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Special Issue 別マー特集

更新日 2011/11/11

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今すぐわたしたちができること 田中優さん、鎌仲ひとみさんインタビュー 番外編 聞き手=ささたくや、服部みれい 協力=ap bank forum

みなさん、こんにちは。巻頭のインタビュー特集「今いちばん知りたい未来をつくる方法のこと」、ご覧いただけましたか? 地震からまだあまりときが経っていない今年の春に行った、田中優さんと鎌仲ひとみさんのインタビューでは、同じ号で「原発のない国NZの自給自足生活」の記事を書いてくれた、ささたくやくんと本誌編集長がお話をうかがいました。この番外編では、田中さんと鎌仲さんが教えてくれた「今すぐできること」について、あらたにいただいた回答も含めてご紹介します。

温度差のある人も巻き込んでいくには?

(ささたくやさん)
あたらしい時代をつくっていくために、僕もどんどんまわりを巻き込んで行動していきたいのですが、原発やエネルギーなどの問題に関心をもたない人たちとの間に、どうにも温度差を感じずにいられません。社会的に大きな影響力をもたない僕のような人たちが、温度差のある人たちも巻き込んでいくには、どのようなアクションをしていけばいいでしょうか?

一人ひとりが自分なりの表現をはじめる「場」を
一緒につくっていくことです

(田中優さん)
 「問題に対する姿勢に、自分とまわりとの間で温度差がある」ということですが、そもそもなぜその温度差が発生するのかと考えてみれば、それはきっと、「自分なりの表現をしているか、そうでないか」の違いだと思います。自分なりの表現をしながら暮らしている人は温度が高いけれど、受け身のままの人は高い温度をたもつことができません。現状は、ツイッターやブログなどを使って自分から発信している一部の人が、少しだけ熱をもっているという感じ。温度差をなくすためには、冷めている人にも自分なりの表現をしてもらうことが大切だと思います。
 そのためには「自分なりの表現をすることは楽しいぜ」というムードをつくり、表現のための「場」をつくっていく。そのうえで、「こんな方向もあるんだよ」と、行き先を提示してあげる。今求められているのは、そういうことなのではないでしょうか。とはいえ、押しつけがましくやるのは全然楽しくないですから、あくまで「こういうこともあるんじゃない?」というふうに提示していきたいですよね。それなら、受け手も楽しみながらやれるでしょうから。
田中優さん 人というのは、自分で自分の役割を見い出したときにこそ、元気よく動けるものです。 今は、いろいろな役割が求められているのに、特別な人以外には役割が与えられていないんです。だから僕は、特別な人以外でも役割を得られるような仕組みをつくっていきたいと思っています。

今、この瞬間からできることってなんですか?

(服部みれい)
あたらしい未来のために、今この瞬間から取り組めることはなんだと思いますか? できるだけ効果的で、『マーマーマガジン』の読者の多くは女性なのですが、女性にできる方法はありますか?

できることを積み重ねて「根っこ」を変えていく

(鎌仲ひとみさん)
 2007年に、長野県上田市でわたしがつくった映画の自主上映会が開催されました。それまで原発やエネルギー問題にほとんど関心のなかったひとりのおかあさんがわたしの映画に深く響いてくださり、幼稚園のおかあさん仲間と協力して企画してくれたのです。この上映会、なんと500人もの人が来場しました! それ以来、彼女は仲間たちとお話会や勉強会などの活動を続けていて、今年で5年目になります。その間ずっと、地元に根を張ってネットワークや仲間をつくり続け、楽しんでいて無理がなく等身大です。
 彼女たちは、活動をはじめて3年目に、<自分たちの町でエネルギーを考えようという発信>に対して市の助成金を得ることができました。その助成金で、2010年末に『ミツバチの羽音と地球の回転』の上映会も企画してくださいました。
 そしてこの上映会が、地元のエネルギーの地産地消への気運を高めたのです! 上田市の市議会議員31人全員に上映会のチケットを買ってもらい、結果的に10人の議員さんが来場しました。その議員さんの中のいく人かは、『ミツバチ〜』を観たあと、上田市で自然エネルギーを推進する議員団をつくりました。
 また、彼女の周辺ではエネルギーシフトを目指すあたらしいネットワークができ、自分たちにできる具体的なはじめの一歩を踏み出そうとしています。同時期にはじまった、長野県内でエネルギーの地産地消を目指す「自然エネルギー信州ネット」という、市民団体・個人・企業・大学・行政が協働するネットワークにも参加しはじめました。自分たちが暮らしている土地で仲間をつくり、できることを積み重ねているうちに、またあたらしい力がわいて来て、次のアクションへとつながっていったのです。
 このようなアクションは、今や上田市や長野県に限らず全国各地で行われていて、これこそが《根っこから社会を変えていく》ということだと思います。
鎌仲ひとみさん  上田市の例でいえば、若いおかあさんたちが「わたしたちにできることからはじめたい」「自分たちの未来は自分たちで選びたい」と等身大で学びながら、周囲へも働きかけていきました。こんなふうに自分らしいアクションをはじめる人が全国で増えていけば、未来は確実に変わるはずです。

プロフィール

[たなか・ゆう]

地域での脱原発やリサイクル運動を出発点に、環境、経済、平和などのNGO活動に関わる。「未来バンク事業組合」理事長。環境問題に関する著書多数

[かまなか・ひとみ]

NHKテレビの医療・環境問題などの番組制作で、ギャラクシー賞を受賞。映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』、『六ヶ所村ラプソディー』、『ミツバチの羽音と地球の回転』など、核、放射能、エネルギーをテーマにした問題に取り組んで12年になる

[ささ・たくや]

世界60か国の旅を経て、今は農耕型定住を目指す。NZで1年間、パーマカルチャーや自給自足の生活を学ぶ。夢は、山ごと自給自足のコミューン暮らし

[はっとり・みれい]

本誌編集長。震災後、悩みに悩んで、目の前のことを素直に表現しようと13号を制作。自分にできること、を模索する日々

◎鎌仲さんの作品紹介

『DVD「六カ所村通信 no.1〜4」映画「六ヶ所村ラプソディー」撮影現場からのレポート』

DVD『六ヶ所村通信 DVD4枚セット』
映画「六ヶ所村ラプソディー」
撮影現場からのレポート発売元/紀伊國屋書店(4枚組/定価6,300円)
●監督/鎌仲ひとみ●2004〜2008年、日本●no.1・51分/no.2・58分/no.3・57分/no.4・75分●制作・配給/グループ現代
東京と青森・六ヶ所村を20回近く往復して撮影した、200時間におよぶ映像から生まれた映画が、『六ヶ所村ラプソディー』。そして、映画におさめられなかったシーンをビデオレターとしてまとめたのが、この『六ヶ所村通信no.1〜no.3』です。そこに、映画公開後の取材をまとめた『no.4』を加え、『六ヶ所村通信シリーズ』として発売中! 「電気を使って生活している限り、日本ではほとんどの人が原発に依存して生活をしている。しかし、同時にほとんどの人が自分の電気を使う生活が核に結びついていると意識していない。電気を使うたびに放射性廃棄物が産み出され、それがいかなるものかを知っている人もほとんどいなかった。しかし、2011年3月11日の東京電力福島原発の事故以来、全ての日本人が放射能について考えざるを得ない状況になった」(鎌仲監督のメッセージより抜粋)