連載

くしま けんじ

第1水曜更新
くしまけんじのおべんと帖
第2回 野菜のピビ弁当

あたらしい年になって、数日たち、日常がまた始まりました。

仕事初めの日のお弁当は、野菜のピビ弁当、に。

具によさそうな乾物を引き出しから出して、冷蔵庫の野菜室からあるだけの野菜を並べて、バランス、色合いを見ながら、何の食材でナムをつくっていこうか、決めていきます。

 

韓国ではピビは、ナム数種類を盛り合わせることによって五味五色を網羅しているのがよしとされているそうです。ぼくは、野菜を見るとあれもこれも、とつくりたくなってしまい、そして長方形のお弁当箱の面積を5等分するよりも6等分のほうがきれいに収まりそう、と、この日は気がつくと6種のナムができあがりました。

 

お弁当にはスッカラ(韓国式のスプーン)を添えて、よく混ぜながら食べ進めると、いろいろな食感や味わいが一体となりつつも、具のそれぞれの風味や個性も感じられて、とても満たされた気持ちになります。

 

韓国の言葉で「ピビ」は「混ぜる」。「パ」は「ごはん」を意味するそうです。

ぼくが数年前に出合い、今も大切にいつも眺めている、韓国人の方が記された韓国料理の本には、日本でよく表記されている「ビビンバ」、ではなく、「ピビ」と書かれていました(「ナム」も同様)。

そのことを発見したとき、この表記こそが韓国語での発音により近いものなのではないか? と感じて、それからは、このように書き表すことにしています。いつか、韓国を訪れて現地の方々がこの言葉を発するのをじっくりと耳にしてみたいです。

 


 

野菜のピビ弁当

 

〇材料(2人分)

 

大豆ミート(乾燥・ミンチタイプ) 30g

・米油 大さじ1/2

・みりん 10g

・醤油 10g

・米味噌または麦味噌 20g

・葛粉 5g

・水 10g

・胡麻油 5g

・生姜すりおろし 5g

 

長ひじきまたは芽ひじき(乾燥) 10g

・みりん 10g

・醤油 10g

・胡麻油 5g

(すり白胡麻、またはすり黒胡麻があれば加えるとなおよい)

 

金美(きんび)にんじん 80g

・りんご酢 10g

・きび砂糖 5g

・胡麻油 3g

・塩 ふたつまみ

 

蓮根 25g

・米油 5g

・白バルサミコ酢 10g

・しろたまり 5g

 

セロリ(茎の部分) 50g

・胡麻油 10g

・塩 ふたつまみ

 

小松菜 1株(ひとつの根でつながっている束)

・米油 10g

・胡麻油 5g

・塩 ふたつまみ

 

ごはん 1.5合分

(白バルサミコ酢+塩を少々。または梅酢を適宜)

 

コチュジャンとキムチ あれば適量

 


 

〇つくりかた

 

前準備:大豆ミートをたっぷりの熱湯に10分ほど浸して戻しておく。ひじきは柔らかくなるまで水で戻しておく。小松菜は水を張ったボウルに根の部分を浸けておく。

 

①大豆ミートのそぼろをつくる。

熱湯で戻した大豆ミートをざるにあけて湯を切り、ヘラなどを押し当ててさらに水分を切る。フライパンまたは小鍋に米油をひき、大豆ミートを中弱火で炒める。表面が炒まったら、水で溶いた葛粉、みりん、醤油、米味噌または麦味噌を混ぜ合わせて、加える。

ヘラなどでよく混ぜながら火を通し、水分がほぼなくなり艶が出てとろみがついたら、生姜すりおろし、胡麻油を加え、さらに混ぜておく。

 

②ひじきのナムをつくる。

水で戻したひじきを、ざるにあけて水を切る(大豆ミートの水分を切ったざるをそのまま使うとよい)。小鍋や小さなフライパンなどに入れ、みりん、醤油を加えて、中弱火にかける。たまに混ぜながら、水分を煮飛ばしていき、水分がほぼなくなったら火を止め、胡麻油を加えてさらに混ぜておく(すり胡麻があったら、ここで加えておくとさらによい)。

 

③金美にんじんのナムをつくる。

金美にんじんはなるべく細い千切りにしてボウルに入れ、塩を加えて、全体にいきわたるように手でやさしく混ぜておく。しばらく置いておくと、にんじんの表面が汗をかいたようにしっとりとしてくるため、そうしたら手のひらにとり、手でぎゅっと水分を絞る。ボウルに戻し、りんご酢、きび砂糖を加えて、お箸で空気を含ませるようにして混ぜる。さらに胡麻油を加えて混ぜておく。

 

④蓮根のナムをつくる。

蓮根を薄切りにして、食べやすい大きさのいちょう切り、または放射状に6等分に切る。小さめのフライパンに米油をひき、中火にかけ、蓮根を炒める。表面に火が入り、透き通ってきたら、白バルサミコ酢、しろたまりを加え、水分を飛ばすようにして炒めておく。

 

⑤セロリのナムをつくる。

セロリは茎の部分を、斜め薄切りにして、鍋に沸かしておいた湯で、さっと茹でる。すぐにざるにあげて湯を切り、ボウルにあけて、熱いうちに胡麻油、塩を加えて、箸で混ぜる。

 

⑥小松菜のナムをつくる。

小松菜の根の部分を包丁で切って取り除き、茎に土の付いた部分があればきれいに洗う。

5センチほどの長さに切り、⑤のセロリ同様、さっと茹で、米油、胡麻油で和え、塩を加えて混ぜる。

 

⑦ ①~⑥のナムをつくるところまで、前日夜にやっておき、バットなどにナムを種類ごとに分けて並べて準備しておく(バットの下に保冷剤を当てたり、暑い時期は冷蔵庫に入れたりして置いておく)。

当日朝、炊き上がったごはんに、白バルサミコ酢+塩、または梅酢、各適量をかけて、熱いうちにしゃもじで混ぜる。ごはんを2等分して、お弁当箱にしく。

お弁当箱にごはんをしいて、だいたい6等分になるように各ナムをのせていく。色合いを見ながら、場所を考えながら。好みで、キムチやコチュジャンを添える。

 


 

◯補足とポイント

 

・今回は家にあったにんじんが金美にんじんだったが、一般的なだいだい色のにんじんでも大丈夫。

 

・胡麻油は、香ばしい、香りのよいものを使う。

 

・しろたまり(日東醸造・足助仕込三河しろたまり)は、小麦、塩、焼酎を発酵させてつくられた調味料で、和・洋・中・エスニック、どんな料理にも合う。

食材にあまり色を付けずに、よい風味を加えられるので、とても重宝する。なければ、醤油を少なく加えて、塩で塩味を補っても大丈夫。

 

・今回のレシピにある野菜と同じものでなくても、この野菜のナムもおいしそう、と思ったら、適した切りかた、加熱のしかた(または生のまま)を決めて、調味してつくるとよい。

たいていの野菜でナムはおいしくつくれると思う。

 

・このレシピと同じ野菜であっても、使う野菜の個性を見て決めて大丈夫。

たとえば、このにんじんはなんだか硬そうだな、と感じたら、千切りにした後にさっと茹でる、と変えたり。このセロリは生のまましゃきしゃきと食べたほうがおいしそう、と感じたら茹でずに、塩を当てて水気を絞って生のまま使ったり。

野菜そのものをよく見て、野菜に合わせてつくるようにする。

 

・今回は、にんにくを使っていないが、お好きな方は、ナムの仕上げににんにくのすりおろし少量を加えてもよい。

 

・お弁当にキムチの強い香りが加わっても大丈夫な場合は、キムチを入れると、よりピビらしい味わいになる。

 

・乾物を使わず、野菜のナムだけでもおいしいが、大豆ミートやひじきが加わると、より満足感のあるピビムパプになる。

 

・卵がお好きな方は、縁をカリカリに焼いた目玉焼きをのせてもおいしい。

 

・ピビは、酢めしでなく、白ごはんでつくることが多いようだが、酢を加えたごはんでつくるのもおいしい。

お弁当には、酢めしでつくることによりごはんの保存性が高まるため、酢めしでつくるのは理にかなっていると思う。

白バルサミコ酢があると、砂糖を加えなくても、軽い甘味のある酢めしができあがるためおすすめ。

くしま けんじ

料理家。2020年、東京・西荻窪で姉と営んでいたレストラン「食堂くしま」を閉じ、神奈川・鎌倉へと拠点を移し、パートナーと2匹の愛犬とともに暮らす。鎌倉の海辺のアトリエ「DODO」にて料理教室を主宰するほか、茶人として一客一亭の中国茶会「くしま茶侶」を開く。パートナーであるkaiの著作『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)の挿画を担当するなど、絵描きとしても活動。お弁当は秋冬の間、月に一度、鎌倉市場内のデリショップ「DAILY by LONG TRACK FOODS」にて予約販売している。

(この連載で紹介しているお弁当は、販売しているものではなく、自分たちが食べている普段のお弁当です)

instagram:@kenjikushima