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くしま けんじ

第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第7回 新生姜のおいなりさん弁当

おいなりさん、いなり寿司。

どちらの名称でも呼んでいる気がしますが、おいなりさん、というほうが多いかもしれません。

食べものに「お」と「さん」を付け、親しみをこめて呼ぶ。

その風習が、なんとも日本を表しているようで、よいなあ、と感じます。

 

味を煮含めた油揚げの中に、酢飯を詰めて、おかずと主食が一体になっていること。

手でもって気軽に食べられる形状をしていること。もち運びに便利なこと。

お酢がきいているごはんと、甘じょっぱい味が染み込んだ油揚げとで保存性にもすぐれていること。

おむすびにも通じること(もち運びやおかずとごはんの点で)ですが、とてもよく考えられた食べものだなぁ、と食べるたびにしみじみ感じ入ります。

しかも、油揚げの中を開いて袋にして、そこにごはんを詰めるとは!

 

稲荷神社に祀られているお使いの狐の好物が油揚げだから、ということから、おいなりさん、いなり寿司、と呼ばれるようになったそうですが、実物の狐が油揚げを好むかどうかは、いざ知らず、考えてみたら実際に狐を見たこともないかもしれません。

でも、お弁当箱の中に、こんがりとしたきつね色が並ぶ様子を見ると、狐が丸まって並んでいるようで、かわいらしいなと思うのです。

 


 

新生姜の甘酢漬け

〇材料(つくりやすい分量)

 

●新生姜 200g

●りんご酢 85g

●洗双糖 45g(大さじ4)

●みりん 13g(大さじ1)

●自然塩 小さじ2+ふたつまみ

 

つくりかた

 

①新生姜はさっと洗い、なるべく薄く、繊維を断つ方向にスライスする。

 

②小鍋にたっぷりと湯を沸かし、沸いたら、新生姜をほぐしながら入れ、1分間ほど茹でる。

ざるにとって湯を切り、触れるくらいの温度になったら、新生姜をざるの表面になるべく広げるようにし、塩をふたつまみ、全体に振っておく。

 

③甘酢をつくる。

ボウルやカップなどに、新生姜以外のすべての材料を入れ、小さな泡立て器などで、砂糖と塩を溶かすように混ぜる。

 

④清潔な瓶や容器を用意し、冷めた新生姜を手に取り、両手で水分をぎゅっと絞り、容器の中に入れていく。

 

⑤甘酢を新生姜の上から注ぐ。冷蔵庫に入れ、一晩以上寝かせる。

 


 

いなり寿司

 

〇材料

 

●油揚げ煮

・油揚げ 5枚

・水 250g

・醤油 30g

・きび砂糖 20g

・みりん 25g

・昆布 切手大1枚

 

●いなり寿司のごはん

・米 1.5合

・水 米1.5合分

・昆布 切手大1枚

・白バルサミコ酢 大さじ1.5

・紅生姜(今回は市販品。赤梅酢だけで漬けたもの) 20g

・新生姜の甘酢漬け(前述のもの) 20g

・炒り白胡麻 大さじ1

 

◯つくりかた

 

①油揚げの油抜きをする。

大きめの鍋に湯をたっぷりと沸かし、沸いたところで、油揚げを入れる。

中火で湯をぼこぼこと沸かしながら、油揚げが水面に浮いてくるのを、菜箸でやさしく押し沈めるようにしながら、5分ほど茹でる。

鍋の蓋を鍋にずらしてかぶせるようにし、蓋の隙間から湯を捨てる。

すぐに流水(水道から温水が出るようなら温水で)に当て、鍋を揺すりながらすすぎ洗いをするようにし、しっかりと油を抜く。

油揚げをざるにあげておく。

 

②油揚げを両手の間に挟み、やさしく押すようにし、水気を切る。

 

③油揚げをまな板の上に置き、半分に切る。

半分に切った油揚げ1枚を置き、油揚げが袋状に開きやすいように、油揚げの上を麺棒を両手で押すようにして転がす(力を少し入れて、かつ、破れないようにほどほどに)。

上下左右それぞれ2往復ずつくらい転がして、切り口の方から、破れないように気をつけながら袋に開いてみる。もし開かないようなら、再度麺棒を転がして、開く。これを10枚すべて、やる。

 

④油抜きで使った鍋にそのまま、昆布、水、醤油、きび砂糖、みりんを入れる。

きび砂糖が溶けるように混ぜ、鍋の中に油揚げを並べる。なるべく均一に液体が行きわたるように。

落とし蓋やオーブンペーパーなどを表面に乗せて、中火にかける。

 

⑤沸騰してきたら、中弱火に落として、煮ていく。たまに様子を見て、煮汁に浸ってない部分があれば、位置を入れ替えたり、裏返したりして、全部が均一に煮えるようにする。この際も、ヘラなどを使い、油揚げが破れないように慎重に行う。

 

⑥ほぼ煮汁がなくなったら(油揚げをもち上げたときに、鍋肌に少しだけ汁があるくらいで)火を止める。慎重に、バットなどに移して並べておく。油揚げは重なっていてもよい。

 

⑦ごはんを炊く。1.5合のお米を洗い、分量の水を注ぎ、昆布を乗せて、炊く。

 

⑧新生姜の甘酢漬けと、紅生姜の漬け汁をざっと切り、細かく刻む。

 

⑨ごはんが炊き上がったら、ボウルや飯台に移し、熱いうちに、塩をし、白バルサミコ酢を回しかけ、切るようにしながらしゃもじで混ぜる。

新生姜の甘酢漬け、紅生姜、炒り白胡麻も加えて、さらに、切るようによく混ぜ合わせる。ごはんが早く冷めるように、かつ、粘り気が出ないように。

 

⑩ごはんが冷めたら(常温かほんのり温かいくらい。温かいまま入れると、冷めたときに硬くなるのできちんと冷ます)、小皿に手水を用意し(分量外。手水に新生姜の甘酢を少し加えると香りがよい)、手のひらを湿らせてから、ごはんを軽く握る。

一貫のお寿司を握る要領で、左手で俵形(たわらがた)に軽く握り、握れたら右手で油揚げを袋の口を開けながら持ち、袋の底に収まるようにごはんを詰めていく。ごはんを入れたら、上下を返して、袋の口を横に折るようにする。10個とも同様に詰める(今回、ごはんは余る分量にあえて設定しています)。


 

◯仕上げ

 

お弁当箱一つに対して、いなり寿司5個と、新生姜の甘酢漬けを詰める。

今回は、お弁当箱に、庭に生えている生姜の葉を敷き、その上に詰め、生姜の葉を折り返して蓋をした。

そのほかおかずは、次のとおり。

・黄色ズッキーニと胡瓜の塩麹和え(ズッキーニはさっと茹でて、胡瓜は皮を剥いて、長葱のみじん切り、塩麹、胡麻油ほんの少しで和えたもの)

・ピーマン焼き(薄く米油をひいたフライパンで、ピーマンを丸ごと、塩を振りながら、途中で返しながらじりじりと焼いたもの。焼き上がりにほんの少し醤油を垂らした)。


〇補足とポイント

 

・新生姜は6月から8月ごろまで出まわる。

 

・新生姜の甘酢漬けは、たっぷりとできあがるが、ほかの日のお弁当のごはんに刻んで混ぜたり、口直しとして添えたり、トマトのサラダに刻んで和えたり、タルタルソースに混ぜたり、といろいろな使いかたでたのしめるので、たっぷりつくっておくのがおすすめ。

半量でつくることもできる。

冷蔵庫に入れて、保存すること。

 

・新生姜は、鮮やかなピンク色をした先の部分が入ると、漬けたあとに色が溶けだし、全体が淡いピンク色に染まりきれいなので、ピンク色の部分も刻んで入れるとよい。

 

・新生姜の甘酢には、洗双糖を使っている。きび砂糖でもおいしくつくれるが、洗双糖のほうが透明感があり、色もきれいに仕上がる。

 

・油揚げには、豆腐屋さんやメーカーによって、袋状に開きやすいタイプのものと、しっかりと厚みがあって中身の豆腐部分が詰まっている感じがするものとがある。

中が詰まっているタイプのものは、開きづらく、つくるのが大変なので、油揚げ選びから気を配るとよい。

スーパーなどであればパッケージをよく見たり(いなり寿司向き、と書いてある場合もある)、豆腐屋さんであれば店頭で聞いてみたりしてもよい。

今回使用した「三之助とうふ」の油揚げは、油抜き不要と書いてあるくらい質のよい菜種油を使っていて(いなり寿司の場合は、油抜きは必要)、薄手で開きやすいながらも、破れにくくもあり、使いやすいと思う。大きなスーパーや自然商品店などで手に入る。

https://www.minosuke.co.jp/?pid=121675170

 

・いなり寿司のごはんは、少し余るので、そのまま食べたり、海苔で巻いて食べたり、ちいさな海苔巻きをつくったりするとよい。

 

・いなり寿司の酢飯は、今回は、白バルサミコ酢と塩のみで調味できるレシピにしている(白バルサミコ酢自体に自然な甘みがあるため)。一般的な、米酢や穀物酢に砂糖を加えた甘酢でもおいしくつくれるが、白バルサミコ酢でつくるとおいしく、かつ手軽。

 

・翌朝にお弁当をつくる場合は、油揚げを煮ておき、朝にごはんが炊けるようにしておいて、新生姜と紅生姜を刻んでおいて、ごはんが炊けたらすぐに混ぜて冷まして……その間にほかの家事などをして……とつくるとよい。

油揚げが煮えたものは、バットに並べて冷蔵庫に入れておくか、下に保冷剤などを当てておくとよい。

 

・いなり寿司のごはんは、新生姜や紅生姜を加えない、プレーンな酢飯でつくっても、おいしい。

新生姜と胡麻だけでもよいし、お好みで。

くしま けんじ

料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。

(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)

instagram:@kenjikushima