トップ > 別マー特集 :オーガニックコットンの秘密 > NADELLデザイナーヨナさんがオーガニックコットンにとことん、こだわるわけ
Special Issue 別マー特集
更新日 2008/08/08
01:NADELLデザイナーヨナさんがオーガニックコットンにとことん、こだわるわけ
本誌「1枚のオーガニックコットンタンクトップが売られるまで」にご登場いただいた、NADELLデザイナー・ヨナさん。NADELLの服はオーガニックコットンのみを使用し、染料も極力生地に負担をかけないものが使われています。それでいて、デザインがとってもかわいい、というのが何よりの魅力。なぜオーガニックコットンだけでの服づくりにこだわるのか。ヨナさんの熱い思いをうかがってきました。
- 〔よな〕
1968年、韓国・ソウル生まれ。NADELLのデザイナー&ディレクター。2008年2月、NADELLをスタート。現在オーガニックコットンにプリントした生地で浴衣を製作中。 - ☆2008 NADELL information
- ■9/10〜23 @東京・新宿高島屋 ファムメゾン8F ニュークリエーターズ 「Fashion×エコロジー」に出展します
-
■9/3〜5 @東京・ラフォーレ原宿
『装苑』主催「09ss white」展 出展します
注1
オーガニックコットン製品製作の先駆的存在、「アバンティ」代表、日本オーガニックコットン協会(JOCA)副理事長。本誌オーガニックコットン特集にもご登場いただいています
- ――ヨナさんは、今、オーガニックコットンだけで服のデザインを行っていますが、何かきっかけがあったのですか?
- わたしの姉がひどいアトピー性皮膚炎で悩んでいたことがきっかけです。姉は、摩擦で静電気がおきてしまう化繊の服はもちろん、一般の綿もシルクも着られなかったんです。
- ところがある日、アバンティの社長・渡邊智恵子さん(注1)のご自宅でオーガニックコットンの存在を知ったんです。さっそく生地を買ってきて姉に部屋着や枕カバーなどを縫ってあげました。そうしたら「ぐっすり眠れたよ」といわれて。
- その後、姉に、オーガニックコットンでふだん着る服をつくってあげたんです。でも、ある日、向こうから歩いてくる姉を見たら、いかにも病人、というふうに見えてしまって……。
- 当時、オーガニックコットンというと、染めているものはほとんどなかった。つまり、姉は、全身生成りの色の服を着ていたというわけです。姉にもおしゃれを楽しんでほしいと思い、オーガニックコットンでも色を楽しめるものをつくってあげたいと思ったんです。
- ――もともとヨナさんはデザイナーだったんですよね。
- わたしが洋服をつくりはじめたのは20年前で、日本では13年前からデザイナーの仕事をしていました。オーガニックコットンを知ったのは10年前です。
- ――オーガニックコットンを知る前は、一般の綿を使っていたのですよね。
- はい。一般の綿以外にも、化繊など、いろいろな生地を使っていました。シルエットもきまりやすいし、服をつくるときに扱いやすいんです。ただ、当時はオーガニックコットンというものを知らなかったから、ほかの素材を使っていただけ。今はまったくそういう考えはありません。
- ――とはいえ、オーガニックコットンだけで、ブランドを立ち上げるのは、とても大変だと思います。
- 実は、はじめは、オーガニックコットンのブランドをつくろうとは思っていませんでした。シルクが好きだったので、シルクだけを使うブランドを立ち上げたんです。
- でも生産方法などに疑問を感じる点が出てきてしまって、悩んでいるうちに、もう服づくりはやめてしまおうというところまで追い込まれてしまったんです。
- ただ、どうせやめるんだったら、最後に何かよいことをしてからやめたいと思って。世界の平和のためといった、大きなことではなく、わたしのことをまわりで支えてくれている人たちのために何かしたいと。
- そこで思いついたのが、人にも環境にもやさしい、オーガニックコットンで服をつくるということでした。
- 当時は、今よりももっとオーガニックコットンのマーケットが狭かったのですが、とにかくスタートしてみたんです。
- ――スタートしてみて、いかがでしたか?
- とても大変でした。たくさんの試作をしては失敗をして……経済的にも大変な支出をしました。でも、そういうことも吹き飛ばしてくれるようなよいこともあるんです。
- 実は、ブランドをはじめてしばらくしたら、わたし自身が変化していたんです。
- 以前わたしは、近所のコンビニエンスストアに行くにも、しっかりマニキュアをぬって、全身完璧におしゃれをしないと出かけられなかった。
- でも、オーガニックコットンを扱うようになってから、外見を必要以上に着飾る必要がなくなったのです。オーガニックコットンで服をつくるようになってから、マニキュアは一度もしていません。また、不思議なことに、以前よりも仕事は大変なはずなのに、疲れにくいし、気持ちが確実に、落ち着いていると思います。以前は、イライラしていましたが、今は、そういうことも減ってきました。
- ――それは、おもしろい変化ですね。不思議というか……。
- 自分でもよく理由はわからないのですが、オーガニックコットンを扱うようになって、仕事で関わっている、すべての人々のことを考えるようになったことと、関係があるかもしれません。
- ――服をつくるヨナさんから見た、オーガニックコットンのよさとは?
- 正直にいうと、服をつくる素材としてはデリケートでとても扱いにくいんです。今はまだ生地の種類も少ないですし。オーガニックという背景があるからこそ、使う意味のある素材だと思います。
- ――大変なことが多いのに、ヨナさんがオーガニックコットンにこだわるわけは?
- まずは、何といっても、生地を触ると感動するんです。「やわらかいな、気持ちいいな」って。生地のすばらしさというのが、オーガニックコットンに惹かれる一番の理由だと思います。
- また、つくり続けているのは、(人や地球を守るということも含めて)さまざまなことを考えて、服をつくる、そういう環境にパワーを感じるから。NADELLの取り組みを、励ましてくださる方もたくさんいて、いつも感動することばかりなんです。オーガニックの神様がいるのかな?と思うくらい(笑)。苦労が多くても、なぜかオーガニックの世界にいると、やっていきたいという前向きな気持ちにさせてくれるんです。
- ――では、ヨナさんの夢を教えてください。
- NADELLに賛同してくれる人が少しずつ増えていって、オーガニックコットンが特別な素材ではなく、あたり前に使われるようになっていく。それがわたしの目標です。
- 実は将来、わたしなりのフェアトレードというのを実現したいと思っているんです。自分の利益だけにとらわれず、自分が納得した方法で農地や人を支援をしていきたい。
- いずれは、インドなどの生産地に直接行って、現地の畑がもっとよくなるように、また人々の生活環境もよくなるように、現地の方と直接お会いして、お話ししながらやっていきたいですね。
- オーガニックコットンを通して出会った人たちは、思いやりがあって、魅力的な人が多くて楽しいです。そういう人たちと、つながってる感覚もとても強くて。これは、オーガニックコットンを扱う前にはありませんでした。
- そういった人々を大切にして、また、使ったことのない方々にも、NADELLのデザインを通して、オーガニックコットンの魅力を伝えていけたら、と思っています。
Photograph & Interview & Text by murmur magazine