第3水曜更新
Magical Mayberry Muffins
Episode 3 Joy in my being

◎前回までのあらすじ
アメリカから帰国したNaoは、湘南の町で暮らしている。
彼はある日、砂浜で一人の女性に出会った。友人となった二人は、頻繁に会うようになった。
ちょっとあなた。さっき神社で、必死になってなにをお願いしてたのよ。あんまり長いから、あたし、参拝にきてた旅行者のボーイに声かけて、立ち話しちゃったわ。近くで見ると結構グッドルッキングで、ときめいちゃった。笑うと若い頃のEthan Hawkeにちょっと似ててね。それにしても、『Reality Bites』のEthanは、天然記念物みたいな美しさだったわよねぇ。あたし、Ethanがパートナーだったら、デートも忘れて一日中お顔を見つめ続けちゃうわ。
あら、なんの話だった? あ、そうそう、だからあんなに長い時間、なにをお願いしてたのよ。
え? 早く仕事が見つかりますようにと貯金が増えますようにと新しいパートナーが見つかりますように、だって? あなた、強欲ね。それもはやお賽銭以外に別料金かかるわよ。
あたし? お願いごとなんて、しないわよ。
ううん、神様を信じていないわけじゃない。神様とおしゃべりするのは好き。だけど、お願いしたいことがなにもないのよ。やだ、強がっていないわ、ほんとよ。
じゃあ聞くけど、あなたの願いごと、それは本当に自分が望んでいることなの?
あなたは本当に仕事を早く見つけたいの? 心の奥底では「本当はもう少し休みたい」とか、思っていない?
貯金、本当に増やしたいと思ってる? お金を貯めて、なにかしたいことでもあるの? 不安感を消し去りたいから、とかじゃなくて?
新しいパートナー、本当に早く見つけたい? 実は一人が気楽〜とか、100パーセント思ってないって言い切れる?
……やだ! あたしったら、あなたが白目になるまで問い詰めちゃって。ごめんなさいね。でもね、願いごとの奥にある本心を探っていくと、不安から逃れたいとか、親を納得させたいとか、周りに遅れを取りたくないとか、そういうどうでもいいものに大抵行き着くわ。
「恐れ」「見栄」「承認欲求」「依存心」「親からの期待」。それらが主成分のファンデーションを厚塗りしまくって、いつしか人は自分のすっぴんの状態を忘れてしまうのね。
あたしの話、ちょっとしてもいいかしら? あたしね、父親がいない環境で育ったのよ。正確には、父親はいたんだけど遠くに暮らしていて、いないも同然のほぼ母子家庭みたいな家で育ったのね。
小さい頃、何度も願ったわ。「パパとこの家で一緒に暮らせますように」って。「神様お願い、なんでもするから、パパと会わせて」って。ふふふ、健気でしょ。結局、その願いが叶うことはなかった。でもね、あたし、ママと二人で暮らしていて、不幸だと思ったことは一度もない。あの頃のあたしはずっと幸せだったし、あのままで全て完璧だったんだ、って思うの。
あのね、「こうなったら幸せ」って決めることは、「そうなるまで幸せになれない」って決めることと同じなのよ。「幸せの条件」を決めちゃうと、人はそれを追い求めるあまり、今ここにある幸せに気づけなくなっちゃう。
そりゃあ、あたしだって、若い頃のEthan Hawkeみたいなパートナーがいたら最高、なんて思うわよ。お金だって、たくさんあったらうれしい。だけど、こうやって海辺のカフェのテラス席で波音のBGMを聴きながら、気が合うフレンドとリコッタパンケーキむさぼってる今この瞬間が、もうすでに幸せなんじゃない? って思うの。実際、あたしは今、とっても幸せよ。
幸せって、条件じゃないわ。誰といても、誰かといなくても、仕事してても、仕事していなくても、自分が自分のままでいられて、毎日なんとなくいい感じだったら、それでいいのよ。You know?
え? じゃあ、神社ではなんてお願いごとをしたらいいのか、って? あんた、今の話ちゃんと聞いてたぁ? お願いごとなんて、してもしなくてもどっちでもいいのよ。あたし達はいつだって完璧なんだから。
ん? さっき、あたしもお願いごとをしてたじゃないかって? あれはお願いごとじゃなくて、神様とおしゃべりしてたのよ。
「神様、あたしは今日も超絶ハッピーよ。そっちはどう?」ってね。
(この物語はフィクションです。実在する場所が登場しますが、登場する人物・出来事は全て架空のものです)

セラピスト、アーティスト、文筆家。2011年よりスピリチュアル・カウンセラーとして活動(2020年に休止)。現在は鎌倉のショップを不定期で運営しながら、アート表現、執筆、講座などを行う。主な著書に『kaiのチャクラケアブック』(エムエム・ブックス=刊)、服部みれいとの共著『自分を愛する本』(河出書房新社=刊)。2026年初頭には、服部みれいとの共著による新刊が徳間書店より発売予定。また、2025年秋に発刊したライトノベル『PEACEFUL PLUOT PIE』(個人出版)は、この物語の前日譚である。2026年1月、徳間書店より服部みれいとの共著『わたしがととのう毎日のチャクラケア』が発売。初夏には、みれい☆かるちゃ~☆すく~るで第1チャクラ講座を開催予定。
