Special Issue 別マー特集
更新日 2011/05/13
映画『幸せの経済学』のこと 服部みれい(マーマーマガジン編集長)
先日、アースデーへ行って、ひときわ目をひいたブースがありました。それは、「ラダック」(NPO法人「ジュレ−・ラダック」)のブースでした。
ラダックとは、インドの最北部にあるヒマラヤの山岳地域。「小チベット」と呼ばれるほど、チベットの文化が色濃く残る土地で、そこではひとびとが真に助け合いながら、環境と調和して生きています。ブースのかたがたが着ていた民族衣装もすばらしくて、わたしは、しばらくそこで、グッズを観たり、お店のひととお話をしたりしました。
家に戻ってから、ラダックのことが気になってしかたがなくなり、調べてみたら、そうです、ラダックは、映画『幸せの経済学』の監督で言語学者のヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんが、「懐かしい未来」として、長年注目してきた土地でした。
映画『幸せの経済学』は、そんなラダックでのひとびとの暮らしや文化、環境を守る運動をしてきたヘレナ監督が、「ローカリゼーション」をキーワードに、「本当の豊かさ」について、わたしたちに、真摯に問いかける映画です。
映画の冒頭では、わたしたちが直面している危機として、環境の危機、経済の危機、そしてひとのこころの危機をあげ、経済成長した社会が、本当の意味ではちっとも豊かになっていないことをわかりやすく取り上げていきます。
映画では、「開発」という名のもとに、先進国による消費文化に翻弄されるラダックのひとびとの姿を追いながら、「グローバリゼーション」が世界で引き起こす8つの負の側面をわかりやすく紹介していきます(非常に、わかりやすいです!)。
わたしたちは、物質的な豊かさや便利さと引き替えに、格差社会をつくり、アイデンティティの喪失、自然資源の浪費、そして、独自の文化を手放していったのです。結果、わたしたちは、しあわせになるばかりか、どんどんばらばらにされて、孤独になり、経済はコントロールを失い、美しい自然をも、失おうとしています。
では、どうしたら、わたしたちは、本当の意味でのしあわせと豊かさを享受できるようになるのか。ヘレナ監督は、ずばり、そのキーワードは「ローカリゼーション」だといいます。
遠くの土地から空輸されるものを巨大スーパーで買うような生活ではなくて、自分がいる土地で育ったものをその土地で食べるような生活。
映画では、地域通貨やデトロイトの都市菜園、トランジション・タウン・ムーブメントなど、持続可能な生活を取り上げながら、「ローカリゼーション」が引き出してくれる豊かさについて、焦点をあてていきます。
地震後のわたしたちが迫られているのは、表面的な変化ではなく、わたしたちが疑いもせず、いや、こころの奥底で疑いながらも、続けてきてしまった現代の暮らしへの根本的な反省だと思っています。
誰がどこでどうつくったかわからないものを、簡単に手に入れる生活。コンセントにプラグをさせばいつだって電気が使えることの背景に、どういうしくみがあるかなんて考えもせずに、ずっと暮らしてきてしまったのです。
でもいよいよ、その「しくみ」自体を転換しなければ、わたしたちが住むこの地球自体が危ないのです。今回の地震や原発の事故は、「本当に目をさましてください」と自然が教えてくれているかのようだと思います。
この映画も同じです。しかも、ただ危機感を煽るのではなくて、「ローカリゼーション」をキーワードに、未来へ向けて現実的な希望がもてるところが本当によかった。自分が暮らす世界のしくみをちゃんと自分で知り、あたらしい暮らしを選択したい、とこころの深い部分で、感じ、背中を押してくれる映画でした。
もともとは、ここでヘレナ監督のインタビューを掲載する予定でしたが、予定を変更し、7月初旬に発売する本誌13号でご紹介したいと思っています。
すべてのマーマーガール&ボーイに観てほしい映画です。
5月21日(土)から上映がはじまります。
インタビューもどうぞ、楽しみにしていてください。
- 『幸せの経済学』
- ●監督/ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーリック、ジョン・ページ ●出演/ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、辻信一、ロブ・ホプキンスほか●2010年、アメリカほかで製作●68分●配給/ユナイテッドピープル
- ◎『幸せの経済学』公式HP
http://www.shiawaseno.net/ - ◎公開5月21日(土)12:45〜
UPLINK http://www.uplink.co.jp/ - ◎5月22日(日)日本全国同時100か所自主上映
http://www.shiawaseno.net/100-2 - 全国順次公開
- ◎7月初旬に発売の本誌13号で、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ監督のインタビューを掲載予定です