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Special Issue 別マー特集

更新日 2010/11/12

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03 もっと知りたい!オーガニックコットン

東京・渋谷のWIRED CAFE<>FITで開催されたオーガニックコットン ファンクラブvol.3。なぜ、Leeはウガンダのオーガニックコットンでデニムをつくっているの? ファストファッションのデニムが急に減った理由って? 今回もLee Japan 取締役の細川秀和さんがオーガニックコットンの本質について語ってくれました。ゲストはシンガーのbirdさん。ごくごく一部ですが、白熱した会場の空気を別マーからお届けです!

オーガニックなのに、認証されない?

(はっとり、以下は)前回、アフリカのオーガニックコットン栽培の現状にはいろいろな問題があるというお話が出ましたが……。

(細川、以下細)まずは、オーガニックの認証を取るまでのハードルがあるんですね。アフリカの多くの綿農家はもともとオーガニック農法なんです。虫を捕る作業も家族総出でやったり。でも、認証を取らないとオーガニックとして扱われなくて。

(bird、以下b)認証がないと、消費者にはわからないですもんね。

(細)オーガニックで売れれば価格は倍になるけれど、認証を得るのにまずお金がかかる。認証機関は先進国のものだからです。期間も3年間かかるため、小さい農家ほど途中でギブアップしてしまう。しかもアフリカでは識字率が低いため、認証のための書類が読めないという問題もあって、なかなかオーガニック認証が広がらないのです。

(は)ほんの100年ほど前は、認証マークなんてなくても世界中全部オーガニックコットンだったんですよね。

(細)認証を受けるためには、児童労働がないことも条件になるのですが、子どもの収入が家族の生活費になっている場合も少なくない。また、補助金が豊かに入ってくるエリアほど、お父さんが働かず子どもを働かせていることが多かったりもします。

(b)なるほど。

(は)問題は複雑ですね……。

(細)我々Leeが考えているのは、ウガンダでオーガニックの綿畑を広げていこうということです。オーガニックコットンは質がよく、高く売ることができるので、農家さんの収入が増えますから。

(は)しかも、ウガンダのコットンはすごくデニムに合っているんですよね。

(細)綿花というのはざっくり分けて、だいたい3つの品種があって、綿の繊維が太いもの、細いものがあります。ウガンダの綿はこのちょうど中間で、粗野感もありながらしなやかという点でデニムに向いています。

(b)綿にいろんな種類があるなんて、全然知らなかった!

(は)birdさんは早くから、ツアーTシャツを毎回オーガニックコットンでつくられているんですよね。

(b)そうなんです。オーガニックコットンってことを大きく宣伝したりはしていなくて、タグに書いてある程度なんですが、「オーガニックコットンって何だろう」って、知るきっかけになればいいなと思って、8年くらい前から続けています。値段は少々高めになりますが、大量にばらまくより大切に育ててもらえそうですし。

ファストファッションのデニムが減ったわけ

(は)大量といえば、ファストファッションのデニムが一時より減っているような……。

(細)一時期、安いデニムが急に増えたのは、アメリカが経済的に崩壊して、大量に原材料をキャンセルしたことが発端なんです。その原材料が安く流れて、デニム1本980円とか、680円とかまで叩くことが可能だったんですね。材料が底をついて、最近そこまで安いものは聞かなくなりましたが。

(b)確かに。

(細)安いデニムが流行って、「オーガニックとか謳わないとなかなか売れないんでしょ」なんていわれることもありましたが、我々はお金もうけで生き残る術としてやっているわけではない。「オーガニックコットンって、こんないいことがあるんだな」っていうことを、みなさんに少しでもわかってもらえることが一番なんです。

(は)農薬で病気になったり、借金で自殺に追い込まれている綿農家の人がたくさんいて、そんなにまでして安くした服だと知ると、「そういう過程を経てきた服を、はたして自分は着たいかな?」って思いますよね。オーガニックのものは着てみると単純に気持ちがいいですし。やっぱり、つくり手の意識とか、つくっている過程って、物質にもちゃんと反映されているような気がします。

(b)10枚の服のうち、1枚オーガニックのものを選ぶだけでも、世界はずいぶん変わりますよね。

(細)我々のやっているウガンダのプロジェクトだって、まだまだ微々たる力で、ウガンダの人すべてを救えるわけではない。でも、毎年オーガニックコットンの農場に行くと、少しずつだけれど、みんなの表情が変わっていくのがわかるんです。そういうことだけでも、大切にしていきたいですね。


bird
(シンガー&シンガーソングライター)
大沢伸一/MONDO GROSSO主催レーベルより「SOULS」でデビュー。1stアルバム「bird」は70万枚突破し、ゴールドディスク大賞新人賞獲得。最近では自身が撮影した写真に注目が集まり“SANKEI EXPRESS”にてその写真を題材にしたコラムの連載を皮切りに、写真展も開催。


細川 秀和
(Lee Japanディレクター/取締役)
大学卒業後、「エドウィン」に入社。以後30年近くにわたりLeeの商品開発に携わる。デニムの知識は業界随一。