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小屋と畑

やまだともみのお蚕さん日記 前編

 

写真①

 

 

お蚕さんとの不思議な生活は突然やってきました。

 

きっかけは、美濃に来てからお世話になっているKさんが、アポなしで事務所に遊びに来られて、Kさん、福太郎さん、わたしで雑談していたときのことです。

なにげなく福太郎さんが「Kさん、明日なにしているの?」と聞いたら

「明日はお蚕さんをもらいに新城まで行くのよ」とKさん。

「それはいいですね。山ちゃん、一緒に行かせてもらいなよ」と福太郎さん。

「うわぁー、ぜひ行きたいですっ!!」とわたし。

そこからあれよあれよという間に、Kさんと一緒に愛知県新城の養蚕を営んでいるご夫婦の元に行くことに。

 

あまりよく考えずに「行きたいですっ!!」と返事をしたわたしに

周囲からは「ほんとうに山田さんは蚕さんを育てる気なのか? 」という疑いの目……

 

そう、なにをかくそうわたしはちいさい頃から自他ともに認める大の虫嫌いでした。

エムエム・ブックスに入社してからも、何度ととなく、アリさんや蛾さんなどで、悲鳴をあげるわたしを他のスタッフは目撃していたからです。

 

それでもホ・オポノポノの実践や、『マーマーマガジン』の自然農の特集を読んで、虫に対する恐怖心、嫌いな気持ちがクリーニングできている気がしたけれど、“実際に”体験してみないとわからないなあという不安がありました。

 

でも、それがちいさなことに思えるほど、当時、わたしが一番欲しかったものは「今までの自分を超える突破口」でした。その頃、自他ともに認める“精神大低迷中”で、エネルギーも少なく、ちいさなことでイライラしたり、淋しくなったり、悲しくなったり、嫉妬したり、自分を卑下したり、ほかの人をうらやましく思ったり、こころの中がざわざわ忙しかったのです。「お蚕さんを育てることで、何か得られたら……」と、すがる思いでした。

 

 

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写真は、お蚕さんのふるさと、愛知県新城市。

自然豊かなすばらしいところで、昔からの養蚕業を営んでいるご夫婦がいらっしゃいます。