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リレー・エコ連載

更新日 2008/06/13

エコ・リレー連載 murmur学園 エコ部!第1回/「エコ部!」では、今さら人に聞けないエコの「きほんのき」から、エコにまつわる、かわいくてちょっとしたアイデアを、各界の方々にご紹介いただきます。部活の先輩に教わるように、甘酸っぱい気分で、学んでいきましょう!

第3回目のゲストは、本誌でモデルとしてご登場いただいた湯沢薫先輩。現在、モデルだけではなく、美術家としても活躍中。その作品は、海外を中心に高い評価を得ています(WEBサイトで作品を見られますので、ぜひ見てみてください!!)。
さて、今回のエコ連載では、原稿を書いていただいただけでなく、ななななんと、作品もうまれてしまったというではありませんか!!編集部は、もう大感激なんでアリマス!! では、湯沢先輩、よろしくお願いいたします!

第3回:エコについて、部屋でじっくり、考えてみた/湯沢薫

母は「エコ」を知らないが、エコな人

地球温暖化問題、戦争など、そのすべては経済や政治力が関係している。 長い時間に形成された複雑な歴史がその背景にはある。 私達がその対策として、いったい何をすればいいのか?というと、やはり個人的にできる小さな事柄が重要なキーになってくると、私は思う。

私の母は70歳をとうに過ぎていて、彼女は”エコ”という言葉を知らないだろうが、まさにエコな人である。もちろん、本人にその自覚はない。戦争を肌身で感じたことのある世代の人は、物資不足の経験から、そういうことが自然と身についているのだろう。

例えば、テレビを見ない時は電源をきり、更にはコンセントまで抜く、ということが日常として、行われている。それは意識的にそうしているのではなく、習慣だ(節約術かもしれない)。私達の世代の多くは、意識しないとそうはいかない。私自身もコンピューターのない生活は考えられなくなってしまった。無意識のうちに、二酸化炭素を排出するのに力を貸してしまっている。
母を見習いたいものだ。

自然は、インスタレーション作品

海外で生活していた時は、夜は電気を暗くして、キャンドルなどを使用していた。日本の都市は必要以上に照明が明るい。海外から数年ぶりに戻ってきた時(プチ浦島太郎状態であった)、コンビニや、新宿などの電光看板の行き過ぎた明るさに驚いた。なにもあんなに光らせなくても、いいんじゃないか?って思う。都会の空では、星すら一寸しか見えやしない。

さて、私は東京に住んでいるので、ある種、電磁波まみれだ。 東京に限らず、ある程度の都市に住んでいる人は電磁波から逃れることは難しい。 毒は毒で制す方式フル活用だ。まぁ、それも悪くはないが、大自然が大好きな私は、時々、山や砂丘に行く。

お気に入りの場所はニューメキシコ州なのだが、日本では白根山(草津)、東北、近郊では山梨が好きだ。 次は奈良に行きたいと思っている。 白根山に作品の写真を撮りに行った時、機材を背負い、数時間歩いた。自然の中にはさまざまな発見があり、深呼吸して、体内のエネルギーチャージをする。そうすると、直観が研ぎ澄まされる。

よく言われることだが、自然が生み出す造形美には、やはり敵わないな、と思う。

雨の雫と蜘蛛の巣が織りなす世界は、まるでインスタレーション作品を見ているようだ。蜘蛛の巣を見つけると、しばらく観察するのが楽しくてしょうがない。幼少時代の記憶が蘇るようである。

野草を観察しながら、自分が身長5cm位になった姿を想像してみたりする。きっと、自然という宇宙がそこにはあり、昆虫や鳥に襲われる危険はあるが、非常に面白いアドベンチャーだろうと思う。逃げ足の遅い私は、すぐにカマキリか何かのエサになりそうだ。と、考えると怖いから、やっぱり身長172cmでいいや、と思い直す。想像力の中でも優柔不断。

エコについて考えていたら

今回、改めてエコについて部屋で考えた。そうしたら家の中にある物が、現代社会の象徴的なアイコンに見えてきて、そうこうしているうちに手を動かしたら、小さな立体ができた。

『Small forest in the plastic city』
作品素材/拾った羽、枯れ枝、葉、土、ペットボトル、お菓子か何かの包装に使われていた古びたリボン、造花、ボンド、ひつじの玩具

肉食の習慣がある人間社会のことを考えてみたりもした(その結果、人工製品ストッキング蜘蛛の巣?に捕われてしまった羊になった)。山に行った時に拾った鳥の羽や枝、破れて不用となったストッキング、ゴミ出し前のペットボトル、そんなものを素材にして、構築した。『Small forest in the plastic city』でき上がった立体をぼんやり眺めると、探していた答えが見つかりそうな気になった。同時に問いかけでもある。

大自然から恩恵を受けている私は、積極的に自然を保つことに向け、行動を起こす必要があるな、とそんなふうに感じたのだった。


湯沢薫
profile
〔ゆざわ かおり〕
美術家として活動するかたわら、モデルとしても活動中。10代後半よりヨーロッパ、アメリカ各地を放浪。1997年より本格的に渡米し、San Francisco Art Institute にてPhotography、Book Binding、Experimental filmを学ぶ。 帰国後、現代美術の個展、グループ展などで作品を発表。2007年にアイルランドで開催された個展は、現地のプレス、美術評論家などからも絶賛された。2008年12月に、ストックホルムで展覧会を開催予定。
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