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Special Issue 別マー特集

更新日 2012/05/25

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石田紀佳さん(のりま)×服部みれい(みれま)の「魔女(修行中)たちの、ここだけのはなし」

本誌で盛り上がった、魔女(修行中)たちのひそひそ話。中でも、日常に潜む「錬金術」について、話が尽きませんでした。のりま(魔)、みれま(魔)と呼び合うふたりの今回のテーマは、表現と錬金術について。本誌の勢いそのままで、お届けします!  文=アマミヤアンナ(マーマーマガジン編集部) イラスト=宇野亜喜良

◎「同時」を味わうのが錬金術

(石田紀佳、以下の)
みれまって、ことばを信じているところと、
信じていないところがあるでしょ?

(服部みれい、以下み)
そうだね。
ことばの窮屈さを実感してるから、
いかにことばにしづらいことを、ことばにするか、
ということに、トライしてるところがあるかも。

ことばってすっごくあらっぽいし、全然正確じゃないよね。
わたしの文章は変な文体だけど、
でも変なまま、ブログとかメルマガとか書いちゃってる。
それは意識してそうしてるかも。
わざとそのままにしてる、というか。

(の)
なるほど。
ことばって、とどめてあるシーンを書くし、
書くことで一度止めるようなものだけど、
わたしは「止めないことば」を書きたいんだよね。
あいまいなものを、あいまいなままに表現したい。

たとえば、占いとかで使うタロットカードってあるでしょ?
あれには、錬金術の秘密が描かれているという説があって。
タロットは絵からメッセージを読み取るから、
結果が、読み取る人の経験値にすごく左右されるんだよね。
それでも、絵で移ろいゆく事実をとらえるっていうのは、
あいまいで、なんかいいなと思う。

(み)
うんうん。絵は、動いているものを動いているままに見るという、
プロセスパラダイム*1 的なものだよね。
音楽は、瞬間で消えていくからもっとそうかも。
そのふたつが重なるとすごいね。
わたしはそういう意味では、映画とかライブとか演劇に興味がある。
その場でふわっと立ち上がって、瞬間で消えていく。
そのときの感動って、恋とかのレベルですらないというか(笑)。
バンドをやってるときも、そういう瞬間があるよ。

(の)
恋が成就する前もそうだよね。
直前が一番いい(笑)。

(み)
「同時」っていうのを味わうのも、錬金術だよね。
でもそれって本当は、料理をしている瞬間や、
子育ての瞬間にも味わえるはずなんだよね。
子どもはそういうものを生み出す天才だし。
立ち上がってくるものの楽しさを、動きながら動くままに感じる。
そうすると、日常のすべてが芸術になるよね。

本誌でのりまが紹介してくれた魔女修行は、
見習い魔女として、思い込みをはずすいい訓練になると思う。
思い込みをはずさないと、魔法は使えないから。

自分も含めて
たくさんの人にまだまだ、すごく思い込みがあるけど、
そんなの学校とか、会社とか、親とか、社会に
刷り込まれてるだけだから。

(の)
わたしも、自分の知らないところで
いろんな刷り込みをされていると思う。
だからそれを取りたいのよね。

(み)
わたしも! でも、ことばも音楽もだけど、
これから、表現は変わっていくと思う。
いろんなあたらしい表現方法が発明されるんじゃないかな。
しかも日本人は、そういうコミュニケーションが得意だと思うな。

◎自然はすべてが必然

(み)
ところで、最初に
「ことばを信じてないでしょ」っていわれたこと、
ずっと考えていたんだけど、
それはあたってもいるし、あたってないところもある。
実際、ことばを使う仕事もしているわけで……。

わたしに得意なことがあるとすれば、
全部をあいまいなまま、宙に浮かせておくことかも。
すべてをプカプカと浮かせたままで置いておいて、
最後の最後に、それをパッと、
おさまるところにおさめるのが好きなんだよね。
ソファはここ、テーブルはここって。
いったん家具を宙に浮かせてふわふわとさせてから、
気持ちのいい位置にすっと座ってもらうようにするというか。

(の)
それって魔法使いみたいだよね。

(み)
そうだね!
でも、そうするためには待っている時間が必要なんだよね。
すべての機が熟するまで、振動が高まるのをただ見てるの。

(の)
それ、今回の『マーマーマガジン』の誌面づくりでも感じたよ。
「えっ、間に合うの?」って不安になるくらい、
ギリギリまで引っぱって。
ああ、 浮かせて見てるんだなあって思った。

(み)
……ごめんなさい(笑)!
このやりかた、キツイ人にはキツイと思う。
でも、実はわたしもキツイんだよね。
『マーマーマガジン』をつくっているときって、
なんか夜とか寝られないし。

でも、そこから答えが立ち上がるのをじーっと待ってると、
答えがひとつずつ立ち上がりはじめて、
一気にスパパパパパンっておさまっていく。
それが快感なの!

そうして、ものごとをあるべき場所におさめてあげると、
みんな気持ちよくおさまるんだよね。
すべて、必然にしたいからそうしてるのね。
だって、自然ってすべてが必然じゃない?
そう思うと、自然て本当によくできてるなって思う。

(の)
うんうん。
動いているものを動くままに見るのと一緒だね!

(み)
そうなの。
一番きらいなのは、最初にピースをつくっちゃうこと。
最初から、家具を置く位置を「常識」にあてはめて、
決定して動かさないようにすること。
わたしにとっては、それが一番しんどい!

(の)
そうなると
限りなく自然に近いことばって、
どういうものだろうね。

(み)
きっとこれから、どんどん出てくるんじゃないかなあ。
わたしにとってはネット上で書くことばだったり、
詩だったり、音楽とともにあることばが、それにあたりそうだけれども。

*1 静岡大学大学院教授の舘岡康雄さんが提唱している
SHIEN 学でいうところの、「こころ」や「つながり」を重視した、
21世紀型の考えかたや働きかた

プロフィール
【いしだ・のりか】
フリーランスキュレーター。著書に『藍から青へ 自然の産物と手工芸』(建築資料研究社)。世田谷ものづくり学校で、定期的に「巡る庭」という庭づくりのワークショップを実施中

http://meguruniwa.blogspot.jp

※特集「キュレーター石田紀佳さんの 魔女(ニューガール)入門」は本誌15号でご覧いただけます