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くしま けんじ

第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第11回 きのこと蓮根のハンバーグ弁当

 

30歳を目前にした秋頃、料理を生業にしたい、と働きはじめたのは、玄米ごはんとお味噌汁の定食や、からだにするっと入るようなデザートや飲みものを提供するカフェでした。

料理をさせてもらえるようになってからは、1日に10何合もの玄米を浸水させたり、何リットルものお味噌汁をつくったりしていました。

 

料理をする人の状態(体調や気分など)や、つくる時の気候など、さまざまな要因が料理に入っていく、そしてその料理を食べた人にも影響し、さらにその影響がまわりにも広がっていく……。

料理だけでなく、さまざまな物事を見る目や、考えかたなど、ほんとうにたくさんのことを教わった場所。

 

そのカフェで、寒い季節にたまに登場する献立に、「蓮根の蒸しだんご」というひと品がありました。

葛でとろみがつけられた、生姜のすりおろしの入った醤油あんが上にかかった、蒸しだんご。

だんごのつくりかたは、蓮根をすりおろして、香味野菜と調味料を加えて、だんご状に丸めて、蒸すだけ。

そのお店の料理を考えていた方に、蓮根はすりおろしてまとめて加熱するだけで、もちっとした食感に自然と固まることを教えてもらいました。

そして、すりおろした時に出てくる蓮根の水分は、湯呑みに入れて、お湯を注いで醤油をひと垂らしすると、喉を潤し、咳を鎮めて、胃の粘膜を守る働きをしてくれる、からだのあたたまる飲みものになることも。

 

今回はそんなカフェでのメニューを思い出しながら、お弁当のおかずに、蓮根のすりおろし、きのこたくさんと玉ねぎを加えて、ハンバーグをつくりました。

むっちりとしたハンバーグは、冷めても、しみじみとするおいしさです。

 

昭和初期に建てられた、元々キャバレーのあったビルの中、踊り子たちの控え室だった場所にあったカフェ。

ガラス窓や壁、天井の梁にその趣きを残していて、鄙(ひな)びた、影のある魅力的な空間でしたが、10年前に、ビルの老朽化により取り壊されてしまいました。

そのカフェで料理をつくりながら学ばせてもらったことは、カフェに広がっていた景色や音とともに、いまも心に残っています。

 


 

きのこと蓮根のハンバーグ

 

◯材料(2人分4個)

 

蓮根  110g +仕上げ用スライス4枚

きのこ類 70g(今回は、舞茸30g、ブラウンマッシュルーム20g、えのき茸20g)

玉ねぎ  40g

塩 適量

オートミール 28~30g

しろたまり 小さじ1/2

片栗粉 20g +焼く時用

醤油 少々

米油(など、くせのない油) 適量

 

◯つくりかた

 

① 玉ねぎは、粗みじん切りにする。

フライパンに少し水を入れ(小さじ1~2杯)火を点け、沸騰させる。水が沸いたところで、玉ねぎの粗みじん切りを入れ、塩ひとつまみして、玉ねぎに火が通るまでへらでたまに混ぜながら炒める。

火が通り、透明感が出てきたら、ボウルなどに移し、冷ます。


②きのこ類は、すべて細かなみじん切りにする。切れたら、玉ねぎと同様に(玉ねぎを炒めたものと同じフライパンで)、水を入れ、炒める。全体にしんなりして、水分が飛んだところで、玉ねぎと同じボウルに取り出しておく。

 

③蓮根は、皮のついたまま使う。25g程を、2ミリ角のみじん切りにする。残り85g程は、おろし金ですりおろし、ザルにキッチンペーパーをしいたものに取り出し(下にボウルを重ね、すりおろしの汁を受けるようにするとよい)、すりおろしの水分を切る(自然に落ちてくる水分を切るだけでよい。絞ると仕上がりがぱさぱさするため、絞らない)。

 

④①②が冷めたら、①②を入れたボウルに、③でみじん切りにした蓮根と、蓮根のすりおろしを加える(水分は入れない)。

 

⑤①②を炒めたフライパンをさっと洗い、オートミールを入れ中弱火にかけ、香ばしい香りがしてくるまで、乾煎りする。香ばしい香りがたったら、火を止め、しろたまりを注ぎ、塩軽くひとつまみして、全体をへらで混ぜて馴染ませる。そのまま置いておき、粗熱が取れたら、④のボウルに加える。

 

⑥全体をゴムベラなどでよく混ぜ、片栗粉と醤油少々を加え、さらによく混ぜる(粘りが出てくるまで)。


⑦⑥の生地を4等分にして、手で球状にまとめる。蓮根を薄くスライスしたものを球状の片面に押し当て、くっ付ける。

蓮根ハンバーグ(蓮根スライスを片面に付けた球状にまとめた生地)全体に、片栗粉を塗しつける。全部で4つ、蓮根ハンバーグをつくり、片栗粉をまぶす。

 

⑧フライパンに米油をひき、中弱火にかける。

フライパンがあたたまったら、蓮根ハンバーグを並べ入れ、焼く。片面に焼き色が付いたら、形が崩れないようにそっとフライ返しなどで裏返し、反対の面も焼く。裏返したら、火を弱火に落とし、蓋をして、中心まで火が通るよう12~15分程蒸し焼きにする。蓋を取り、ハンバーグを指先で押してみて、中心まで火が通っているのを弾力で感じたら、余分な水分が飛ぶように火を強めて1分程焼き、フライパンから取り出す。

 

◯補足とポイント

 

・具材を炒める時に、油を使うと、ハンバーグにする時に食材がまとまりにくくなる。そのため、油は使わず、水をフライパンで沸かしながら炒める(水炒め)。水を沸かすようにして炒めると、食材がフライパン表面にくっつくことなく炒められる。

 

・蓮根のすりおろしの時に出た水分は捨てずにとっておき、(前述のとおり)お湯と醤油を加えて飲んだり、お味噌汁の水分として加えたりして飲むとよい。

 

・蓮根がもともともっている水分量によって、水気がたくさんあるとハンバーグ生地がゆるくなることがある。その場合は、オートミールをさらに足す、生地に加える片栗粉の量を増やす、などして調整するとよい。

 

・ハンバーグの表面に付ける蓮根のスライスは、断面の小さな蓮根を選ぶようにするとよいが、もしなければ、半月切りや四つ切りにしたものでも。

 


 

野菜のすりおろしソース


◯材料(つくりやすい分量)

 

にんじん 60g

赤玉ねぎ 50g

セロリ 20g

トマト水煮缶(またはカットトマト缶) 100g

水 15g

米味噌 15g

醤油 5g

きび砂糖 3g

カレーパウダー 小さじ1/4

シナモンパウダー 小さじ1/4

ローリエ 1枚

塩 ひとつまみ

 

〇つくりかた

① 小鍋を用意する。

にんじん、赤玉ねぎ、セロリ、はすべて、おろし金ですりおろし(その都度洗わずに、ひとつのおろし金で全部をすりおろす)、水とともに小鍋に入れる(分量の水で、おろし金をすすぐようにしながら入れると、無駄がなく、楽)。

その他すべての材料を加え、中弱火にかける。

たまにゴムベラで混ぜ、焦げつかないようにしながら、水分を飛ばして煮詰めていく。

 

②火加減や小鍋の材質にもよるが、5~10分程煮詰めて、ゴムベラで鍋底をなぜた時に、底面が見えるようになるまで、水分が飛びぽってりとした質感になったら、できあがり。

 

③小鍋に、トマト缶を加えて、中弱火にかける。たまにゴムベラで混ぜて、沸騰させる。

ひと煮立ちしたところで、その他すべての材料を加え、たまにゴムベラで混ぜ、焦げつかないようにしながら、水分を飛ばして煮詰めていく。

 

◯補足とポイント

 

・野菜のすりおろしソースは、この蓮根のハンバーグのほか、コロッケはフライ料理などのソースとして、また、オムライスなどのケチャップを使う料理にケチャップの代わりに使ったり、ケチャップにすこし足したり、パスタのトマトソースに加えたり、と、アイデア次第でさまざまな料理に活用できる。

そのため、この分量の倍量でつくって他の料理にたくさん活用するのもおすすめ(このレシピの分量でも、蓮根ハンバーグ4個分よりはかなり多く出来上がる)。

写真は、倍量でつくった時のもの。

 

・ローリエは、煮物料理に使う際に、葉の葉脈部分に爪を使って切り込みを入れて使うと、断然香りがよく出るので、おすすめ。

 

・今回は、ハンバーグに野菜のすりおろしソースを合わせたが、醤油をかけるだけ、大根おろしと醤油、生姜おろしと醤油、醤油のあんかけ、甘酢あんかけ、ケチャップと中濃ソースを混ぜて、など、さまざまなソース、味付けと合う。塩だけで食べても。

 


 

◎仕上げ

1.5合分の炊きあがったごはんをお弁当に詰め、蓮根ハンバーグを入れ、上に、蓮根がすこし見えるように、野菜のすりおろしソースをのせる。

 

写真のお弁当は、黒米を混ぜた七分搗きごはん、オータムポエム(青菜)の炒めもの(塩と黒胡椒)、そうめんかぼちゃのサラダ(茹でてほぐしたそうめんかぼちゃを、りんご酢、きび砂糖、塩で和えたもの)、赤いミニパプリカを油でじっくり焼いて塩をしたもの、と一緒に、詰めた。

 

 

くしま けんじ

料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。

(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)

instagram:@kenjikushima