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Special Issue 別マー特集

更新日 2010/03/19

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焚き火食堂へようこそ!

地球の上に生きる2010特集、第2弾は、本誌でご紹介した「焚火の魔法」の番外編をお届けします! これを読むと、ううううう!! このご飯が食べたくなる! 焚き火食堂行きたくなる!! ぜひプリントアウトして、キャンプなどでお試しあれかし!

文 麻生弘毅(ライター)・イラスト 三田正明

まずは、お湯を沸かそう

 焚き火は起こすだけでも独立した楽しみになるけれど、その火を操って料理をすることで、おもしろさは何倍にもふくれあがる。

 火を起こしたら、まずは大きな鍋にお湯を沸かそう。

 すぐにもサンマを焼いて……という気持ちは分かるけれど、着きはじめの強い火は料理に適していない。この火で魚を焼こうものなら「外は黒こげで中は生のまま」という最悪の状態になる。というわけで、まずはお湯を沸かしてみよう。コーヒーを淹れてもいいし、洗い物用にしてもいい。寒ければ、湯たんぽに入れてもいい。野外生活では、大きな鍋に沸かしたお湯があると、なにかと重宝するものだ。

 勢いのよい炎がひと段落すると、薪は真っ赤な炭の状態になる。これこそが、料理に適した熾火(おきび)。釣ったばかりの岩魚を炙るとき、鉄鍋でパンを焼くときも、まずはひと呼吸。焚き火食堂は、じっくりと熾火を育てたあとのオープンとなる。

竹でごはんを炊こう

 こうして料理に取りかかるのだが、数ある焚き火レシピからおすすめしたいのが、竹の節を鍋に見立てたごはん炊き。

 竹の風味をごはんに封じこめる、おいしい魔法とは……。

 まずは竹を切り出す。

 その際は、竹林を持っている人にお願いするのだが、竹は成長が早く、根を広げやすいので、断られることはほとんどないだろう。ご近所探検の際、目を光らせておくのがポイントだ。直径10cm、長さ30cmほどの節で1〜2人分のごはんを炊くことができる。

 節を切り出したら、米を入れる小窓をつくる。

 ノコギリで横に平行の切れ目を2本入れたら(5cmほどの間隔を空けて)、四角いフタを切り抜くように、縦に鉈を入れる。小窓を開けたら準備は完了だ。

 次に研いだごはんを小窓から入れる。

 10cm×30cmの節なら2合ほど(ごはんが増えるので少なめに)。もしきれいな海のそばで火を焚いているなら、ごはんを海水で研いでみよう。海のミネラルが、ごはんをより甘く仕上げてくれる(研ぐだけで、炊くときは真水を入れる)。一緒にタケノコや、カキなど旬の食材を入れ炊きあげてもおいしい(はじめてのときは、シンプルな白飯がおすすめだけど)。水はごはん+1cmくらいの量で。炊飯器で炊くときよりも、気持ち多めくらいのほうがうまくいく。

 ごはんと水を入れたら、手頃な葉っぱで穴を塞いで、そのうえからくり抜いたフタをする。あとは焚き火の上に乗せるだけだ。

 炊きあがりは、火の勢いによって異なるが20分ほど。竹の節は水分を含んでいるので、いきなり燃えあがったりはしない。だいたい、底が焦げて炭のようになったら炊きあがりだ。この間を利用して、端材で竹箸をつくると、気分はいっそう盛りあがる。

ピッカピカのごはんが炊けたなら

 「赤子泣いてもフタ取るな」なんて言うけれど、慣れないうちは火の状態、竹の焦げるさまをよく観察しながら、フタを取って確認したほうがいい。薪や風、湿度や竹の状態など、さまざまな要素で火は変化していく。失敗することもあるけれど、焦げて芯飯になっていたら日本酒を垂らして再び炊き、水が多ければ少し捨てて薪を足すなど、わりとラフに、状況に合わせて対応してもなんとかなる。そうして経験を積むと、フタを取ることなく香りと音で炊きあがりが分かるようになる。火や風などあらゆる状況を読んで、フタを開けることなくピッカピカのごはんが炊けたときの嬉しさはこの上ない。焚き火料理のおもしろさは、「弱火で何分」と言えないところにある。

 炊きあがったら鉈で節を割る。

 ピカピカのごはんが現れると、みんなの笑顔があふれ出す。

 それこそが最高のおかずだ。

プロフィール

[あそう こうき]

大学探検部、山と渓谷社勤務を経てフリーランスのライターに。カヤックで人のいない島へとわたり、潜って魚を捕まえては焚き火酒をあおるのが好き。『フィールドライフ』、『カヌーライフ』(ともにエイ出版社=刊)で連載中。

簡単、優雅な焚き火のコツ
手順1
まずはよく乾いた薪を拾ってくる。
集めた薪は「焚きつけ」「細いもの」「太いもの」に分ける。
この際、小枝や余分な枝を払ってそろえるのがポイント。
小枝などによって生まれるよけいな隙間は、火床の温度を下げ、燃焼効率を下げてしまう。
手順2
風向きと並行に、太くて長い薪を2本、間を空けてそろえて並べる(間隔は、上に載せる鍋の大きさを考慮する)。
風上側で2本に橋渡しするよう小枝を載せたら、それにもたせかけるように「焚きつけ」を、隙間をつくらず立てかける。
立てかけた焚きつけの下で新聞紙などに着火する。
その際、海ならばカラッカラに乾いた海草、南の島ならアダンの枯葉、森ならば枯れた杉の葉やシラカバの樹皮などが自然の着火剤となる。
手順3
火がついたら徐々に太い薪を載せていく。
風上側から燃えはじめるので、そちらから先に薪が燃えていき、魚や肉、パンを焼くのに適した熾火になる。
勢いのいい炎は、時間とともに風下側に移っていく。
こうして風向きと並行に火を起こすことで、焼き物は風上側、お湯を沸かすのは風下側と、ふたつの調理が同時にできる。
常に風を取りこむので、放っておいても、きれいな灰になるまで燃え尽きる点もポイント。
跡を残さないのが、優雅な焚き火の作法だ。