この写真集には、不穏な空気が絶えず流れている。
何かが起こっているのか? いや、何も起こっていないのか? 
これからどうなるのか? やっぱり何かが起こるのか?
そう、ハラハラしながらページをめくり続ける。
ある種の写真集は、最後に決定的な何かが起こる。
しかし、写真集『マリイ』は、何も起こらない。
マリイは、現に、生きている。
いや、やはり何かが起こっていたに違いないと、
またページをめくり返してしまう。
写真集が表現しうるパースの奥行きがこれほどまである作品も珍しい。
不穏な空気は、やがてあふれんばかりの愛に変わり、
近年で、最高によかった一冊です。
森岡督行|もりおかよしゆき
森岡書店 銀座店店主。著書に『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)ほか