「紙ナプキンだけ」という魔法にかけられて

━━わたしは最近まで、 あたりまえに紙ナプキンを使ってきました。子どものころは布ナプキンの存在すら知りませんでした。

才田春光さん（以下、才）：ほとんどの女性がそうですよ。それは、あるときにわたしたちが魔法をかけられるからなんです。小学校5年生ぐらいで、女子だけが受ける授業があったと思います。あれはわたしから見ると女性が魔法にかけられる時間です。そこでは生理についての説明とともに、紙ナプキンが配られませんでしたか？

━━はい！　かわいいパッケージのものをもらいました。

才：それを家にもち帰っておかあさんに見せたとき、おかあさんも同じような紙ナプキンを使っていることを知ったら、どうかしら？　ほかのものを使うことを考えますか？

━━それしかない。疑う余地もない感じがします。

才：ほら、そこでもう魔法にかかったの。本当は違うのよ。その授業で紙ナプキン以外の選択肢をなしにされただけ。みんな「眠れる森の美女」のオーロラ姫にされてしまうの。学校の先生も、おかあさんも、まわりの大人がみんな魔法にかかっているものだから、子どもたちが魔法にかかるのは当然。 もちろん、わたしも。でもラッキーなことに、わたしの魔法はその後とけてしまいました。

━━紙ナプキンがないもっと昔、女性たちはどうしていたのですか。

才：わたしの母の時代だったら、脱脂綿を使っていました。脱脂綿すらなかった時代もありました。布なんて高価で使えなかった。では、もののない時代の女性はどうしたか。ものには頼らず、「自分」に頼っていたわけです。自然に「ちつ」をきゅっとしめて、経血をキープしてね。今はものが溢れているけど、わたしの話を聞いてから、紙ナプキンを選ぶか、「スナフ」*などの布ナプキンを選ぶかをもう一度考えてほしい。もし、紙ナプキンのメリットだけでデメリットを知らなかったり、紙ナプキン以外のものを考えられなければ、それはまだ眠っているオーロラ姫のままだということです。自分の意思で選択しているとは思えません。だから、早く目覚めさせてあげたいんです。

━━紙ナプキンのデメリットで一番こわいのは、やはり経皮吸収で毒性のものが子宮にたまることですよね。

才：腕の内側を1とすると、性器は42倍の経皮吸収率です。子宮が汚れることで、自分はもちろんのこと、いずれ産むかもしれないあかちゃんへの影響も心配です。また、紙ナプキンを使うということは、ごみとして燃やしたとき、ダイオキシンを発生させて環境汚染になる可能性もあります。このように、自分が選んだことがブーメランのように、また自分に戻ってくるということを知ったうえで選べばいいと思います。自己責任でね。

堂々とお日さまの下で干せる布ナプキンを

━━多くの女性は、そういったことを知らないだけかもしれません。でも、その事実を知れば、布ナプキンを使ってみようと思う女性がもっと増えると思います。

才：布ナプキンを使い出したら、洗うことが前提になりますから、洗う枚数も減らしたいし、「布を汚したくない」という感受性のスイッチが入るんですよ。なにしろ布にすると、ちつがきゅっと反応してくれるようになるの。

━━誰でもできますか。

才：個人差はありますが、はじめて布ナプキンを使ったときから、できる人はできます。おならやおしっこを我慢するように、経血が、ぬるっとちつに下りてきたと感じたら、きゅっとしめて、トイレに行けばいいのよ。夜を不安がる人がいますが、実は夜が一番おもしろいのよ。翌朝、たくさん出せるものがあると「やったー」という満足感があるんです。

━━月経血コントロールができたら、毎月生理が楽しくなりそうです。

才：そうなると思います。そのためにも、はじめて使う布ナプキン選びを気をつけてほしいの。せっかく布ナプキンにチャレンジするなら、通気性がよく、化学染料で染めていないものがいいでしょう。あと、やはり一枚の布になるものが洗濯しやすく、衛生的だと思います。

━━スナップがついているタイプも多いですが。

才：紙ナプキンの発想をそのまま布にしているだけですね。スナップは、紙ナプキンの粘着テープの代わりでしょ。それに、スナップつきのタイプは布を何枚か重ねて縫うということで紙ナプキンの吸収体の役目をさせています。中には、もれ防止のために防水シートが入っているものもあります。そうすると通気性は悪いし、乾きにくくて、梅雨どきに縫い目からカビが生えたという人もいました。それではかえって不衛生ですよね？

━━なるほど。

才：お天気が悪い日にスナップつきの布ナプキンを室内で干していて、おつれあいに文句をいわれたなんて話も聞きますよ。男性にも知ってほしいと思う一方、女性も想像してほしいです。他人が見たらどう思うかしらって。人目につかない干しかたを考えましょうね。これは他者への思いやりでもあります。一方、一枚の布になるものだったら、ハンカチと同じです。干してあるのを気にする人なんていません。わたしは堂々と、お日さまの下で干してほしいの。日光にあて、風にそよがせれば、すばらしい殺菌効果、自然の恩恵を受けられます。ところで、股間の日光浴をいつごろしましたか？

━━ぜんぜんしていません（笑）。

才：きっとあかちゃんのとき以来、していないかもしれませんね。生理のとき、お日さまにあてて干した布を、自分の大事なところに使ってごらんなさい。気持ちいいわよ。そこでひと工夫ね。使う前に、布を軽くもんであげるの。そうするとより肌あたりがやさしくなります。そして声をかけるの、「よろしくね」って。「よろしくね」っていわれると、誰でもがんばるじゃない。それだけで、最初から捨てるつもりで使うのとはまったく違う、しあわせな気持ちになれますよ。