第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第5回 蓮根とおからの揚げだんご黒酢あん弁当

あんかけのおだんご。
小学生のころ食べていたお弁当によく登場するおかずとして、とろっとしたソースで和えられたミートボールがありました。
当時、世間で流行していた(おそらく)、レトルトパウチ食品の、ただ封を開けて詰めるだけの手軽なおかず、だったのだと思いますが、子どものころはこのミートボールが大すきで、お弁当に入っているのを見つけると、よろこんで食べていたのを覚えています。
もうひとつ。
こちらは大人になってからのこと。
毎年新春に、母と姉と(ときには叔母もいっしょだった)歌舞伎の観劇にいっていた時期がありました。
歌舞伎座の入り口で渡されるもち重りのする紙袋の中には、歌舞伎のパンフレットといっしょに、二段重ねのお弁当が入っていて。
舞台の幕間に、みんなで休憩室に移動して、容器に入った緑茶とともに、華やかな幕の内弁当をいただくのが、歌舞伎の日の特別感と相まってうれしい時間でした。
この幕の内弁当には、決まって、あんをまとった肉だんごが、確か薄いピンク色の、襞のあるおかずカップのなかにひとつだけ、詰められていて。
すきなおかず、食べものは、最後にとっておいてすきなものの味でお弁当を食べ終わりたい、という気持ちがあるので、最後に残したあんかけ肉だんごを箸で割りながら、そういえば子どものころのミートボールもひとつは残して、お弁当の最後に食べていたなあ、と思い出したのでした。
蓮根の揚げだんごは、すりおろした蓮根のおかげでむっちりとしつつ、おからのやわらかさでふわふわともしていて。
食べ応えがあるのに、同時に軽くて、甘酢の風味とよく合います。
甘酸っぱいあんかけのおだんごが食べたくなると、じぶんでつくるおかずといえば、今はこの、蓮根とおからのおだんごなのです。
蓮根とおからの揚げだんご黒酢あん

◯材料(2人分)
蓮根とおからのだんご
・蓮根 15g(みじんぎり)、85g(すりおろし)
・生姜 5g
・舞茸 20g
・おから 35g
・オートミール 10g
・長葱の白い部分 10g
・塩 ふたつまみ
・胡椒 少々
・胡麻油(香ばしい香りのもの)1g
・醤油 1 g
・葛粉 5 g(細かな粉末のもの)
・片栗粉 適量(まぶす用)
・米油 適量(揚げもの用。菜種サラダ油など、くせのない、ほかの油でも)
・プチトマト 4個
黒酢あん
・醤油 40g
・玄米黒酢 50g
・黒糖 25g
・水 15g
・昆布 切手大1枚
・長葱の青い部分 5センチ程の長さ分
・生姜 ひと切れ
・葛粉 10g
・胡麻油 適量
◯つくりかた
① 黒酢のあんの準備をする。
小さめのボウルに昆布を入れ、そこへ、醤油、黒酢、黒糖、水、を加え(A)、葱の青い部分を手でひねってちぎり(ちぎった切り込みを入れる)、生姜の薄切りとともに液体(A)に浸しておく。
② ボウルを用意する。
蓮根は、15g分は細かなみじん切り、85g分はすりおろす。蓮根をすりおろしたおろし金でそのまま、生姜もすりおろす。
舞茸、葱の白い部分はみじん切りにする。
すべてを用意しておいたボウルに、次々と加えていく。おから、オートミール、調味料(塩、胡椒、胡麻油、醤油)を加えたところで、小さなゴムベラなどで、よく混ぜ合わせる。
混ぜたところへ、葛粉を加え、さらに混ぜておく。
③ ボウルの中身を平らにならし、だいたい6等分にして、大まかに手で丸める。6個の蓮根おからだんごができあがる。
④ 小鍋や小さなフライパンなどに、底から1センチほどの深さに米油(揚げ油にする)を注ぎ、中弱火にかける。
⑤ 小皿などに片栗粉を適量入れ、丸めた蓮根おからだんごの表面に、片栗粉をまぶす。

⑥ 温まった揚げ油(160-170度)に、だんごを入れていき、全部入れたら、たまに上下を返しつつ、じっくりと火を通す。全部の表面がかりっとし、中心まで火が入ったら、バットなどに取り出す。

⑦火を止め、油の温度が少し下がったところへ、プチトマトを入れ、余熱でさっと表面に火を通し、取り出す(皮が破裂するが、そのまま皮ごと使う)

◎仕上げ
① 黒酢あんの液体(A)に、葛粉を加えてよく混ぜ溶かす。小鍋または小さなフライパンなどに移して、ゴムベラなどで底面を混ぜながら、中弱火にかけて火を通す。濁っていた葛が透明になり、とろみがつき艶が出たところで、揚げ団子を加え、やさしく混ぜながら上下を返し、全体に黒酢あんをまぶし、取り出す。
プチトマトを入れ、少量残った黒酢あんをすこしまとわせる。
② 炊きあがったごはん(この日は、にんじんの千切りと塩麹、胡麻油少々を入れた炊き込みごはん)をお弁当箱にしき、
さっと茹でて半分の長さに切ったちんげん菜をごはんの上にのせる。
その上に、揚げだんごとプチトマトをのせるように盛りつける。
この日は他に、黄パプリカ炒め(米油・胡麻油で炒め、火を止めた後に塩麹を加え混ぜた)も、詰め合わせた。

◎補足とポイント
・黒酢あんに使う黒糖は、きび砂糖でもつくれるが、黒糖を使うと、満足感のあるこくが出る。今回は、マスコバド糖というフィリピンの黒糖を使ってつくった。
沖縄や奄美大島などの黒糖は、ミネラル感や塩気も感じられ、しっかりとしたこくがある。
それに比べると、マスコバド糖は、こくがあるけれど後味はあっさりとしていて、すこしだけ軽めの風味。
どちらでもおいしくできるので、好みや手に入りやすいほうを使うとよい。
・黒酢あんでいっしょに火にかける昆布や葱、生姜は、だしや香りを出すためのものだが、食べられるので、自分の分のお弁当に、揚げだんごの下に敷いたりして入れてもよい。
・だんごの生地につなぎのために混ぜるものと、あんにとろみをつけるために入れるのは、胃腸を整える働きのある葛粉がよいが、揚げる前のだんごにまぶすのは、葛粉よりも粒子の細かい、片栗粉がよい。どちらかしかない場合は、どちらかでもよいが、使い分けるのもよい。
・蓮根とおからのだんごは、今回の黒酢あんのほかに、揚げて、
・おから、オートミールは、やわらかな食感やボリュームを出すために入れたが、ミンチ状の大豆ミートなどを使ってもよい。おからの代わりに、重しをのせてよく水切りをしたもめん豆腐を潰して使ってもよい。オートミールは水分を吸うので、生地の水気の調節をする働きがある。


料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。
(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)
instagram:@kenjikushima
