日目 思春期から更年期へのメタモルフォーゼ

今回も、前回の「思春期と更年期のミラーリング」のお話の続きです。
思春期の子どもを通して母であるわたしたちの人生について理解を深め、同時に思春期の子どもへの理解を深めていきたいと思います。
突然ですが、中学生のころの体育のあとの教室を覚えていますか?
汗と湿度と消臭スプレーの入り混じった、なんともいえないムッとしたにおい。においというのか、空気というのか、「ホルモン」ということばが浮かびあがってくるほど、見えない気体の中に生々しさを漂わせたあの教室の様子を――。
思春期のころになると子どもたちは急に「におい」に敏感になります。頭が痛くなるほどのデオドラントやコロンを、まるで見えない鎧のように身にまとい、女子はますます花のような気配を漂わせていくのです。
惑星の観点では、「金星」が思春期に影響を与えているといわれています。「愛と美の星」「ビーナス」。金星はホルモンと関係していると見ることもできます。思春期の子どもたちは、金星のごとく、外見の美しさ、見栄えのよさに敏感になる傾向もあります。そして恋心を抱き、恋や愛に目醒めはじめる時期でもあります。
思春期は金星、更年期は火星
「ミラーリング」で映し出される更年期のおかあさんたちのテーマは、思春期とまったく同じではありません。“愛と美に目醒めた若いいのちが熟成した様子”を思い描いてみてください。欲情、衝動、感情という、本能に近いこころの波のようなものは鎮まり、外側へ向かっていた美や愛の意識が内側へ向かっていく。更年期は、感情を「消化、昇華」させていくプロセスを迎えるのです。ホルモンの変化を眺めても、この時期になるとエストロゲン分泌が減少し、外見の艶やかさが減ってくることは悲しいことでなく、むしろそうあるべき自然なありかただと受け止めていいのではないかと思います。
金星的な感情の揺らぎ、ホルモンの波は、衝動ではない本物の思考力へと深まりを見せていきます。ここまで生きてきた経験により、思考が変容(メタモルフォーゼ)を遂げはじめるのです。シュタイナーの「第七7年期」である42歳から49歳の時期を司る惑星は火星といわれ、すなわち「消化、昇華」の火の力によって、感情や経験を消化、昇華し、わたしの中にある熱い力が「わたし」という個人を超えて、さらに高い目的のために生きようとしていきます。
そんな情熱に動かされていくはじまりが、更年期を迎えるわたしたちの本来の一つの成長の姿でもあります。
ということは、思春期の子どもたちが出会うさまざまな葛藤、悩み、自己探求、不安、そして愛と美という観念、「この世の真実を求める」というまっすぐな姿は、人生の後半を迎える親であるわたしたちにメタモルフォーゼした形でもたらされるといえるかもしれません。ミラーリングという現象から、思春期の子どもと親の関係を眺めてみると、思春期にまつわる課題は、ある意味で更年期を迎えるわたしたち自身の課題であり、親にとっての成長の時期でもある。
そんなふうにも感じます。
思春期と更年期における変容
思春期の子どもたちを眺める。
めちゃくちゃめんどくさいことが多いけど、思春期の混沌と進化は、親にとっても実は人ごとではない。それはもしかすると、今のわたしたちの姿の原型を眺めているということかもしれないのです。
思春期は、世界に対して真実を問う情熱をもって「わたし」として生きていく「個」のはじまりの時期であったのに対して、更年期は「わたし」が成熟し変容することで「個」を超えたもののために生きようとする時期。
それもまた、思春期と更年期の「個」のありかたの変容です。人間の進化が、思春期と更年期という人生の季節のなかでテーマとして映し出されているとしたら……。
わたしたち大人も、かつては思春期だったことがあります。そのときのテーマは今どのように「変容」を迎えているでしょうか? 目の前の子どもと格闘しながら、気がつけば自身の人生についての理解を深め、更年期の親も日々成長しているのです。
つづく
◎本連載における「思春期」とは、シュタイナーの提唱する7年周期による人間の成長段階にもとづき、第3・第7年期にあたる、14歳から21歳の時期を想定しています。ただし、子どもたち自身が思春期をまっとうすることができなかった場合、その年齢を過ぎても、思春期のような状態が続くことがあります。

三男三女・6人の母。10代からファッションモデルとして雑誌や広告で活躍。出産・子育てをきっかけに、シュタイナー教育やマクロビオティック、ヨガなどを取り入れた「自然な暮らしと子育て」を実践し、その経験をまとめた著書を多数刊行。クシマクロビオティックアドバイザーの資格を取得後は料理指導をはじめ、オーガニックな家庭料理を提案するレシピ本も発表している。
2013年にドイツ人の数学者と再婚し、ブラジルでの生活を経てベルリンへ移住。現地ではヒルデガルト・ヘルスケアアドバイザーの資格を取得。現在はモデルとして活動を続けながら、「台所から子育て・暮らしを健やかに豊かに」をテーマとしたオンラインコミュニティ「Mitte(ミッテ)」を主宰。母の健やかさは子どもの健やかさへ、女性の健やかさは社会の健やかさへ、がモットー。子ども時代、インナーマザーフッド(内在的母性)を守りはぐくむ暮らしの提案を行う。2026年5月26に最新著書『Motherhood Childhood おかあさんって、なんだろう』(エムエム・ブックス=刊)が発売。5月から、みれい☆かるちゃ~☆すく~るで「大人のシュタイナー教育」講座を開催。
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