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マーマーなリレーエッセイ

#36 風邪の治しかた|加藤祐里

 

郡上もりのこ針灸院の加藤祐里です。

いつも、ありがとうございます。

今回のテーマは「風邪の治しかた」です。

 

風邪をひけるって、ありがたい

そもそも、風邪をひけるって、

とてもありがたいことだと思っています。

がんやうつ病など大病を患うかたにお聴きすると

何年も熱をだしていない、

風邪をひいても薬で止めて

ゆっくりと養生なんてしてこなかったという人がほとんどです。

針灸院に慢性的な肩こりや腰痛、

生理痛で来院されるようなかたも

3か月くらいしたときに、

「何十年ぶりに寝込むくらいの風邪をひいた」

といわれる方がよくいます。

たいていしっかり風邪をひいたあとは

痛みや凝りがすっかりよくなっています。

めったに病気にならないし寝込んだりもしない、

という人よりふだんから

ちょこちょこ不調がある人のほうが

自分の身体の「取り扱い説明書」をよく知っています。

特に「冷え取り健康法」をはじめだすと、

以前よりも寒がりになって、

病むことが多くなったという人も少なくありません。

病弱になったというより、

すごく悪くなる前にからだのサインに

早めに気づけるようになるのでしょう。

これはわたしが経験的に感じてきたことなので

エビデンスはないのですが

たとえば、喉が痛くなりやすい人は

ふだんからいいたいことを我慢したり、

ぐっと感情を抑えて生きてきた人。

涙をこらえるときに唾を飲み込むように

喉や胸の奥のほうにギュッと力をいれますよね?

自分では悲しんでいるつもりはなくても、

小さいころからの我慢癖、

本音をいわない癖というのは「思考」というより、

からだの筋肉の緊張として記憶されます。

風邪のときに喉が痛くなりやすい人は

喉のまわりの筋肉が

とても硬くなっていることが多いのです。

鼻水などは「涙をこらえてきた人」。

もう何年も涙を流して、わぁわぁ泣いていない人。

小さいころに「泣くのはよくない、

お前は泣き虫でみっともない」と

言われて育った方、どうですか?

咳は「息を飲むような」、

緊張するようなできごとが続いたあとや、

喉の痛みよりももっと深い部分の悲しみだったり、

吐き出したい想いをためているとき。

息は飲むのじゃなくて、

吐かないといけない。

コンコンと咳混むことで

胸郭・背中・お腹全体を緩ませています。

38度を超えるような全身の発熱は、

風邪の原因になっているウイルスをやっつけるので、

血液がきれいになります。

熱そのものの効果もありますが、

だるくて起き上がれなくて、

ずっと横になって寝ていることで、

全身の筋肉が緩みます。

いつもがんばりすぎる人、

何年もゆっくり寝ていない人、

人に甘えたり頼ったりするのが苦手な人、

痛み止めを常用してきた人などが

熱を出して寝込めるようになったら、

お赤飯を炊いてあげたいくらいです。

 

風邪を許す

我が家には小学6年生と4年生の息子がいるのですが、

子どもたちが保育園に行っている頃は

毎月のように風邪をひいて、

しょっちゅう病院に行っていました。

小学校にあがると同時に岐阜の田舎に引っ越してきて、

ぱったりと病気にならなくなりました。

わたし自身、外に出て働く仕事から

自宅での仕事に変えたこともあって

「いつでも風邪くらいひいてもいいよ」

という気持ちになれたことが一番だったと思います。

わたし自身も小さいころ母が働いていて

「わたしの体調が悪くなると母に迷惑をかける」

と、そんな思い込みを抱えていました。

大きくなっても風邪をひくことに罪悪感がありました。

わたしは比較的、手がかからない子で、

家事も早いうちにできるようになって、

なるべく早く自立して、

親に迷惑をかけないように

生きていきたいと思っていました。

親とは離れて社会人になってからも、

わたしは「いつも元気で丈夫なキャラ」。

滅多なことでは休みませんでした。

もし風邪をひいても薬で症状を抑えて

「熱さえなければ大丈夫」と、

いくらダルくても寝込むこともありませんでした。

だけど、本当は母にそばにいてほしかったんだな、

迷惑じゃないよっていってほしかったのだと

自分の抱えてきた悲しみに自分で気づけたときに、

風邪をひくわたしを許せるようになったと思います。

 

風邪を治すコツは3つの‘みる’

「風邪で薬を飲むのはよくない、

だから何もしないで放っておけばいい」というわけでなくて、

流行りはじめの時期、ひきはじめ、

油断しがちな治りかけのときの過ごし方は大切です。

一番は風邪のときも、

そうじゃない元気なときも

オールマイティーに使いこなせる術を

ふだんから生活のなかで

あたり前に取り入れることができるといいですね。

いざ症状がでたときだけ

自然のお手当を活用しようと思っても、

焦ってなかなかタイミングよくできないので、

ふだんからそういうことにくわしい人たちの集まるコミュニティーで

情報収集をしておく、

本に使えそうなテクニックが紹介されていたら付箋でも張っておく、

など工夫は必要です。

一家のお母さんであれば、

子ども一人一人風邪のお手当は変わります。

風邪のときにもりもり食べて調子のよい子もいれば、

水も飲まないで元気になる子もいます。

温めてよくなる子もいれば、そうじゃない子もいる。

熱があるとついつい体温の上がり下がりに一喜一憂して、

顔とか上半身しかみえませんが、

風邪がこれからひどくなるのか、

終わりかけなのか?

お腹や足首の硬さ、冷たさ、肌の汗の様子、

口のにおい、咳の音、甘えてきたり、

機嫌が悪かったり、

ふだんの様子をよく知っている

お母さんにしか分からないことってたくさんあります。

ネットをみるより、

目の前の子どものからだに起きていることを

よく‘みる’力

「観る・診る・看る」を養うことが

自然に治る力を引き出すコツです。

子どもの風邪の場合、

子ども自身の問題というより、

お母さんが休めていないときが多いですね。

お母さんが仕事復帰して、

なるべく仕事は休まず、

まわりに迷惑かけないように、と

緊張して毎日頑張っているようなとき、

いいタイミングで子どもは病気になってくれます。

なんとか明日までに熱を下げて仕事にいかないといけない、

と肩ひじ張っている間は、

まだまだお母さん自身に

緩まないといけない部分がたくさんありそうですね。

子どもの体調そのものの問題というより、

夫との関係、親との関係、職場での人間関係、

仕事やお金に対する考え方、

休むことやできないということの罪悪感、

なぜがんばりすぎてしまうのか?

人に甘えたり、頼ったりできないのか?

自分が見ず知らずにうちに「こうでなければいけない」と

自分に厳しく生きてきた考え方の癖を

もう一度見直すときなのかもしれません。



加藤祐里

かとう・ゆり|愛知県出身。年間1,000件以上のお産のある総合病院にて、助産師として務めたのち、東洋医学を学びはじめる。鍼灸マッサージ専門学校卒業後、結婚、出産、FMT自然整体の勉強、ふたたびの助産師としての勤務を経て、2012年4月、「自然の豊かな場所で子育てをしたい」という思いから、岐阜県郡上八幡へ移住。移住と同時に、自宅にて「郡上もりのこ鍼灸院」を開く。地元を中心にした多くの人々の健康相談にのっている。

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