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手帖&カレンダーインタビュー4

 

いよいよ12月、年末の足音が聞こえてきましたね。

わたしのきんいろ手帖』は12月はじまり。

2020年の気分を先取りしたいという方は、

ぜひ使いはじめてみてくださいね。

もう少し2019年をじっくり味わいたい方は、

ご自身にとってよいタイミングで切り替えを。

 

あらためまして、

わたしのきんいろ手帖』『365日 日めくりッ ラブ2020カレンダー』ともに

販売店は、こちらのリンク先をご参照ください。

 

もしお近くに販売店がない場合は、

マーマーなブックス アンド ソックスをご利用くださいね。

 

『わたしのきんいろ手帖』のインタビューは今回でラスト。

手帖づくりと密接にかかわる「価格」について

エムエム・ブックス代表・服部福太郎よりご説明させていただきます。

 

***

 

◯値段を2020円にした理由

 

野田 手帖、日めくりカレンダーともに、2020年版はちょっと値上げをさせていただき、定価2020円という値段になったんですが……。

 

服部(みれい) 2020年版で2020円、ちょっとふざけた価格にも、見えますよね。ここはちょっと社長に登場してもらいます。

 

福太郎 はい、2020円という価格は、2020年とかけているだけでなく、消費税を込にすると2222円になるんです……!

 

野田 ますますふざけている感じに(笑)

 

福太郎 まさに「ゆるふわ」な料金設定のように見えてしまうかもしれませんね(笑)。なぜ値上げしたかちゃんとご説明しますと、今年、用紙などの原材料費が一斉に値上がりして、手帖自体を値上げしないと利益が出ないという状況があったんです。それで、どうせ値上げするなら、ゆるふわな定価にして、お支払いいただくことでハッピーになる、2020年をハッピーに過ごせる、そんなふうに感じていただけたらと考えたんです。

 

野田 ゆるふわ元年(インタビュー1参照)だからこその、ゆるふわな定価、ですね。

 

福太郎 もちろんこの値段に決めるまでは、野田さんと、いきなり100円以上値上げするのはどうだろう、といった検討もしたんですが……。

 

服部 野田さんからの、値上げするなという圧が強いって、福太郎さんがいってました(笑)。

 

野田 去年も値上げをしたので、今年さらに100円以上アップしていいものか、躊躇してしまったんですよね。

 

福太郎 ただ、正直に言うと100円程度の値上げでは、収支はあまり大きく改善しなくて。でも「2020円」にすれば、原材料費の値上げをカバーできるだけでなく、できることもぐっと広がるんです。今回、手帖の表紙は星のマークをゆる星にするだけでなく、「2020」という年号のデザインも少し変えているんですが、そういうことも、きちんと予算を確保できたからこそできたという経緯もあったりして……。

 

野田 そうですね……用紙でもデザインでも、よりよいものに変えようとすると、校正をとって検証するという過程が発生する。そして、そこにもお金はかかるんですよね。「2020」のデザインの話でいうと、例年は表紙に年号の型を押して金箔を貼っていたんですが、今回クリアリングシルバーを出すことになって、「金箔はちょっと合わないから銀箔のほうがいいかも」とか「もしかしたら金箔も銀箔もなくてもいいのかも」といったアイデアが出まして。

 

服部 そこで各種色校正をとって見比べたうえで、これがべスト!と判断したものを最終決定としたわけです。

 

福太郎 今回、きちんと色校正をとる予算を確保できたからこそ、より自分たちが納得するものができたと思っています。そういうふうに値上げした分を、よりワクワクするような手帖づくりに還元していけたら、というのが、今回の決断の背景にある思いです。

 

◯ハッピーなお買い物の話

 

野田 わたしも最初は値上げについて抵抗があったんですが、途中から考えが変わってきたんです。

 

福太郎 え? そうなんですか。

 

野田 もちろん、消費者感覚として、安いほうがいい、という気持ちは今もあります。ただ、原材料費が一気に上がったという課題があって、それを解決しようとして節約すると、できないことばかりになって……。

 

服部 よりよい手帖にしようというアイデアがあっても、それを検証したり実現したりできないと、何も変えられないことになってしまうんですよね。こう、守りに入った編集になってしまうというか。

 

野田 それで、ほかの出版社の人に意見を聞いてみたところ、値上げするというのもひとつの考え方だと思うといわれました。やっぱり現状の市場や原価構造を考えると、本の価格って安すぎることも多いんですよね。もちろん価格を下げてたくさんの人が手に取りやすくするというのもひとつの戦略ではあるんですが、手帖やカレンダーのように毎年愛用してくださるお客さんがいるものなら、その方々に満足してもらうようなものづくりができる定価設定にするのも、ありなのかな、と。

 

福太郎 本当にそうなんですよね。僕は出版社勤務の経験がないままエムエム・ブックスに入社したんですが、『マーマーマガジン』が、全部売り切ったとしてもほとんど黒字にならないということに驚いたんですね。もともとそれで稼ごうとしていない、ということではあるのですが、その姿勢がエムエム・ブックスの出版物全体のスタンダードになってしまっていたんです。

 

服部 自然に手帖や日めくりカレンダーもそうなってしまって……。

 

福太郎 もちろん「読者の方に喜んでいただく」という姿勢自体は変わらないんですが、それが値段の安い高いではなく、別の切り口で表現できないかというのを考えていて。今回、この手帖を買ってレジに持っていったとき、「2222円です」と言われたら、ちょっとおもしろいかな、と思ったんです。レシートを見て、777円だったりするとうれしくなったりするじゃないですか。

 

野田 ああ、たしかに! ちょっとハッピーな気分になりますよね。

 

福太郎 そういう状況を意図的につくれて、しかも2020年とも関連を持たせられるのが2020円だったんです。あと、税込価格の「2222円」には、もうひとつ意味があって。今後、女性性の時代が来ると言われていますが、「2222円」を構成する「2」という数字は、まさに女性性を表す数字で。あたらしい時代の精神を、価格の面でも表明したかったんです。

 

服部 そのアイデアを思いついたときは、「やったー」となりましたよね。

 

福太郎 まあ、もし来年が2800年だったとしたら、高すぎるので2800円にはしないと思うんですが(笑)。2020円というのはちょうどギリギリその「妙」をたのしめるいい金額だなと。そういうふうに定価を決めたというのは、僕にとっては「定価はこう決めなくてはいけない」という思い込みが外れた瞬間でしたね。

野田 本という「もの」づくりをしている身としては、服でもなんでも、安くつくるってすごいことだと思うんですね。コストを下げる努力を相当されているんだろうな、と。ただ、その結果、どこかの工場で誰かが倒れているかもしれない、という可能性も考えてしまうんです。この1冊の手帖を世に出すまでには、著者の服部さんや編集のわたしだけでなく、紙などの材料をつくる人、印刷する人、製本する人……といった具合にいろいろな方が関わっています。今回の値上げは大本の材料の値上げの話が発端だったので、なおさら安いことがよいことなのか、考えてしまう部分があって。さっき話していたようなハッピーになるための「2222円」には、現場の方のハッピーをつくるという意味合いもあるのではないか、と思いました。

 

服部 まさにそうですよね。誰かが犠牲になって正当な賃金を得られないとか、過重労働をするような現場から生まれたものは、やっぱりどこか苦しい雰囲気のするものになってしまうと思います。

 

野田 今回の値上げについて、なんでだろう? と思うお客さまもいらっしゃるかもしれませんが、買う側も、つくる側も、みんなが幸せになるための「ゆるふわ」な値段設定と思っていただけたら、とてもうれしいです。

 

福太郎 僕は周囲から「業者さんから見積りが出たら、社長として値切り交渉したほうがいいですよ」というようなアドバイスをされることがよくあるんです。

 

野田 やり手社長、みたいな。

 

福太郎 普段はあまりしないんですが、最近、この手帖とは別件で、ある本の印刷費で、久しぶりにある印刷会社さんに値下げのお願いをしたんです。その結果「これが本当にギリギリの金額です」といって下げていただけたんですが、数万円ぐらいの差額だったんですね。それを見て、最初の見積りの時点で、すでに相当がんばっていただいているんだな、と感じたんです。

 

野田 はい……みなさんギリギリのところでがんばっていらっしゃるというのは、わたしも感じます。

 

福太郎 そのときに思ったことなんですが、先方が上乗せして、こちらもそれを見越して値切る、というような関係性ではなく、一生懸命仕事をしてもらって、それに見合った報酬をお支払いする、というような世界をつくりたいな、と。僕は編集のスタッフではないですけど、経理や経営面で、ものづくりをする人がストレスなく仕事できるようにサポートしたいと思っています。

 

野田 みんながギリギリの状態でストレスを抱えて働くのではなく、ゆとりをもって働けるくらいの「ゆるさ」をもつ。そのために原価構造を見直すということなんですね。なんだか値段の話が、いつの間にか2020年の話とリンクしている気が……。

 

服部 このお話も2020年からのありかたを象徴していますよね。手帖や日めくりカレンダーは、正直ほぼ儲けのない状態でがんばってきたんですが、自分たちも無理せずに続けるために、今回この値段にさせていただいて。そのぶん、外側にはあまり出ないけれど、ひとつひとつの工程で丁寧に手間をかけて、デザインや内容をよくする、ということができました。

 

野田 試行錯誤の甲斐あって、手帖の表紙、ちょっと浮遊感のある素敵な仕上がりになりましたよね。

 

服部 付録編も1冊の本にできるくらい充実しているし、平松モモコさんのイラストを起用したおまもりシールも、とってもいい出来で。自信を持ってお届けできるものになったと思っています!

 

***

 

 

ここまで4回にわたってお送りしてきた

『わたしのきんいろ手帖2020』インタビュー、

いかがでしたでしょうか?

 

最後は制作の裏の裏的なお話になりましたが、

この手帖を買われた方が

2222円をお支払いしてくださったおかげで、

制作環境が整い、より進化した手帖やカレンダーが

つくれるようになったことを

お礼とともにお伝えできればさいわいです。

本当にありがとうございます。

 

そして、せっかく買ってくださったなら、

この手帖をたのしみながら使いまくっていただきたい!と

願っております。

 

最初は大それた目標などなくてもOKだと思います。

こんなことをやってみたい。

これを食べたらおいしかった。

こういうことは好きじゃない。

自分の本心、本来の「わたし」を手帖に書いていくうちに、

毎日がしっくりと心地よいものになっていく。

そうしたことの積み重ねから

驚くような奇跡も起こるのかもしれません。

 

わたしのきんいろ手帖2020』とともに、

2020年が光り輝く年になりますように!

 

次回からは

365日 日めくりッ ラブ2020カレンダー

のインタビューをお届けします。

 

(野田りえ)