第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第10回 麻婆厚揚丼弁当

麻婆豆腐、麻婆茄子、麻婆春雨。
麻婆、とついている料理名を見ると、こういう料理なのだろうな……とだいたいの想像がつく。
赤橙色の熱い油が表面に浮かんで、濃く茶色い味噌の香り、炒まったひき肉がころころと入っていて。
たまにつくる、わが家の麻婆豆腐(厚揚)は、ほとんど辛みはなく、赤い脂も浮いていなく、ひき肉も使っていない。
これって、麻婆豆腐といえるのだろうか、とふと疑問に思い、調べてみました。
中国料理で、「麻(マー)」、というと、花椒(ホアジャオ)などを使った、ピリピリビリビリと舌が痺れるようなスパイシーな辛味のこと。
一方、「辣(ラー)」、というと、唐辛子を使ったホットな辛味を指すそうです。
そして、「麻婆豆腐」は、この、花椒の痺れ、「麻」の辛さのある料理だけれども、もともとは、その昔、陳麻婆(チンマーボー)、とあだ名で呼ばれていた、「麻婆(顔にあばた、痘痕のある、おばちゃん、の意味)」さんの豆腐料理、というところから、呼ばれるようになった名前、とのこと。
花椒は少しだけ使っているけれど、痺れる辛さはない、わが家の麻婆豆腐は、麻婆さんの豆腐料理、が源流にあると思えば、たしかに、そこから派生したものに違いありません。
ちゃんと、麻婆、と、いえそうです。
そして、麻婆豆腐をお弁当につくって持っていくこともよくあります。
お弁当のときには、豆腐でなく、厚揚げを使うのが具合がよいのです。
厚揚げは、一度揚げてあるので豆腐よりも水分が少なく、時間が経って水が出てくることもない。
豆腐よりも保存性が高いといえる。
そして、表面に皮ができていて、それが、ひき肉を使わない麻婆には、よいコク、食べ応えになります。
ゆえに、わが家のお弁当は、ほとんど辛くない「麻婆厚揚」が定番なのです。
麻婆厚揚丼弁当
〇材料(2人分)
厚揚げ 1丁
きのこ類(しいたけ・エリンギ・しめじなど) 160g
蓮根 50g(小一節)
大豆ミート(ミンチタイプ) 35g
長葱(白い部分) 30g(約1/2本分)
長葱(青い部分) 1本分
生姜 10g(一片)
米油 大さじ1
胡麻油 大さじ1/2(+仕上げ用として適量)
花椒(好みで) 小さじ1
塩 適量
海苔 1/2枚(仕上げ用として)
好みで、ラー油やコチュジャンなど
●出汁
・昆布 切手大1枚
・干ししいたけ 1/2個
・水 120g
●合わせ調味料
・米味噌(麦味噌でも) 40g
・醤油 25g
・みりん 25g
・葛粉 25g
・塩 適量

*葛粉:葛の植物の根っこ、葛根からでんぷんを取り出したもので、料理では上品なとろみをつけてくれる食材
〇つくりかた

①厚揚げは、熱湯を全体にかけ、油抜きをする。
粗熱が取れたら、2センチ角の大きさに切る。
②小さめのボウルに、昆布と干ししいたけを入れ、水を注ぎ、出汁をつくっておく。
③別の小さめのボウルに、大豆ミートを入れ、たっぷりの量の熱湯を注ぎ、大豆ミートを戻しておく。

④長葱の白い部分を1センチ角くらい、生姜はみじん切りに切っておく。
⑤しいたけとエリンギ、しめじは、それぞれ7ミリ角ほどの大きさに切る。
蓮根は4ミリ角ほどに切る。
⑥フライパンに、米油と胡麻油を合わせてひき、中火にかけ、④で刻んだ長葱と生姜を炒める。軽くひとつまみ塩をし、香りが立ったら、花椒を加えて、混ぜながら軽く炒める。さらに蓮根、きのこ類を加えて、軽くひとつまみ塩をして、さらに炒める。
⑦戻しておいた大豆ミートの湯をザルなどで切り、大豆ミートと、厚揚げもフライパンに加えて、炒める。香り付けに、長葱の青い部分を捻って切り込みを入れて(そこから香りが出やすいように)、加える。
⑧昆布しいたけ出汁をとっておいたボウルで、合わせ合わせ調味料をつくる。
米味噌、醤油、みりん、葛粉、塩ひとつまみ、を加えて、味噌と葛粉を溶くようにしながらよく混ぜる。

⑨フライパンの中の具に火が入り、炒まったら、⑧の合わせ調味料を注ぎ入れる。
ヘラなどで絶えず全体を混ぜていると、葛粉によりとろみがついてくるので、葛粉によく火が入り(とろみがついてから3分間くらいは炒める)、透明感が出て、水分が少し飛んで、程よく硬めのあんになってくるので、そうしたら、胡麻油を仕上げに適量振り(辛いものが好きならば、ラー油を加えて)火を止め、全体を軽く混ぜて、長葱の青い部分、昆布を取り除き、バットやボウルなどに移して、冷ましておく
(寒い季節以外は、冷めたら冷蔵庫に移して保管する)。
◯仕上げ
①炊き上がったごはん1.5合を、2つのお弁当箱それぞれに分けて敷き詰め、その上に、海苔を適当な大きさにちぎってのせ、上に麻婆厚揚を広げる。
②ほかのおかずを盛り合わせ(今回は、ひげ根を取り除いた豆もやし、切ったチンゲンサイをそれぞれさっと茹で、湯を切り、胡麻油と塩で和えたもの)、好みで、コチュジャンを添える。
◯補足とポイント
・花椒は、痺れるような辛味があるので、子どもが食べる場合や刺激を控えたいときなどは、少なくする、入れなくする、などするとよい。

・大豆ミートのミンチタイプ、は、LOVEGのものを使った。
LOVEGについては、連載第8回の記事を参照。今回は、ミンチタイプ。
・合わせ調味料の出汁に使う干ししいたけは、ほかのきのこの大きさに合わせて切り、具として混ぜるとよい。昆布は、そのまま入れておいて、食べても、取り除いても、好みで。
・仕上げに、とろみを付けるときには、葛粉にしっかりと火を通したいため、とろみがつきはじめてからもしっかり、3分ほど加熱する。
葛粉は火の通りが弱いと、時間が経つととろみがなくなりさらさらに戻ってしまうので、しっかり火を通すことが大切。

・お弁当に持っていくときに、コチュジャンなどを添えていくと、途中で混ぜ足して、変化をたのしみながら食べることができる。コチュジャンは、韓国の甘辛味噌だけれど、中国料理風のものにも、合うなら、気にせずに使っている。
食べるラー油のような、スパイシーなペースト状のものを添えるのもよい。
・コチュジャンは、たいていいつも家の冷蔵庫にあり、どんなメーカーのものもだいたいおいしいので、特にこだわりはない。
食のセレクトショップなどでおいしそうなものを見つけると試してみたり、普段は自然食品店で買ったりする。
今回のお弁当に使ったものは、人からいただいた、宮崎県でつくられているチルチルキッチンのもの。こちらもおいしい。
https://www.standardmarket.jp/chillchill/
あと、これはコチュジャンも入っている辛味噌だけれど、こちらもおいしく、おすすめ。
あおやの辛味噌。
https://aoya-kyoto.shop-pro.jp/?pid=163433315
近くの自然食品店で手に入るので、こちらが一番使う機会が多いと思う。
オーサワ・ジャパンのもの。
https://new.ohsawa-japan.co.jp/index.pl?iid=242&actmode=ItemDetail
・麻婆豆腐(厚揚)というと、熱々なのがおいしい料理、というイメージがあるけれど、この麻婆厚揚は、あたたかくなくても、ちゃんとおいしい、と思う。
お弁当にするときには、あんが流れないように、しっかりととろみを付けておくことも、大事。

料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。
(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)
instagram:@kenjikushima
