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新米社長福太郎便り

第6回 タコ社長はタコ社長の父親に教わる

 

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ぼくは忙しくなってくると余裕がなくなります。

誰でもそうかもしれませんが、

もともとのキャパシティーが少ないのに、たくさん抱え込みたがる

矛盾だらけのややこしい性質がわざわいして、1月のあらたな気持ちは

そうそうに消え失せて、さっそく余裕をなくしました。

 

「余裕のない社長」

という言葉だけでも、かなりいやな感じ、ダークサイドを感じてしまいます。

(にわかにスターウォーズにかぶれているこの頃です)

「余裕のない新米社長」

優しく受けとってくださるみなさまなら

「わからないことだらけで手探りだけれども

汗水たらして頑張っている好青年な人」を想像されるかもしれませんね?

なんだか、ちょっと微笑ましいような、許せてしまうような、

逆に応援したくなるような感じがしてきませんか?

 

しかし

ぼくの場合は、汗水たらして頑張っている好青年というよりは……

「余裕がないのに偉そうな新米社長」です。

これは字にするだけでも、かなりひんしゅくを買う感じです。

なにもいいことが起こらなそうな雰囲気に満ち満ちています。

 

自分が余裕がないことをいいことに

スタッフのミスや勤務態度を指摘します。

「どうして、こんな簡単なことができないの?」

「どうして発送ミスなんて起こるの?」

「問題が起こった時に、なんではやく言ってくれないの?」

「なんでもっとやる気を出してくれないの?」

 

いやーこうして書いてみるとわかるんですけれどね

こんなこと言われて

簡単なことができるようになるでしょうか?

(そもそも簡単ってなんだ!たこ社長!←自分ツッコミ)

発送ミスがなくなるでしょうか?

こんなこと言っているから

みんな言いたいことが言えなくなっちゃうのではないでしょうか?

 

 

補足させていただきますが、小社のスタッフはみんな

ほんとうによく働いてくれるし、自分の出来る限りのもの、いやそれ以上の力を

発揮しようといつも仕事をしてくれています。

 

それなのに、こんなことをしていたら

どんどん余裕はなくなるし、雰囲気も悪くなっていきますよね。

 

 

そんなある日、妻である編集長のみれいさんの軽自動車に

はじめてガソリンを入れることになりました。

(みれいさんの軽自動車は、1年前に亡くなったお母さんの車で

昨年末ぐらいからみれいさんが乗りはじめました)

 

みれいさんにセルフガソリンスタンドで

ガソリンの入れ方を教えるべく、例のとおり

自信満々、偉そうにぼくはこう言ったのです。

 

「軽自動車っていうのはね、軽油を入れるから、軽自動車って言うんだよ」

 

…………

…………

 

あまりに自信満々だったからでしょうか。

みれいさんも「ふーん」とそのまま流します。

 

本来ガソリンを入れなければいけないところに

軽油を満タンチャージしてしまったタコ社長。

 

意気揚々とガソリンスタンドから国道へ!

1キロほど走ったあたりから、

バッタ、ドッタン、バッタ、ドッタン……

いくらアクセルを踏んでも、20キロぐらいしかスピードが出ません…

「あれ!?エンスト?」

その状態で超低速のまま右折にふみきるタコ社長。

対向車スレスレ、後続車イライラ、助手席のみれいさんは気が気じゃないですよね。

そして、民家の駐車スペースの前で見事エンジンは止まります。

(奇跡的にそこは知人の家の前で、交通を妨げることなくとまれる場所でした)

 

完全にパニック状態のタコ社長。

こんなときは機械に詳しい父親だ! とすぐに携帯に連絡。

(こんな歳になっても、父親だより……、この父とはいつも

ブログに登場するみれいさんの父ではなく、ぼくの父です。

父は一緒に移住してくれて、会社の仕事を手伝ってくれています)

幸いストップしてしまった場所から車で5分程のところに住んでいた父は

すぐにすっ飛んで来てくれました。

 

結局、車屋さんに牽引してもらい、すべての軽油を抜いてもらうことになり

丸一日かかるというので、父に車で家まで送ってもらう事に…

 

「軽自動車の軽は、軽油の軽である!」

ほんとうにそれで35年間も生きて来てしまった…

心底、恥ずかしいと思ったタコ社長。

会社を手伝ってくれて、スタッフとも仲のいい父親に

送ってもらっている車中に、こう言います

「スタッフにしめしがつかないから、みんなには内緒にしておいて!」

ああ、なんて、めめしいタコ社長。

 

そんな出来損ないの息子に、父親はこう言いました

 

「だれでも間違いはあるからね。そんなことは気にしなくていいんだよ」

 

 

そんなことを言われても、なお

「それって(スタッフに)言うってこと? だまってくれるってこと? 」と

保身ばかり気にしていたタコ社長も

 

家に帰って、お茶をすすって、いただきもののクッキーをばりばり

食べだしたら、ようやく気づいたのです……

 

 

ああ、ぼくがみんなに言ってあげなきゃいけない言葉は

これだったんだなぁ、ぼくだけ父親に言ってもらってらぁ……、と

 

 

まずは「余裕がないのに偉そうな新米社長」から

「余裕がないけれど、タコでも、偉そうでもない新米社長」に

なりたいと思います。

 

以前、「今日の編集部」にも書かせていただいたことがあるのですが

「気が優しいだけで融通がきかなくて仕事のできない」と思っていた父親なんですが

ここにきて……、どうして、そんなことが言えるだろう…と思うようになっています。

 

人生は、なんだか、後半戦が楽しそうです!

 

 

 

まぁ、次にぼくが余裕をなくしたときが見物というものです!

 

 

※写真は編集部中庭を改築中の父です。