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Special Issue 別マー特集

更新日 2013/07/19

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野口勲さん 種のほんとうの話 後編
まず、食べものに感謝するように

種の記事を書き終えてから時間が経って、
ようやく少し冷静になれた気がします。

というのも、
F1や高度経済成長期に生まれた野菜の出荷規格や
モノカルチャーなどの仕組みは、
その当時は、より便利に、社会を豊かにするために、
プラスのものとして生み出されたんじゃないかと思えたからです。

当時は
世の中をよくするためのものとして受け入れられたけれど、
時間を経て、そのほころびがあらわになってきた。
それが今の時代だと思うのです。

今、わたしたち日本人が食べものに困らないのは
これらの仕組みのおかげでもあります。
食べものが人々に充分に行きわたらなかったら、
こんなこともいっていられません。
こういうことを考えられる余裕があることは、
皮肉だけれども、ある意味ではしあわせともいえます。
こういうふうに思えるようになってから、
それがF1の野菜だろうとコンビニのものであろうと、
今食べものがあることに
素直に感謝できるようになりました。



固定種を食べたい人が増えたなら

記事を書いてみたら、食べものにまつわる心配は
F1の問題だけではなく、
TPP*1や、遺伝子組み換え作物など、
たくさんあることに気がつきました。

正直、「知らなければよかった」と思うことさえあります。

だけど、絶望してばかりいる自分の態度も
なんだか違うなと思うようになりました。

今はできる範囲で、ファーマーズマーケットで
農家の人と会話しながら固定種の野菜を買ったり、
安心できる野菜を使ったごはんが
食べられるお店を利用したりしています。
自分で野菜を育てることにも興味をもちはじめました。

日本の人口分の食をまかなうには
F1の作物が欠かせないのが現状です。
だけど固定種の作物を食べたいという人が増えていけば、
ある日オセロでパタパタと
黒から白へと変わるように、変化の日がくるかもしれない。

19号の農業特集を読んで、
食べものについて、さらに関心が高まった方が
きっとたくさんいらっしゃると思います。

そして花粉がない植物も
ミトコンドリア遺伝子の異常によってできるのだとか。

この記事もその一助となれば大きな喜びです。
そうして、この波がより大きなものになっていくことを
こころから願っています。



栗林彩さんが記事を掲載した『ゼミマー』。食べものの根本である種が、経済至上主義により操作されている現在。「安全な野菜を手にするためには、消費者、生産者、流通それぞれに種への理解が必要では」と栗林さん
手塚治虫の担当編集者だった野口勲さんが、火の鳥を看板にかかげている意味とは? 取材を終えて、これからどうする?『ゼミマー』編集長・出会桃子さん(編集ゼミ生)と、栗林彩さんとの対談つき


【のぐち・いさお】
1944年、東京・青梅市生まれ。「野口種苗研究所」代表。親子3代にわたり、在来種、固定種、全国各地の伝統野菜の種を扱う。「野口のタネ」はネットでも購入できるhttp://noguchiseed.com/
【くりばやし・あや】
東京都在住。27歳。会社員。古書と古着好きなマーマーガール。種記事をきっかけに今年6月、人生初の田植えを経験! 十数年ぶりに土にふれ、地球と一体化したような気持ちを味わいました
タネが危ない 『タネが危ない』
野口勲=著
日本経済新聞出版社=刊

固定種とF1種の違いから遺伝子の仕組みまで、種をめぐる知られざる現状を、初心者にもわかりやすく解説している。種の今を知り、自分にできることをはじめよう、と思わせてくれる一冊
*1 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは?
アメリカ、アジア各国を中心に、関税を撤廃し、貿易をより活発に行うことを目的とした協定。グローバル化が進行するため、大手製造業などでは 利益につながるとして歓迎されているが、農業や医療保険、知的財産権などの分野では反対する声が根強い。協定の内容に守秘義務があるため、関係者以外に事前に協定の内容を知ることができないことや、加盟後の脱退が難しいという問題点も。農業では、特に、遺伝子組み換え作物の流入が危ぶまれています




☆『ゼミマー』に掲載されている栗林彩さんの記事をお読みになりたい方は、件名に「種の話希望」とご記入いただき、郵便番号、住所、氏名、電話番号をご記入の上、info@murmurmagazine.comまで、ご連絡ください。記事を郵送させていただきます(少しお時間をいただく場合があるかもしれません。あらかじめご了承ください)

※ ゼミマー・マガジン記載の栗林彩さんの記事について、おかげさまでたくさんのご応募をいただいています。8月18日(日)いっぱいで受付をしめきりとさせていただきます。たくさんの反響、ありがとうございました!