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新米社長福太郎便り

74 信頼関係

 

 

 

葉、樹皮、草、土、地衣類、コケ類、菌類、みな肌触りを知ってもらいたく、

まっているので、それぞれの葉や花、種子、茎の肌触りを教えてくれる

植物種を育ててみてください。

(『ナチュラルガーデンブック』ピーター・ハーパー=著、産調出版=刊)

 

植物や菌類が人間に肌触りを知ってもらいたい、というのは

ちょっと前の自分では信じられないこと、

もしくはあまり自信はないけれどそういう世界だといいな、と思うから

無理やり信じこむようなことだったかもしれません。

 

自然の川から田んぼに水をひいている自然農の農家さんから

この前聞いた話ですが

いまも川からいろいろな生物が卵を産みに田んぼに来るそうです。

メダカやフナはもちろん、なまずやおおきなコイまで!

全国の田んぼのほとんどが水をひきこむ元が

自然の川や用水路からコンクリートのU字溝に変わってしまい

こういうことが起こる田んぼは珍しくなったけれど、

昔はどこもそうだったんじゃないかな、とその方はおっしゃっていました。

 

人間がつくった田んぼに

生き物たちがおそらく一番大事なことである産卵をしにくる、というのは

なんともすごいなぁ、と思います。

 

なんだかそこには信頼関係があったような気がします。

生き物たちと人間の信頼関係。

(もしくは生き物たちと人間のつくった田んぼの信頼関係)

 

というのも田んぼや庭仕事をしていると

けっこう見られているなぁ〜、と思うことがあります。

 

例えば草刈機で草を刈っていたらカエルくんを傷つけてしまい

それ以降、なるべく鎌で草刈りをするように。

するとカエルもおたまじゃくしも、

ぼくを認めてくれているなぁ、って瞬間が訪れたりします。

ひとりで田んぼにいると、カエルにお礼みたいなことを言われることも笑。

 

それから庭仕事ではこんなことがありました。

先日、池をつくろうとおおきなタライを地中に埋めたのですが

その中にコオロギがたくさん入ってしまっていて、

金属製のタライをよじ登ることができず、出れずにもがいていました。

かわいそうだな、と思って、一匹ずつ外に出したんです。

そしたら・・・・

それまでいつもいつも庭仕事をするとき蚊に刺されまくっていたのですが・・・

なんと、その日から蚊に刺されなくなったんです!

 

そういえばその日から庭の雰囲気も変わったなぁ、とも思うんです。

 

たかがコオロギを数匹助けたぐらいで・・・

(そもそも地中にタライを埋め込むという横暴っぷりを

おかしているわけですが・・・。その後タライは地中から取りのぞきました)

とんだ勘違いで思い上がりかもしれません。

 

でも「これから庭をいじりますよ〜、地面を掘ったり、石を置いたり

木を植えたり、抜いたりしますよ〜」ということは

庭に生息する生き物たちにとっては、自分の家を壊されることだったり

場合によっては命を奪うことにもなるわけで

まさに死活問題なわけです。

 

ぼくがシャベルを片手に庭に出てきたら

きっと庭の全生き物たち(とその他エネルギーたち)は

息をころして、固唾を飲んで、ぼくの一挙手一投足に

意識を集中していたかもしれません。

 

ぼくがいつも庭に出てきては

蚊をつぶしてばかり、

草を刈ってばかり、

携帯電話でぺちゃくちゃ話してばかり、の

人間だったら、そこに庭との信頼関係は生まれるでしょうか?

 

多分、安心してもらえないのではないか、と思います。

 

 

 

思い返せば、あの瞬間・・・

どこか安心してもらえたような気がします。

 

「自然界の伝達システムはほんとうにすごくて、インターネットと一緒。

たとえば福太郎さんの田んぼの稲がすごく美味しい、っていうことを

中国の自然で噂になって、鳥とかにお米を運ばせたりすることもある」とは

ぼくの田んぼの先生が教えてくれたことですが、

そういうのって、ほんとうにあるんですよね、きっと。

 

信じられない方は、ぜひぜひ田んぼや庭をじぃーーと観察してみてください。

そのうちポロッと生き物たちが気配を出したり、話しかけてくるかもしれません。

 

 

(福太郎)