連載

服部みれい・編集部

あの人に今聞きたい!
按田優子さん 第5回

2025年11月25日(土)―24(月・祝)に岐阜・美濃の「エムエム・ブックスみの」「甘味どころ ちゃらぱるた」で行われた、「按田餃子工芸部展 たのしいしまつの世界2 南米料理と火のしまつ展」を、按田優子さんと服部みれいが、ふりかえりました!

 

◎GUEST|按田優子(あんだ・ゆうこ)さん

1976年、東京都生まれ。料理家、「按田餃子」店主。食品加工専門家としてJICAのプロジェクトに参加し、ペルーのアマゾンを6回訪問。2012年、写真家の鈴木陽介さんと共同で、按田餃子を東京・代々木上原にオープン。現在は、代々木上原本店、代々木上原パワー店、三浦工房直売所の3店舗を経営。2025年夏から三浦に拠点を移す。『男前ぼうろとシンデレラビスコッティ』(農山漁村文化協会=刊)、『たすかる料理』(リトルモア=刊)などの著書のほか、雑誌の執筆やレシピ提供など多数。按田優子さんを特集した『まぁまぁマガジン』26号(エムエム・ブックス=刊)が絶賛発売中!

 

◎トークショーのおしらせ!

3/1(日) 13:30~(開場13:15)
『まぁまぁマガジン』26号 刊行記念 按田優子×服部みれい トークイベント
@大阪工業大学梅田キャンパスOIT梅田タワー2F セミナー室201・202号室
詳細・お申込み:https://store.kinokuniya.co.jp/event/1766637300/

*2/28(土)ホホホ座(京都)は満席になりました!

 

◎『まぁまぁマガジン』26号について
https://murmur-books-socks.com/?pid=188975244

 


 

第5回 一年中、工芸部をずっと種火で。

< 第4回をみる

 

服部みれい(以下、み)

今回の工芸部展を終えて、

按田さんとわたしの間で話していることがあって。

工芸部展を、一年に一度、

スポットでやるのは続けていきたいけど、

一年中継続して工芸部をするのもいいよね、って。

 

按田優子さん(以下敬称略、按)

そうなんですよね!

 

み たとえば、「甘味どころ ちゃらぱるた」の裏の梅林で、

みんなで梅を収穫して、すって、

梅肉エキスをつくったり。

按田さんは「染めをやりたい」と、

おっしゃっていましたね。

 

按 はい。梅の木につく苔のようなものを、

水に浸けて発酵させると、紅色になるみたいで。

あと、みれいさんにいただいた「ねこ」(※)を

わたしは最近ずっと着ていて。

ねこをつくりたいなと思っています。

 

※信州の伝統的な防寒着。

背中に布を背負うように纏(まと)う。

 

み すごくあたたかいから、

薄着でいられるんですよね。

 

按 穴の開いた、虫が食ったセーターとかを全部、

ねこに合体させちゃえばいいんじゃないかなって。

あと、三浦の住まいの大家さんが

ミカン園を持っているんですけど、

「むかしはミカンの皮には油があるから、焚きつけに使っていた」

と、その大家さんから聞いて。

だから、ミカンの皮を乾かして、とっておいて、

次回の工芸部展では、

それで火をつければいいんだ、って!

 

み わあ! ぜひとっておきたいですね。

 

按 年間を通して連続性のある、

――夏の間にとっておいたものが、

秋にこう使えて、みたいな――

形になっていけばいいなって思います。

 

み そういった知恵や、つくったものが、

10年くらいの単位で積み重なって、

サグラダ・ファミリアみたいになっていったら、

おもしろいですね。

 

按 工芸部展の本質は、

人の間合い、距離感、営み全般に関わること。

より連続して重なっていくことによって、

地層のようにその場にノウハウが積み重なっていくこと。

ワークショップみたいに断片的に行うのではなく、

連続したところに漂うものを共有したいから、

自分たちは工芸部展をやっているんじゃないかな、

と思います。

 

み いやあ、本当にそうですね。

人間って、すばらしい能力がもともとあったのに、

高度経済成長とともに

どんどんその力を使わなくなっている気がするんです。

今回、そのことをすごく突きつけられて。

按田さんを特集させていただいた

『まぁまぁマガジン』26号の編集後記でわたしは

「これ以上馬鹿になりたくないのだと気づいた」

と書きましたけど、

自分の中の大切な筋肉がなくなっていく感じを

思い出す場でもあるなと思います。

 

按 むかしはご近所づきあいの中に

自分の能力を活かすチャンスが、たくさんあった。

でも、いまはそういう社会になっていないから、

余計に馬鹿になりやすくなっていると感じます。

 

み 10年後くらいに、工芸部展の知恵を集めた

ガイドブックができるといいですよね。

みんなの知恵が詰まった本。

質のいい灰ってこうやったらできるよ、とか、

ミカンの皮で焚きつけができるよ、とか。

 

按 アメリカに『BACK TO BASICS』

という本があって。

ああいう、知恵が詰まったような

ガイドブックができたら、すごくいいですね。

工芸部展は、やっぱり終わってから、

いろいろなアイデアが出てきます。

 

み 本当に!!

工芸部展は、自分を知る場でもありますよね。

能力が伸びる、才能がわかる、魅力に気づく。

そういう場だな、と、つくづく感じます。

 

按 わあ!

 

み そうそう、今回の工芸部展では、

もうひとつ、知恵の伝達があったんですよ。

(按田さんのパートナーの)岩野和政さんが、

最終日に、みなさんにワインを

注いでくださったんですけど、

(エムエム・ブックスの服部)福太郎さんが、

岩野さんにすごく影響を受けていて。

工芸部展が終わってから、

福太郎さんが積極的に

ワインを注いでくれるようになりました。

 

按 ふるまいの伝達の場にもなっていたんですね。

 

み 大人になると、

そういう場もなかなかないというか。

きっと福太郎さんは、

岩野さんから教わったのが、すごくよかった。

伝達には、土台となる人間関係も大切だと思います。

 

按 今回の工芸部展では、火の場所があったから、

“男性性”のありかたも

際立ちやすかったかもしれないですね。

今回、「海図」で封筒をつくってくださった、

島根県・隠岐島出身の男性がいました。

家に帰ってからも制作されるのかなと思ったら、

「島に帰ったら、家族との時間を大切にするから、

船の中でしか、便せんや封筒はつくらない」

といっていて。なるほどなって。

船の中に、青の部屋があるみたいなんですよ。

 

み おお、おもしろい。

ガイドブックの出版を淡い目標にしつつ、

工芸部を、ずっと種火で続けていけたら

うれしいです。

按田さん、ありがとうございました。

 

按 ありがとうございました。

 

(おわり)

服部みれい 【はっとり みれい】

文筆家、マーマーマガジン編集長、詩人。近著に、『自分をたいせつにする本』(ちくまプリマー新書)、『わたしにうれしいことが起こる。』(植原紘治さんとの共著 徳間書店)、『自分を愛する本』(kaiさんとの共著 河出書房新社)、『わたしがととのう 毎日のチャクラケア』(徳間書店)。『kaiのチャクラケアブック』など、編集にも熱く携わっている。ラジオ風味の音声メールマガジン「声のメルマガ 服部みれいのすきにいわせてッ」を毎週配信。まぐまぐ「超ハイパー私的通信」を連載中(月2~3回配信)。現在、NHKカルチャー岐阜教室で毎月講座を開催中。2025年は、企画・編集を担当した『murmurmagazine for men』第5号、『まぁまぁマガジン』26号を発刊。2026年6月に『自分を大切にできないときに読む本』(大原扁理さんとの共著 筑摩書房)を発刊

Instagram:@millethattori