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小屋と畑

やまだともみのお蚕さん日記 中編

0516もらったばかり

 

もらったばかりのお蚕さんは、全長2cmほどでした。もりもり、ひたすら桑の葉を食べる姿が本当にかわいくて(!)、見入ってしまい、気がついたら1時間経っていたなんてこともありました。

 

寝る直前まで、起きた直後に、お蚕さんの様子を見に行って話しかけていました。「今までの自分を超える突破口が欲しい!」というわたしのすがるような思いを、お蚕さんは最初から全力で受け止めてくれたように思います。わたしは、お蚕さんに“育む”ということを通じて、かけがえのない気持ちを教えてもらっているように感じました。

 

05215日後

 

どんどん食べて、5日後にはもう、2倍ぐらいに成長したお蚕さん。

この5日の間に、1度、脱皮をしています。お蚕さんは、脱皮したら、からだが1まわり大きくなり、1つ年をとります(“◎齢”と数えます)。数日食べ続け→食べない、動かないの「眠」という状態→脱皮→食べ続け……というサイクルを生涯に5回行います。上の写真は、3回脱皮をしたあとの“4齢”のお蚕さんです。

 

0526眠

 

数日後、「4眠」のお蚕さん。

一見つらそうですが、みんなこんなふうに「眠」を過ごします。

 

0527脱皮

 

1日お休みして、次の日に脱皮!

少し見にくいですが、脱皮中のお蚕さんを激写しました! うにゅうにゅ~ともがくように皮を脱いで、すぽんと脱皮。その後は、何事もなかったかのように、ひたすら桑の葉を食べる姿もおもしろくて、最高です。何か、迷いがなくて、しれっとしているんです。

 

と、こんな調子で、お蚕さんとの生活が日常となり、日に日に大きくなっていくお蚕さんへの愛情も日に日に溢れていきました。

 

……でも、このお蚕さんたちの命をいただいて、わたしたちは絹のものを身につけられるんだよなあ……と、あるとき、何ともいえない気持ちになりました。

 

冷えとり健康法を実践しているわたしたちは、毎日絹の靴下やインナーを身につけています。(お蚕さんがつくってくれる“絹”という素材は、人間の皮膚に似た成分を持っていて、排毒効果が高いのが特徴です。頭寒足熱を実践し、血と気をめぐらせ、毒出しをし、こころもからだも健康になろうという冷えとり健康法では、肌に触れる部分は絹が望ましいとされています)。

 

ある日、絹製品を身につけることについてみんなで話し合いをしました。

 

実際に、わたしも、スタッフの中でも、「このお蚕さんの命をいただいていると思うと、感謝を通り越して、申し訳ない気もしてくる…」という正直な思いも出てきました。

 

でも、「ただただ、自分の役割を全うしている姿を見せてくれていて、わたしたちはその恩恵をいただいているのだと思う」というみれいさんの意見が胸に響きました。

 

そもそも、蚕は、人間がお世話をしないと生きられない動物で、外に放った瞬間、それがいくら桑の木でも生きられないそうです。完全に人間が、人間のために品種改良を重ねて育てた動物である……。

 

こんなにも、わたしを夢中にさせ、癒してくれるお蚕さん。迷いがなくて、しれっとしているように見える理由、それは、お蚕さんからしてみたら、自分の使命を受け容れて、ただただ全うしているということ。その姿が、こんなにもうつくしいなんて!

 

わたしも軽々しく「絹を身につけるのは、何か申しわけない気がする」といえなくなりました。

 

そして、お蚕さんとのふれあいの日々で、蚕のようなうつくしい生きかたに、思いを馳せるようになりました。