別マーアーカイブ

トップ > 別マー特集 :みんなだけに教えちゃお! 第2弾 第9号 こそっと裏話 > 大好き! 古本遊戯流浪堂のことをもう少し

Special Issue 別マー特集

更新日 2010/07/02

メニュー TOPへ戻る→

大好き! 古本遊戯流浪堂のことをもう少し 服部みれい

9号の巻頭特集は、「本」。そのなかでご紹介している「古本遊戯流浪堂」について、もう少し、ご紹介したいと思います。取材時に編集部が独自に購入した本たちも一挙公開! ぜひ本誌と合わせてお楽しみください。では! レッツラゴー!

最初からいいわけがましくてかっこ悪いのですが、
本の特集をしようと決めたとき、
『マーマーマガジン』を置いてくださっている
すべての本屋さんをご紹介したいと会議で話していました。

しかし、本誌のページ数は48ページです。
考えに考えたのですが、泣く泣く不可能ということになって、
では、どこの本屋さんをご紹介しようかと話し合ったとき、
「巻頭は、『古本遊戯流浪堂』がいいんじゃない?」って話になりました。
そうね、おつき合いも長いですし、
何せ、このデジタル化が進む時代にホームページもなく、
たんたんと昔ながらの方式で古本を売っている本屋さんを取材することは
エコロジーやオーガニックの精神の中の大切な何かに触れる旅になるのでは?
と考えたのです。
「ローカル」を大事にするとは、
オーガニックを考える上で欠かせないことだと思いますが
(9号で登場するジョシュ ポードルも
非常にローカルなつながりを大切にして洋服をつくっています)、
『マーマーマガジン』にとってのローカルに迫ってみたいって思ったのです。

「流浪堂」へ行くと、まず、わたしは
店主の二見彰さんか、店員の木村海さんにごあいさつします
(ちなみに木村さんは、本誌のイラストのように
ヘルメットはかぶっていませんので、あしからず)。
それから、お店の入り口近くまで戻って行って、
『マーマーマガジン』をチェック。
マーマーの並びを整えたり(店員さんにだまって勝手にやるところがミソ)、
マーマーに話しかけたりしまして、
その後、そのまわりに置いてある洋雑誌や写真集を観ます。

それから、今度は、大好きな猫と犬のコーナーへ。
「流浪堂」の犬猫コーナーは、やばい!
いつも何か買ってしまいます。
そのあとは、いよいよ、充実の絵本コーナーへ。
とにかく絵本が充実しています。
日本のものも外国のものも。児童文学もたっぷりあります。
そうして、最後は、全体をゆっくり観ていきます。
映画や落語のコーナーも楽しいし、
思想や哲学のコーナーも絶対に観てしまう。
アートや写真のコーナーについては、二見さんに解説してもらって、
おすすめを観せてもらったりもします。
そして最後にたいてい漫画のコーナーを観るかな。
このあたりには、乙女な本も並んでいたりして、見逃せません。

今回、取材をしている中で、
実際に古本屋さんを営んでいる方々に「流浪堂」ファンが多いのにも
驚かされました。
あのセレクト、価格設定などなど、
プロにしかわからない部分でも、なかなかすごいんだそうです。

また、「流浪堂」で、『マーマーマガジン』を買ってくださる方を
たまたまお見かけすることが多いのですが、
「流浪堂」だと不思議と自然に、声をかけさせていただくことが多いです。
不思議ですね。
ほかの本屋さんだとちょっと照れてしまったり、
悪いかな、と遠慮が出てしまいますが、
「流浪堂」だと、
「この本をつくっている者です」と名刺を差し出してしまったり。
お声がけしたみなさま、すみませんでした。

今、iPadにキンドルなどなど、電子ブックの世界が注目されています。
一方、人々の雑誌&本離れは進むばかり。
たくさんの本屋さんが苦戦をしています。
そんなご時世に、こんな小さなマガジンを(薄利ですのに!)扱ってくださる
書店のみなさんに感謝の気持ちを込めて、
また本というものの存在を大切にしたいという気持ちも込めて、
今回、特集を組んでみました。
そもそも、本ってこういうものだよね、本屋さんってこんな場所だよねって
振りかえるきっかけになったら、本当に、うれしいです。

では、編集部で買った本たち一挙公開です!

編集部で買った本たち一挙公開
◎雑誌やパンフレット

左上から時計まわりに

『Cowgirls』(Christina Assman)1,500円
馬にまたがる美女の薄い写真集。馬とトークする美女。馬の上でタバコをふかす美女。馬をどうどうとねぎらう美女。なんせ、ファッションが最高! 馬につけている装飾までもがかっこよくて、つい買ってしまいました。こういう本を眺めながら、次の号のファッション撮影へのアイデアが浮かんだり、浮かばなかったり。次号で、馬と美女が登場したら、「みれい、パクっていやがる」と、こころでひそかに思ってください。すみません。
『Lui』各2,000円
おそらく60〜70年代のフランスの男性誌。『プレイボーイ』をおしゃれにクールにしたような内容です。写真やレイアウトがイケてるのなんのって! 毎号女性のヌードのイラストがあるのですが、実にかわいくて女性も楽しんで観ることができます。「エロ」の分野ってとても大事なことなのに、もっと現代の日本にもおもしろい表現があるといいなあって、『Lui』を読んでいるとつくづく思います。雑誌をつくる上での勉強にもなります。
『PALINDROMES』のパンフレット 700円
この映画のことはよく知らないのですが、パンフレットのかわいいことといったら! ドリーミーだけど甘すぎなくて、使っている紙も透けてキュートだし、とにかく買わずにおれなかった一冊。パンフレットがよすぎるから、あえて、映画は観ない、なんて。「本」の表現のポテンシャルの高さをこのパンフレットから学びました。
◎本たち

左から時計まわりに

『花森安治と「暮しの手帖」展』パンフレット(世田谷文学館)4,000円
敬愛する編集者、『暮しの手帖』をつくった花森安治さん。「花森」と名のつくものは、もうなんでも読んでみたい衝動にかられますが、中でもこのパンフレットは編集がすごくよくて、ページをめくるたび、こころの一番深い部分を激しく突き動かされるものがあります。伝説の実験ページ(家を丸ごと焼く実験もある!)に驚愕し、お菓子でお城をつくるというおちゃめさにほほえむ。何時間でも見あきるということがありません。花森安治さんに1ナノメーターでも近づき、そしていつか天国の花森さんに「よくやったね」といわれるような編集者になりたいと祈りながら、この本を閉じます。価格はちょっと、お高めだけど、学べる内容を思うと、この勉強代は高くありません。
『モモも禅を語る』(重松宗育=著 筑摩書房=刊)700円
児童文学系の本も流浪堂でよく買い求めます。この本は、お寺の住職さんで翻訳家の方が、モモと禅との共通点を探っていくというもの。話す力や自己主張する力ではなく、「聞く力」をもったモモを創造したエンデに深い敬意をもったという著者。児童文学や絵本は、解説本のようなものを読むとさらに味わいも深くなることが多くて好き。そうしてまた元の本を読むというループを続けています。ちなみに『モモ』は、マーマーをつくる上で重要な役割を担っている児童文学です。
『犬―生活と意見―』(角川写真文庫)500円
グレートデンから、スピッツ、ボクサー、土佐犬、雑種犬まで、さまざまな犬がモノクロの写真とともに紹介された薄い本。現代のムックの極小版といったところでしょうか。「生活と意見」というタイトルを見たあとに、裏表紙を見ると思わずふき出してしまいます。レイアウトも実直で、こういう本をマーマーマガジンのデザイナーさんに見せて、「こんな雰囲気でやってほしい」などとイメージを伝えることも多いです。
『ニュースになったネコ』(マーティン・ルイス=著 武者圭子=訳 筑摩書房=刊)1,000円
本誌をつくる際に、すごく大事にしているのが、ネコをオマージュする気分というか、ずばりネコの存在です。ネコはすごくマイペースで、軸が自分にあって、優雅だし、甘くてしっとりしていて、その姿勢ってとても編集する上での参考になっていると思います。なんて、こじつけか。ただのネコ好きって話ですが。この本は、とにかくジャケ買い。写真についたキャプションも抜群にいい。「傷ついたあひるを下心なく優しくなでる」「救助され、リボンまで巻かれて唖然とする」など。かわいい! 本文のレイアウトも現代ではありえない非常に無邪気な感覚で、それがすごく参考になります。










『ニュースになったネコ』(左)と『犬―生活と意見―』(右)裏表紙

『フラワーフェアリー なつのうた』(シシリー・メアリー・バーカー=著 新倉俊一=訳 偕成社=刊)1,500円
花の妖精の本。左ページにお花の詩。右ページにフェアリーが。フェアリーの絵が、甘いのだけど、どこか凛とした風情もあって気に入りました! 装丁もすごくいい。カバーを取れば、同じオレンジ色の布張りで、とっても上品な一冊です。本誌には、詩や文学からの抜粋のページもあるので、詩集は年中探しています。編集部の本棚にある詩集から選ぶことも多いのですが、新しい作品にもいつも眼をくばっています。ただ、詩集の場合は特に古本屋さんで見つけることが多いです。

*価格はすべて流浪堂での販売価格です

プロフィール

服部みれい

[はっとり・みれい]

本誌編集長。著書に『なにかいいこと』(イースト・プレス)。夏に、新刊が発売予定