トップ > リレー・エコ連載 第2回:谷崎テトラさん/エコの本・きほんのき

リレー・エコ連載

更新日 2008/05/02

エコ・リレー連載 murmur学園 エコ部!第1回/「エコ部!」では、今さら人に聞けないエコの「きほんのき」から、エコにまつわる、かわいくてちょっとしたアイデアを、各界の方々にご紹介いただきます。部活の先輩に教わるように、甘酸っぱい気分で、学んでいきましょう!

「エコ部!」2回目は、本誌でも!連載中の谷崎テトラ先輩です!
エコロジーとひとことでいっても、知らないことがいっぱい。
手っ取り早く知るならば、やはり本、ですよね。
今回は、わかりやすくエコについて勉強できる入門書5冊をご紹介いただきました。
谷崎先輩! よろしくお願いもうしあげます。

第2回:エコの本・きほんのき/谷崎テトラ

 2008年の大きなエコ・トピックは7月に先進国の首脳が集まっておこなわれる北海道洞爺湖サミット。前回のサミットで安倍元首相がうっかり「2050年までに世界の温室効果ガスを50%削減しましょう」みたいなことをいって、世界のNGOが注目している。

 温暖化を本気で止めようとすると、京都議定書がいっている温室効果ガス6%の削減なんかじゃぜんぜん間に合わなくて、排出量の50%くらい削減しなければ無理なので、安倍元首相はけっこういい線いっていた(だから失脚させられたともいわれている)。

 安倍元首相がこういう発言をするようになったのは、映画『不都合な真実』を見てからだともいわれる。一本の映画や一冊の本はひとりの人の心を動かし、政治を変える力さえあるのだ。そう、エコシフトをおこせるのだ(*1)。

 昔は環境問題といえば「公害問題」のことで、悪い企業が環境を汚染させ、それを市民団体が抗議する、という図式だったけど、今はわれわれ消費者が加害者であり、被害者だ。21世紀の環境問題は、地域を超えて地球全体に影響を及ぼす。

 そんなことを予見して1992年にリオでおこなわれたのが「地球サミット」。はじめて国の枠組みを超えて、グローバルに環境問題を話し合おうという画期的な場だった。そこから97年の地球温暖化防止京都会議や、今年の洞爺湖サミットの流れがスタートしている。

 92年の会議に参加したのが、伝説の小学生エコロジスト、セヴァン・スズキだ。「直し方がわからないものを、これ以上壊さないでください」というメッセージに世界中の大人はショックを受けた。あれから15年がたち、12歳のエコ少女はチャーミングなアクティビストに成長した。

 『私にできること』。なんとシンプルなメッセージだろう(*2)。環境問題のシンプルな解決方法は森を増やすことにほかならない。セヴァンは森のつくり方、守り方を小冊子にしている。セヴァン・スズキはただ者でないが、その父、環境学者デヴィッド・スズキの影響によるところも大きい。

 「なんだ環境学者の娘なのか」とがっかりするなかれ、デヴィッド・スズキもセヴァンに輪をかけてチャーミングなおじさんなのだ。そのデヴィッド・スズキの著作が『グッド・ニュース』である。世界中の持続可能な社会へのとりくみに関する「グッドニュース」を集めたもの(*3)。これはオススメ。

 2008年はもっともっと地球のことを意識することが多くなりそうだ。そしてそれは、もっともっとクリエィティブに表現されるようになる。辻信一さんの『カルチャー・クリエィティブ』はそんなクリエーターへのインタビュー集。具体的なアクションやライフスタイルとして生きてくる知恵がつまっている(*4)。

 坂本龍一さん、SUGIZOさん、辻信一さんなど、さまざまなひとのメッセージが集約した『ロッカショ』も今年の最重要本になりそうなので、買うべし(*5)。核燃料サイクルに関してのわかりやすい解説書でもあるのだけど、そこに集まるポジティブなエネルギーに元気ももらえる。行動するための勇気や元気をくれる。未来のエネルギーについて考えるための必読書といえる。

profile
〔たにざき てとら〕
構成作家&音楽家。愛知県立芸術大学・非常勤講師。メディアを通じて精神文化の復興をめざすアクティビスト。独自のネットワークをもとに地球環境、メディア美学、精神文化に関する最新動向をリサーチ、TV番組・ラジオ番組を企画・構成している。またオーガニック&アンビエント音楽のプロデュースも。『デイリープラネット』(TOKYO FM/月〜木 20:00〜22:00)に加え、東野翠れんさんらがナビゲートする『ap bank radio THE LAST WAVE』(TOKYO FM/土22:00〜22:55)好評・放送中。

写真左から、時計回りに
(*1)『エコシフト−−チャーミングに世界を変える方法』
(マエキタミヤコ=著/講談社現代新書)

(*2)『セヴァン・スズキの私にできること』
(セヴァン・カリス・スズキ=著 辻信一=監修/ゆっくり堂)

(*3)『グッド・ニュース−−持続可能な社会はもう始まっている』
(デヴィッド・スズキ&ホリー・ドレッセル=著/ナチュラルスピリット)

(*4)『カルチャー・クリエィティブ-―新しい世界をつくる52人』
(辻信一=著/ソトコト新書)

(*5)『ロッカショ―2万4000年後の地球へのメッセージ』
(STOP-ROKKASHOプロジェクト=著/講談社)