#32 わたしの手帖インタビュー4
毎週木曜更新!
2018年の手帖のテーマについて
『わたしの手帖2018』、11月11日より、いよいよ発売となりました!!
「到着しました」の声も、続々届いております!
おかげさまで手帖も、そして姉妹品の日めくりカレンダーも好評で、
早くも売り切れが出ているお店もあるとか。
お待ちくださっていた方がいらっしゃると思うと、本当にうれしいです。
実際に手帖を見てご検討したい方は、
早めにご覧いただけると安心かもしれません。
さて、『わたしの手帖2018』インタビューもいよいよ佳境、
ぐっと深いお話に入っていきます。
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◎2018年のカギを握るのは、創造性
服部 手づくりカバーの話で盛り上がりましたが、これは、実は今年の手帖のエッセイで伝えたいこととも関わっているんです。
野田 今年の大テーマ、「創造性」ですね。
服部 はい。手帖のカバーの色のときにもお話しましたが、2018年は大きな変わり目の最中で、きっと大変だなと感じることもあるだろうな、と思うんです。そんな2018年を元気に生きていくためには、「創造性」が大きなポイントになる気がしています。自分の手帖カバーを自分で縫う、といったこともそのひとつで、ものづくりに関わるとか、今までなかったような発想で、創造的にものごとを行うとか、「消費するより生産する」ということ。それに一生懸命取り組んでいたら、きつい時期も乗り越えられると考えています。
野田 創造性については、手帖の冒頭のエッセイ「わたしの手帖2018のこと」にも書かれていましたね。確かに、うまく言えないですけど、やっぱり社会全体にも、個人にも、疲弊感のようなものは広がっている気がします。
服部 ある側面を見れば大変な時代だと思います。経済的なことだけでなく、社会全体に閉塞感があって……。正直、思想統制、言論の自由への妨害もはっきりあると感じられるような場面もある。何かあるとバッシングが酷いですし、みんながどこか意地悪な視点になっているというか……。思い切った大胆なことをしづらい感じもします。
野田 ああ、それはすごくわかります。自分には直接関係ないことでも、制裁を加える傾向というか……まあ、昔は井戸端会議で話していたようなことを、SNSなどで発信すると目立って見える、ということなのかもしれませんけど。
服部 たぶん、今、自分が不安定だったり、先が見えなかったりすることを、何かを批判することで紛らわせる、という風潮はあるのかもしれませんね。もちろん、誰しもそういうもやもやした気分になることはありますよね。でも、そういうときにひとりひとりがクリエイティブな方向に向かったらすてきだな、と思うんです。「なんかつまんないな」とか「大変だな」とか、閉塞感を覚えたときに、自分の内なる創造性に向かうのが健全な気がする。
野田 今は、絶対的な安定なんてないですから、先が見えない状態っていうのは、多かれ少なかれ、みんな感じていることかもしれませんね。
服部 たとえば、フリーランスで働いていて、仕事が全然ないとしても、そのときに愚痴るとか、焦るだけじゃなくて、たとえばですが絵を描きはじめるとか、自分の小説を書きはじめるとか、そういう方向に向かうといいのかな、と思うんです。ガーデニングにトライするとか、料理に凝ってみるとか、何か自分が喜ぶようなことをするのもいいですよね。
野田 「クリエイティブ」って聞くと、「わたしは才能がないから……」みたいに思ってしまいがちですけど、身近なことでもいいんですね。
服部 そうです、そうです! 仕事や家事を自分らしく工夫するのだって、クリエイティブなことですよね。育児だってクリエイティビティにあふれていますよね。
野田 みれいさんは、2018年、どんなことをしたいですか?
服部 わたしは最近、絵を描こうかなって思いはじめているんです。一度山の絵を描いたらすごくたのしくて、びっくりして。岐阜は山がいっぱいあるから、スケッチしに行こうかなって。あとクラシックピアノも続けています。バッハをひたすら練習したり……。でも、そういう時間が、来年は誰にとっても、大事になる気がしています。
◎わたしたち、なんでこんなに余裕がないんだろう問題
野田 聞いているとわくわくして、「すごくたのしそう!」って思うんですけど、じゃあ、わたし自身はなんで今、そういう創造的なことができないんだろう、って考え込んでしまいます。時間がない、というか……。
服部 余裕がない、ということかしら?
野田 そうですね……気持ちに余裕がないんだと思います。ちょっと余談になりますが、この前、わたし、フランスのパリに行ってきたんですけど、パリって、とっても閉店時間に厳しいんですよ。日本だと、閉店時間でもお店にお客さんがいると「ごゆっくりお買い物くださいね」と言ってもらえたりしますよね。
服部 フランスは違う、ということですか?
野田 スーツ姿の男性が出てきて、「早くお帰りください」的なムードになって……。ほかにも便利じゃないことはけっこうあるんです。日曜の朝にオーガニック系のスーパーに行って、「今日は何時に閉まりますか?」って聞いたら「お昼には閉店する」って言われました。「え? スーパーなのに?」って思ったんですけど、でも、逆に働いている人の立場で考えてみると、これはいいことなんだろうな、とも思ったんです。
服部 実は、そうなんですよね。
野田 自分の何か大事なものを守るために、境界線をつくっているのかなあ、と。
服部 フランスの人はそういうことがきっととても上手ですよね。実は、わたしが住んでいる美濃の人もうまいんです。うちの近くに、野菜を売っているお店があるんですけど、そこはなんと、午後の3時半に閉店なんですよ。
野田 え! 早い(笑)。せめて夕方までやってほしい、と思ってしまいそう。
服部 しかもまだ間に合うだろうと思って、閉店ギリギリの3時15分に行くと、もう閉まっていたりします(笑)。中に店員さんがいるのが見えて、外から「入れて!」といっても入れてもらえない(笑)。ここはパリなんです。日曜日休みのお店もいっぱいあります。
野田 確かにパリっぽい(笑)。
服部 でしょ(笑)。食事する場所だと「できないメニュー」がたくさんあったりネ。東京とか、都市だとどうしても「お客さん本位」でやるっていうことにみんなが慣れすぎていますよね。そうなると、休みを取れるときに休む、ということになる。美濃の人たちは、まず自分の生活と自分の家族があって、その上でやれることをやり、そこで儲けたもので満足する。そういう印象を受けて、わたしはすごく新鮮だったんです。
野田 そういうふうにしないと、いつまでたっても働いちゃいますよね……。
服部 そうなんです。その速度が、都市ではコントロールできなくなっている気がします。どんどんどんどんやっちゃう、みたいな感じ。その中でみんながすごく疲れているような気がします。
野田 果てのない便利さを求めて、結局、自分の首を絞めちゃう、みたいな。
服部 それで、誰も立ち止まれなくなっているのかも。
野田 もっと自分個人とか、家族とか、身の回りのことを大切にしていかないと、自分のクリエイティビティを発揮する余裕はなくなっちゃいますね。
服部 でも、卵が先か、鶏が先かわからないですけどね。たとえば、絵を描くようになったら、もっと時間の使い方が変わるのかもしれないし。
野田 ああ……! 確かに。
服部 楽器を習うことにして、平日の夜にその予定を入れることで残業しなくなるとか、先に創造性を軸に行動してみると、自分らしく生きるきっかけにもなるかもしれないですよね。
野田 自分で「できない」って思い込みすぎているのかもしれませんね。夜に楽器をひける! と思ったら、昼間の仕事は工夫して終わらせよう、という気にもなるし、そうやって仕事のやり方を見直すのも、創造的なことなのかも。
服部 「他人軸で動くのをちょっとやめてみない?」ということですね。そこから予想もしていなかったいいことが、どんどん起こるかもしれないですし。美濃化、本気でおすすめです(笑)。
◎不便さが自分を守る
野田 このお話、実は、手帖に収録している「毎月のエッセイ」やワークの話ともつながっている気がします。今回、情報断食やデジタルデトックスをする、というワークが出てきますよね。
服部 わたし自身、最近、携帯を持つのをやめましたけど、それは自分のペースを守ることにもつながっているんですよね。
野田 携帯をやめて、不便なことってありますか?
服部 何もないですね。約束したときに、みなさんが遅れずに来てくださるようになりました(笑)。
野田 なるほど(笑)。たしかに連絡手段がないと、ちゃんと間に合うように行こうって意識が働きますね。
服部 この不便さが、けっこう、自分を守ってくれたりするんですよね。
野田 この2018年版には、「自分をよく知る」ためのワークと、周囲に対するアクションが両方入っている印象があるんです。自分を知って、かつ、まわりとの境界線をうまく引きつつ、でも、孤立せずに生きる、という印象を受けました。
服部 そうかもしれないですね。ただ境界線を引くのではなく、その結果、生まれた時間で、どんな創造的なことができるか、自分と向きあう時間をつくれるか、大切な人と過ごすことができるか、そういうことを意識しています。「毎月のエッセイ」に関しては、1年間通してやってもらったら、絶対にパワフルになれると思います!
野田 そうですね。1年を通して自分のことをよく理解して、周囲とのつきあい方も含め、自分をどう表現するか、じっくり考えることができると思います。
服部 もっと自分に集中して、自分が幸福であることに力を注いでいいと思うんですよね。忙しい人ほど特に。そのためには、ある程度、自分を守るための線引きも必要になってくるんだと思います。この手帖のエッセイやワークが、そのことを考えるきっかけになってくれたら、いいですよね。
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余談が余談じゃなくなる、そんな今回のお話でした。
来週以降も、このような感じで、
『わたしの手帖』の裏話を続けていきます。
わたしたちをとりまく社会のありかたや、
どことなく感じている不安。
そういったものを乗り越えて、生き抜く知恵が
『わたしの手帖』は詰まっています。
すでに『わたしの手帖』がお手元に届いた方の中には、
エッセイやワークの部分を
読みはじめている方もいらっしゃるでしょうか?
「わたし」を知り、
「わたし」を表現し、
内なる創造性を目覚めさせる。
そんな体験を、この手帖を通して
重ねていただければと思います!
(野田りえ)