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マーマーなリレーエッセイ

#13 忍田彩(モデル、音楽アーティスト)

 

新生活にピッタリくる3つの音楽

 

『マーマーマガジン』で幾たびもモデルを務め、また、

みれいさんと平松モモコさんのバンド「mma」のメンバーでもある

忍田彩さんが、ついに本コーナーに登場!

 

彩さんの話の中にポッと現れる音楽を、

はじめて聴いてみたり、聴き直したりすることがよくあります

(ニナ・ハーゲン、ジョニー・サンダース、

シーナ&ロケッツ、チョイン・ドロルマ & ステーヴ・ティベッツ……)。

なぜって、彩さんの音楽愛あふれる語りを聞けば、

手が伸ばさずにいられないのです!

 

「今のメジャーなもの以外の音楽を聴いてみたい。

でも何から聴いたらいいのか、よくわからない……」

そんなマーマーガール&ボーイのために、

彩さんが、「春の新生活」というテーマのもと、

3枚のアルバムを、このデジタル全盛期に

あえてのCDやカセットのジャケットとともに(!)

レコメンドしてくれました。

(編集部・川口ミリ)

 

 

 

こんにちは! 忍田彩です。

 

 

 

4月の新生活スタートからもうすぐひと月になりますね!

あたらしい職場、クラス、先生、

同僚、取引先、などなどに出合い

雲をつかむよな毎日を送っている人も、

相変わらずすぎて蒸発してしまいそうな人も

たのしめそうな!3枚のアルバムを

忍田の今の気持ちを添えて、

謹んで選ばせていただきました!!

 

 

 

1枚目は、

スマッピーズ(SMAPPIES)の

『SMAPPIES Rhythmsticks』。

 

名称未設定

 

ざっくりいえば、

日本人ならほとんどが知っている、

かの男性アイドルグループSMAPの楽曲から

ボーカルを抜いたインストアルバムなのですが、

 

「えー、アイドル~? ジャニーズ~?」と思った方、

ちょっと待ってください!

 

SMAPは、1994年にリリースしたアルバム『SMAP 006~SEXY SIX~』以降、

世界的に著名なジャズ・フュージョンのミュージシャンを

そうそうたるレコーディングメンバーとして多数迎えるようになります。

 

ざっと挙げるだけでも、

・ギタリストのデイヴィッド・T・ウォーカー

(ジャクソン・ファイヴ、マーヴィン・ゲイ、キャロル・キングらのセッションに参加)、

・ベーシストのチャック・レイニー

(クインシー・ジョーンズ、アレサ・フランクリン、シュープリームス〈同上〉)

・ベーシストのウィル・リー

(フランク・シナトラ、カーリー・サイモン、山下達郎、矢野顕子〈同上〉)

・ドラマーのオマー・ハキム

(スティーヴィー・ワンダー、デイヴィッド・ボウイ〈同上〉)

などなど!

 

彼らは自らを「スマッピーズ」と称し、

1996年に、SMAPメンバーは不在で

「SMAPPIES Rhythm sticks」をリリース。

収録曲は、SMAPのオリジナル曲のオケそのままのもの、

それにダビングしたもの、再録したもの、さまざまのようなのですが。

 

 

以下は、2010年に惜しまれながら休刊となったジャズ系音楽誌

『ADRIB』の元編集長・松下佳男氏によるライナーノーツからの抜粋。

 

「そして彼らは(参加ミュージシャンたち)、

そのレコーディングを通し、作品ごとに、仕事というより、

それ以上の何かを見つけ、音楽そのものを愉しむようになり、

いつの間にか、いくつかのユニットやグループが出来るほどの状況になったという」

 

そんな中リリースされたのがこのアルバムなのだそうですが、

この文章を読むと、どうやら、

完全に企画されて作られたものというよりかは、

自然発生的にできてしまったアルバムのような感じが受け取れます。

 

だからでしょうか、聴いていると、

「アイドルが、音楽的とされてるジャンルやミュージシャンとコラボしている」

という一文ではいいきれず、むしろその行間や、その場の躍動感、

い合わせた人たちのハッとするような感動さえ感じ取ることができます。

心動かされると同時に、とっても瑞々しい気持ちになれます。

 

SMAPのヒット曲の数々を、

とってもナチュラル&ニュートラルな気持ちで聴けること間違いなし!

 

 

今年のはじめに、日本中で話題に上がったSMAP。

だからというわけではないのですが、

たまたま聴いたこのアルバム、やっぱりすばらしくて、

ここら辺でもう一度聴きなおしてみるのはどうかしらんと思いました!

 

SMAP好きならSMAP好きなほど、

音楽好きなら音楽好きなほど、

音楽はそこまでという人ももちろん、

たのしめる1枚かと思います!!!

 

 

 

2枚目は、

キング(KING)の

『WE ARE KING』。

 

名称未設定

 

キングは、パリス&アンバー・ストローサーの双子姉妹、

アニータ・バイアスの3人からなるグループ。

 

2011年に初のEPをリリースし、その2か月後には、

最近亡くなられた米ポップス界のスター、

プリンスの前座をつとめるという注目度! R.I.P プリンス

(しかも「キング」名義の初めてのライブが「プリンス」の前座、、、)

 

当然ながら、各メディアで取り上げられ

期待の新人アーティストとなったわけだけど、

今回のアルバムがファーストアルバムであり、

デビューの5年後にリリースというマイペースさ、

脱帽です。

 

 

そんな彼女たちのドリームソウル。

ソウルやR&Bといえばそうなんだけど、

でもどこかジャンルレスのあたらしい未来の音楽。

人種の垣根がまったくない新世界のR&B。

 

世界的に最も影響力のあるDJ

ジャイルス・ピーターソンのラジオ番組に出演した、

歌姫エリカ・バドゥは、彼女たちのことを

「まるで私たちが2029年にいるかのようなサウンドで、

でも彼女たちはそれよりさらに先の時代にいるの」

と語っていたとか。

ちなみにエリカ・バドゥも、ヒップホップやR&Bに

ジャズを融合させたスタイル、ネオソウルで知られるアーティストです。

 

 

ビヨンセやリアーナのような

確固たる存在感のあるディーバも素敵だけど、

 

キングは、雲間からさす陽の光とか

冬の刺すよな空気を和らげる春風を送ってくれる、

女神のようなアーティストではないでしょうか。

 

 

さらに注目すべきは、彼女たちは

メジャーのレコード会社が手掛ける大型新人とかではなく(今時そんな人いないか)、

自分たちでプロデュースし、自分たちのレーベルからリリースする

という完ぺきなインディーズのアティチュードを持ったアーティストなのです。

 

音色のみならずスタンスも今っぽいキング。

マーマーガールズ&ボーイズ、マストリッスンです!

 

 

 

最後の1枚は、とてもお世話になっている

中目黒waltzにて入手したカセットアルバム。

 

ホリー・クック(HOLLIE COOK)の

『TWICE』。

 

名称未設定

 

2014年リリース、

チャーミング女子のラヴァーズロックレゲエはいかがでしょうか。

 

(ラヴァーズロックレゲエとは

ざっくりいえばラブソングのレゲエのこと。

レゲエ発祥の地であるジャマイカで、70年代に

メッセージ性の強いプロテストソングが流行すると同時に

廃れていったラヴソングが、

なぜかイギリスのカリブ系移民の間で発展を遂げたのが起源みたいです)

 

 

ホリー・クックは

70年代後半のロンドン・パンクロックを代表するバンド、

セックスピストルズのドラマー、ポール・クックの娘。

 

そして、やはり同時期に結成された女性パンクバンド、

ザ・スリッツの、再結成後のセカンドボーカル/キーボード奏者として

注目を集めたシンガーでもあります。

(音楽畑で採れた、みずみずしいフルーツのよう)

 

 

このカセットは

100個限定エディション付き(わたしのは42/100)で、

カセットを愛してやまないわたしとしては、即買いでした

(もちろん、CDも出ています)。

 

みなさんは最近、カセットで音楽を聴くことはありましたでしょうか。

「聴いてないなぁ」という方はぜひ家掘りしてみてください!

(というか、実家掘り?〈笑〉)

 

ひとたび三角の再生ボタンをボツッと押せば、顔がほころぶことでしょう。

あぁ、音楽ってこうだったよね、と

またあらたな音楽のスペースを自分の中に

作ってあげることができるかもしれません。

 

 

カセットで聴くホリー・クックの音色は、ラヴァーズといっても、

甘い甘い往年のラヴァーズではなく(それも大好きだけど!)、

愛の甘さと厳しさを内包した現在進行形のラヴァーズロックレゲエでした。

 

 

そういえば、わたし、

ザ・スリッツの日本公演を

メインボーカルであるアリ・アップが他界する直前に見ていて、

そのときにホリー・クックご本人も見ていたのです。

 

ピストルズやスリッツが煌々と燃やしてきた炎。

それが消えないように周りを囲ってしまうのではなく、

どんどんどんどん燃やし続けること。

コケティッシュな物腰と同時に

そんな強いアティチュードを持つ

彼女のようなアーティストに、

わたしはとても惹かれます。

 

 

 

草木が生い茂る豊潤な季節、いろいろ、いろいろ聴いてみましょうよ!!

どこかでお会いできたら、ぜひ感想を聞かせてくださいね♡

 

ではまた!

 

AYA OSHIDA



忍田彩

おしだ あや|茨城県出身。大学在学中に留学していたロンドンと香港にてモデルとしてのキャリアをスタート。また20代ではじめてギターを手にし、ふたり組ガールズバンド、「ストーンド・グリーン・アップルズ」を結成。2枚のミニアルバムをリリースするも解散。その後出産を経て、現在、作家・詩人・『マーマーマガジン』編集長の服部みれいとイラストレーターの平松モモコとともに結成したガールズバンドmmaのギター&ヴォーカルとして活動中。2015年夏には、ソロ・ファーストミニアルバムカセットテープ『World is Your Oyster』をリリース。

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