タッチ、見る。タッチ、見る!?

━━世の中、セックスレスのカップルがこんなに多いというのは、性エネルギーをほかに使っているということなのでしょうか。

加藤俊朗さん（以下、加）：今はやることがいっぱいあるからね。ちょっと下品ないいかただけど、かつて、人間には食べること、寝ること、セックスすることしかなかったんだよ。でも、今の人の多くは食べるほうにかたよってる。

━━そのとおり！　みんな本当によく食べてますよね。

加：本当はね、セックスするほうにいったほうが、からだは生き返るんだよ。原初では、人間にとって子どもを産むこと、子孫繁栄が最大のテーマだったでしょう。そして、男は食べものをとりに行って、女は残って子どもを養うのが基本だった。だから基本に戻ればいいだけなんだよ。

━━夫がAVをよく観てて、「セックスはああゆういやらしいもの」という考えがあって、妻を見てもそういうエッチな気分になれないからできない人もいるのだとか……。

加：昔はビデオなんてなかったからね。俺が覚えてるのは……ヌード写真だっておおっぴらにあったわけじゃないんだよ。先輩がこっそりもってきて、（海岸で）陸に船が裏返して置いてあるようなところで、その船の中に入ってわずかな光を頼りに見たりするわけ。明るいところでは見ないんだよ。でもそうやって見ると、ふしぎな感動があるの。

━━想像力が高まりますよね。でも、今はAVやその類が性のお手本になってしまっているように思います。セックスレスで本当に精神的に追い詰められている人はどうしたらいいと思いますか？

加：うん、ごぶさた夫婦のために考えたんだよ。「オープン＆クローズの法則」。こころをオープンすることに慣れる方法のひとつで、「タッチ、見る」。

━━タッチ、見る!?　いきなり触るの？　それで見る!?!?

加：それはそうだよ（笑）。現実問題として、触れなきゃはじまらないんだから。「吐いて、吸って」を練習して、こころの中をきれいにしてから、「はい、タッチ」ってするの。

━━パートナーの肩や手にちょっと触れることからですか。

加：そう。最初は手とかひざにタッチする。呼吸しながらちょっとタッチ。それから相手の目を見る。

━━ああ、目は大事ですねー。

加：「アイトーク」ってあるんだよ。相手の目をじっと見るんだよ。

━━やっぱり目と目なんですね。目合い（まぐわい）だ。目ではじまるんだ。

加：何しろごぶさたなんだから。夫婦だって恋愛の相手と同じだよ。呼吸でこころの中をきれいにしながら、「タッチ、見る」で、相手にぶつかっていくの。

待ってちゃダメ。ときには種まきを

━━これはパートナー募集中のごぶさたガールも使えますね。

加：そうだよ。好きな相手の前にハンカチなんかをわざと落とすんだよ。さりげなくね。そうしたら絶対拾ってくれるから。それで、「ありがとう」といって、相手の目を見る。それがきっかけになるわけだから。2､3回同じことやるとだいたい向こうが気づくはず（笑）。

━━ハンカチ!!　古典的!!　でも、しっかり目を合わせる機会をつくるってことですよね。待ってちゃダメ。

加：そう。ときにはそうやって種をまくのよ。でもね、気をつけなくちゃいけないのは、セックスレスはどうしても肉体が優先の話になるでしょ。相手との関係が肉体だけでずっといければいいけど、そうはいかない。そこに落とし穴があるんだよ。

━━わかります。肉体だけじゃないですものね。

加：一緒にいてこころの安らぎが生まれてくるような絆ができるかどうか。これがいちばん大事。でも、相手がいない、夫がいてもセックスがないっていうのはその前段階。だから、呼吸で潜在意識をきれいにして、「タッチ、見る」からスタートだよ。そこから、人生は動き出すから。